2008年04月29日

過去の記事(僕が泣いて怒ったお客様)

光市母子殺人事件について、ある大学の准教授が被害者を中傷する記事をブログに書いていて早速この方のブログを拝見しました。


光市母子殺人事件についてだけではなく、その他のいろいろな方々に対しての非人間的な発言、はたまた、近所の小学校のことまで低レベルの悪口を書いていらっしゃいまして、大きな怒りを通り越して どうなったらこんな人間が出来上がるのか不思議でたまりません。


今、この准教授のことについていろいろ考え中でございます。


いずれ、この准教授について書こうと思っておりますので(この方の言う 表現の自由 を使います。とんでもない表現をするかもしれせん)、しばし過去の記事をお楽しみくださいませ。

これは、僕が今までで1番考えさせられた出来事、出会いでした。


・・・・・・



カギ屋という仕事は、ただ単に「モノ」を売るだけではなく、「技術」と「安心」を提供するため、他の販売、サービス業より繊細な接客技術を必要とします。お客様とのコミュニケーションの中でお客様の本心を見抜き、要望にできるだけ沿うものを提案します(カギ屋のみが、特別な接客技術が必要だといえば、他の販売、サービス業に対して失礼かも知れませんが、特に「セキュリティ」を扱うという面で、僕は異なると思っています)。

もうずいぶん前のことですが、夏前の日曜日だったと思います。

老夫婦でした。旦那様がカギについていろいろ聞いてこられました。ご要望は防犯性の高いカギを御自分で取り付けられたいということでした。

まず錠前の種類を確認し、それに適合する防犯性の高いカギを何種類か提案いたしました。その当時、僕の店では6種類のカギ(防犯性の高いシリンダー)を扱っておりました。

一つ一つの説明がおわり、ある外国製のシリンダーを買いたいということになりました。そのカギはオーナー登録制になっており、お名前、住所などを記入してそのメーカーに登録するというものでした(通常の防犯性<耐ピッキング、耐破錠>に加えて、オーナーでなければスペアキーを作ることができないというセキュリティを備えたものでした)。

僕は、「こちらにご記入ください。取り付けをされるご住所とお名前などです。お手数ですが。販売店として当店でも1枚お預かりいたします」と申し上げましたら、今まで何も発言されなかった御婦人が突然
「あなたに、住所を教えなくちゃいけないの?」と明らかに嫌悪感を抱いた表情で僕に言ってきました。

もし、僕以外のカギ屋なら、もう一回丁寧に御説明するか、お断りするかで済んだと思いますが、僕はちがいました。

「お客様、確かに今日始めてお会いしましたので、信用も何もないと思いますが、こちらが住所をお聞きすることさえできないほど信用されないのでしたら、僕の店で買わないで下さい。僕を始めから疑っているのなら、もう二度と来ないで下さい。どんな御事情があるか存じませんが、人間としての最低限のマナーを守れない方にはこちらで買っていただかなくても結構です。何よりも、あまりにも僕に対して失礼です。僕に対して謝ってください。」といってしまいました(実際には、こんなきれいな言葉ではありませんでした。涙も流れていました)。

このことについては僕がおかしいのでしょうか?人格を否定されたと思うことは、僕の被害妄想でしょうか?僕の我慢が足りなかったのでしょうか?それとも怒るような事ではないのでしょうか?

確かに僕も言いおわった後でかなり後悔しましたが、僕にも感情があります。あまりにもむき出しにしてしまったので、横で全てを見ていたスタッフもかなり怯えていました。

しばらく沈黙が続いた後、旦那様が
「申し訳ございませんでした」
と深々と頭を下げられました。予想外でした(この接客で消費者センターに相談されるかと思ったぐらいでしたから)。

後出しかも知れませんが、こんな若輩者の言葉で、長い人生を重ねてこられた方に頭を下げさせてしまったことが、僕はものすごくつらかったです。この方にもプライドもあるだろうにと思いながら、自分の吐いた言葉が毒のようにしばらく僕を悩ませ続けました。

この話の結末は、少し意外でした。

結局、老夫婦はその当日に一つその外国製のカギを買って行かれ、後日(1ヶ月後くらいだったと思います)にも、もう一つ同種のカギを買っていかれました(もちろん登録書に御記入されました)。

感情をむき出しにした僕の言葉を、わずか1%ほどの僕の正義を、この老夫婦は広い懐で包んでくださったと思っています。

コミュニケーションの難しさと、コミュニケーションの多彩さを考えさせられた出来事でした。
posted by ロン at 14:38| 瀋陽 | Comment(2) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月26日

過去の記事(金庫の中身)

これは、2年ほど前に1度アップさせていただいた記事です。

もしよろしければ、ご覧ください。僕が今までカギ屋として爆笑した出来事でした。


・・・・・・



それは、腰が直角くらいに曲がったおばあちゃんでした。年は90歳前後でした。

「あのー、金庫を開けて欲しいんやけど、開けれまっか?」

理由をお聞きすると、中に大事なものが入っているが番号をあわせても開かない、キーはあるが、とのこと。おばあちゃんは、車の運転ができないので、僕の店にはわざわざタクシーでお越しになられたとの事でした。

僕は、僕の車に乗せておばあちゃんの家まで向かいました。

おばあちゃんは
「息子の嫁の意地が悪くて、悪戯ばかりして私を困らせんねん。この金庫もダイヤルを嫁が変えたんじゃ」と、息子さんの奥さんの悪口をずっと言っておりました。あまり深入りすると僕の頭が混乱すると思ったので、上の空で聞いておりました。言うまでもありませんが、ダイヤルを変えるなどということはほとんどできません。

何故か、お年を召された女性は息子の嫁の悪口を言うものです。このおばあちゃん以外にも、そのように悪口を言う女性には、僕は何人か遭遇しております。

おばあちゃんの悪口が最高潮に達した時に、おばあちゃんの家に到着いたしました。おばあちゃんの家の扉には、防犯性の高いスイス製のシリンダーがついておりました。おそらく頻繁にカギ屋さんにお世話になっていたと思われます。

僕は、息子の嫁がダイヤルを変えたという金庫を見ました。

テンキー式の金庫でした。

「大事なものが入ってるねん。開けること出来まっか?ほんまにあの嫁は意地が悪いねん、なんであんなに意地が悪いんやろ?」と、金庫を前にしても悪口を言っておりました。

僕は、この手の金庫の解錠はしたことがありませんでした。幸いにも僕の知り合いのカギ屋さんが、以前にこの金庫を解錠した事をおばあちゃんが言っていたので、そのカギ屋さんから番号を聞くことができました。本当に幸いでした(今考えてみると、おばあちゃんは金庫開けを、少なくとも僕以外にも依頼していたのですね)。

金庫の中に入っているものは、お客様のものですので、カギ屋の仕事は扉を開けるまでです。もちろんカギ屋は依頼人立会いの下で解錠をします。

キーを挿して、番号を押しました。

「ピー」と言う音がして、キーが軽く回りました。

金庫の扉が開きました。

本来なら僕の仕事はここまでですが、
「中のもん、とってくれまへんか?」との事なので、おばあちゃん立会いの下に、金庫の中に手を伸ばし、中のものを取り出しました。

中に入っていたものは・・

・・饅頭でした。

僕が今までにした仕事で、最高のギャグでした。

僕は、二度と金庫の解錠では僕を呼ばないということを条件に、お金はいただかずに店に戻りました。釘を刺しておかないと、何度も呼ばれると思いました。


おばあちゃんの「快進撃」は、これだけにとどまりませんでした。

数週間が経ったある日、見覚えのある腰が直角くらいに曲がったおばあちゃんが僕の視界に入りました。おばあちゃんは僕の希望に反してどんどん近づいてきました。逃げ道のない僕は、睨まれて怯える猫になっていました。

おばあちゃんは、僕の顔をじっとみて

「あのー、神様の言葉がわかる人知りまへんか?何であんなに嫁は意地が悪いか神様に聞きたいねん」

・・僕はカギ屋です。
posted by ロン at 16:24| 瀋陽 | Comment(4) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月07日

恐怖

僕がこの地に店を構えて2ヶ月が経ったときのことでした。

お年を召された男性の方でした。僕の顔を見るなり微笑んで、僕の方にうれしそうに笑いながら近寄って来ました。

その方は、僕がこの地に移ってからのお客様ではありませんでした。かといって、前の店でのお客様でもありませんでした(前の店では今とは違ってかなりたくさんのお客様が来られておりました。そのため、僕は覚えていないのですが、お客様の方から、ありがたくも声をかけてくださることが多々ありました。本当に嬉しい事です)。

僕は覚えていないけど、この方は以前に僕の店をご利用された方かなと思い、僕は深く頭を下げました。

僕は頭を上げ、その方を迎えようとしたときでした。

その方は言葉にならない声を発しながら、僕の顔に手を伸ばし、僕の顔を両手で撫ではじめました。

僕は、恐怖におののきました。男に顔を撫でられるのは、生きてきてはじめてでした。ひょっとして、この方は ホモ ではないか?この方から見れば僕は ピチピチ のナイスバディなのか?ホモの基準に僕はひょっとして適ってしまっているのか?お年を召されても、人間の業とは深いものだななどと、いろいろ頭の中でめぐりました。

観念しかけたときでした。

「この人、いつもこうなんですよ。気にしないでください」と、その方の奥さんと思われる方が、笑いながら近づいて来ました。そしてその方と僕を引き離して、何もなかったように堂々と去っていかれました。


「この人、いつもこうなんですよ・・」


フレンドリーでアバンギャルドなご夫婦に、ナウくてヤングのロンは完全に打ちのめされました。
posted by ロン at 20:42| 上海 ??| Comment(2) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月04日

カギ屋さん犯人説

僕の店の近くのマンションで、鍵穴にボンドを入れられる悪質な悪戯が発生してます。僕も3回、悪戯されたカギの交換、解錠に行きました。そして今もなおこの悪戯は繰り返されているそうです。


先日のことでした。あるお年を召された女性が僕の店にお越しになられました。

ゆっくり僕の店に入られ
「ちょっと腰をかけさせてくれへんか?」といいました。

僕は
「どうぞどうぞ。ようこそお越しくださいました」といって、イスをさしだしました。少し腰か足が悪かったのか、ゆっくりとイスに座られました。

しばらく無言の時間が続きました。僕は、その方がお話しになられるまで黙っておりました。


「お兄ちゃん」
ようやくその方が口を開きました。

「お兄ちゃん。最近な、そこのマンション(例の悪戯が多発しているマンションです)で、カギがよく悪戯されて使えんようになとうねん。あんたしっとうか?私はそのマンションに住んどうねんけど」と言われました。

僕は3回もカギの交換などに行っているので
「もちろん知っておりますよ。僕も何度かカギの交換に行かせてもらいましたので」と応えました。

その方は
「お兄ちゃん、怒らんと聞いたってな。この店ができてからカギに悪戯されるようになってな。ひょっとしたら、あんたがやっとるんちゃうかと噂になっとるで」

僕は
「何でやねん」と言いつつ、ハリセンチョップをしたい衝動に駆られましたが、そこは抑えて黙ってその方の話を聞きました。

「あんたのところ、暇そうやし売り上げも少ないやろ。売り上げを上げるためにそんなことしとんちゃうかと噂になっとるで」

確かに売り上げは少ないので、いいところをついてくるなぁと、心で笑っておりました。

その方は、僕が犯人であるとの仮定で、一生懸命お話をされました。

噂を報告しに来られる方は、大抵「私はそんなことは思っていないけど、噂になっている」的な言い方をされます。そして「私は、兄ちゃんを初めて見たけど、兄ちゃんはそんなことする人やない」とお決まりの文句を言われます。

鍵穴ネタが尽きてくると、今度はその方の昔のお話をしてこられました。息子が僕と同い年であること、飲食店を経営していたことなど他愛も無い話でした。

一通り話をして、妙な 間 があいた後、突然こう言われました。

「あんた、良かったな。これでここにカギ屋さんがあるといういい宣伝になったな」
何か言っていることにつじつまが合っていませんでしたが、何だか嬉しそうでした。


その方は、それから後も僕の店にたびたび来てくれるようになり、来るたびに
「いい宣伝になったな」と嬉しそうに言ってきてくれます。


カギ屋さん犯人説は、何処に行ったのでしょう?
posted by ロン at 21:47| 上海 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月28日

目覚めよ

店があまりにも暇なので、僕はインターネットを通じて、タバコを吸いながらあるアニメの動画を見ておりました。

泥棒が少女に「何人死んだかな?」と問いかけているところでした。一番いい場面でした(あまりにも名作なのでこのアニメがどのアニメでどの回かをお解かりの方も多いと思います)。

「すみません。シャッターのカギですが、できますか?」と一人の男性が僕の店に入って来ました。見たところ僕と同じくらいの年齢でした。

僕は泣く泣くその名場面を後にして、作り笑いをしながら
「いらっしゃいませ。心を込めて作らせていただきます」とお客様に近づきました。

そのカギは一般的なシャッターのカギでした。6本の注文でした。

僕と同じくらいの年齢なら、このアニメは絶対知っているとの、根拠の無い確信を持って自信満々に
「少し時間がかかりますが、どうぞこちらでお座りになられてこのアニメでも見ていてください。こちらでタバコを吸われても結構ですよ」といって灰皿を出しました。

その方は愛想笑いをしながら、イスに座ることも無く立ったまま合鍵の完成を待っているようでした。見ようによっては、アニメから眼をそらしているようでした。

動画の声がしなくなりました。その方はようやくイスに座られました。タバコは吸われないようでした。僕は黙々とカギを切っていました。

ようやく切り終わりました。

僕は領収書の宛名をお聞きしました。変わった団体のお名前でした。

僕は、好奇心が旺盛なので

「何をされている方ですか?」とお聞きいたしました。

「私は教会から来ました。今日突然カギが壊れたんです」とおっしゃられました。

聞かなくてもいいのに僕は

「牧師さんですか?」と聞きました。

「牧師ではありません。私たちはこういうものです」と、冊子を2冊取り出し、カウンターに置かれました。某キリスト教系の宗教でした。

お会計を済ませ、ありがとうございましたといってお客様を送り出しました。苦笑いをしながらお客様は離れていきました。

僕は急いでイスに座り、少女がコーヒーのガラスのポットを落として割る場面からまた見始めました。




店が暇になって、タバコを吸いながらアニメを見ている・・・
しかももうすぐ40才・・・


神に仕える方々の目から見れば、僕は救うべき 子羊 なのでしょう・・・
posted by ロン at 21:02| 上海 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月20日

1億円

つい最近、忘れられない方とお会いしました。その方は、僕がホームセンターに勤めているときに、大変迷惑をかけた方でした。

僕が声をかけました。
「あの、Nさんですか?」

「そうやけど兄ちゃん、なんでワシの事知っとん?」

すっかり僕のことを忘れられているようでした。

「○○というホームセンターの○○店に、写真の現像を出された事がありますよね。その時はご迷惑をおかけしました」

「ああっ、あのときの兄ちゃんかぁ!」

思い出していただけました。


あの出来事は、僕にとって、そしてNさんにとって忘れられない出来事でした。


僕がホームセンターで働いていたとき、その店では写真の現像、DPEをしておりました。正社員だった僕は、2人の女性パートさんを使う立場でした。

休日、祭日など忙しい日は2人で、平日は1人で写真の現像をしておりました。僕と2人のパートさん以外には、写真の現像をできる社員、パートさんはいませんでした。


僕の休みの日でした。


僕の携帯に店から電話がかかってきました。なにやらただならぬ様子でした。

「えらいことがおこりました。Sさん(写真の現像ができるパートさんの一人です)がお客様の写真をダメにしてしまいました」僕と仲の良かった社員からの電話でした。


次の日、店に行くと店長が
「あの写真、えらい高くつくかも知れへんで。お客さんが言うにはあの写真が無かったら、1億円ぐらい損するかも知れへん言うとったで」


僕は意味がわかりませんでした。


その日の昼過ぎに、その方(Nさん)が来られました。

「あんた(僕のことです)が責任者か?えらいことしてくれたな・・」Nさんは笑いながら言っていましたが、明らかに動揺していました。

僕と店長は事務所で、その方のお話を聞きました。

「実は、あれは補助金の申請書類につける証拠写真やねん。今回、ある公立の美術館の施工をさせてもらったんやけど、今回の工法は日本で初めて我が社がやらしてもらってん。その工法を説明するために写真をとったんやけど、この写真が無かったら補助金が出ないねん。補助金が約1億円やねん。どないしてくれるんか説明してほしい」

僕と店長は、言葉も出ませんでした。僕はともかく、これだけの額は店長レベルで決断できるわけもありませんでした。

このことに関しては、結局本部で対処することになりました。


このことで、パートのSさんは即日店を辞め、写真の現像の業務は廃止となりました。

もともと僕は、写真の現像以外に部門の担当を持っており、かつそのグループ長でした。写真の現像などは、部門を持っているものが、片手間でできるような業務ではありませんでした(僕が片手間で写真の現像などできるものではない、と店長に提言をした直後にこの事件が起こりました)。店長は学生アルバイトからも<会社の犬>と呼ばれているような、稀に見るイエスマンでした。僕はグループ長の立場を外され、サービスカウンター専任の社員となりました(僕はチーフという管理職でもありました)。



僕は、このことが引き金となってこのホームセンターを辞めました。そして独立して カギ屋 になりました。



久しぶりにお会いしたNさんは
「あの時は、えらい迷惑かけたなぁ。でも、こっちも土壇場やったからしょうがなかってん」と、その時も僕に気を使って下さっていました。このときに初めて知りましたが、Nさんが撮影した予備の写真をつなぎ合わせて、申請して補助金はなんとかもらえたようでした。
Nさんもあの事件が引き金になったかどうかはわかりませんが、今は独立されて別の仕事に就いていらっしゃいます。


それからしばしば、Nさんは僕の店に来てくださいます。


一つの出来事が起こると、人間は似たような道を歩むのかな?と考えさせられた出来事、そして出会いでした。
posted by ロン at 21:32| 上海 ??| Comment(4) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月22日

温度差

先日のブログにも書かせていただきましたが、バンプキーについて書かせていただきます。

バンプキーのテレビ放送があってから、僕の店には4件の問い合わせがありました。

1件はGOALのV18シリンダーを取り付けられているお客様で、2件はカバスターを取り付けられているお客様でした。もう1件は業者の方でした。

GOALのV18の方は、僕のお得意様のお客様です。
約1年前に僕の店で取替えをされました。
「これ、すぐに開くらしいな」

僕は
「取り付けさせていただいたものはメーカーですでに対応済みのものです」とお答えしました。実際、メーカーでは早い段階で対応しているようです。

カバスターの2件は、僕の店で取り付けたものではありませんでしたが、バンピングであけることはかなり困難です。その旨をお伝えしました。

どちらのお客様も、一応納得してお帰りになられました。


僕は、バンピングのような解錠の手口をテレビで放送することについて、かなり嫌悪感を感じることは前の記事(坊主憎けりゃ袈裟まで憎い)で書かせていただきました。こんな手口をテレビで放映することは社会を動揺させること以外に何もありません。

しかし

バンピングについてのお客様からの問い合わせは思ったよりも少なかったです。ピッキング、サムターン回し、カム送り、こじ開けなどの過剰な報道で解錠の手口に対して麻痺しているのでしょうか?大半のお客様は冷めているようで、僕だけが熱くなっています。

僕とお客様の間には 温度差 があると感じました。


あと一人、バンプキーについて僕に聞いてきた同業者の方がいらっしゃいました。

「あのー バンプキーのことなんですけど、もし持ってはったらブランクキーはありますのでコピーしてもらえませんか?」

僕はもちろんお断りしました。知識の出し惜しみではありません。

解錠方法の知識の有無は、カギ屋にとって生命線です。解錠方法を知りたくても僕は同業者に聞くことはしません。やせ我慢して時期を待つか、自力で習得するか、教えてもらうように仕向けます。同業者に聞くということは、自分の力の無さを曝け出すようなものです。

バンプキーは、カギの構造を知っているカギ屋なら自分で作ることは可能です。あまり言ってはいけないことかもしれませんが、バンプキーで解錠できるディンプルキーなら、もっと簡単に解錠する方法はあります(詳しくは書けませんが)。

僕と、この同業者の方にも 温度差 があります。
posted by ロン at 22:16| 上海 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月12日

土壇場

数年前の3月31日でした。

「すみません。あなた、机の鍵を開けることできますか?」とのことでした。

中年男性、おまけにひげ面でメガネで、第一印象は 中年オタク という感じでした。

「僕の仕事はカギ開けですので、おそらくできるはずです」と強気な発言をしてしまいました。机の鍵は簡単に開くものが多く、僕は自分の力を過信していました。

(今日は久しぶりに高校の同級生と一緒に飲むんやけど、この時間やったらぎりぎり間に合うかなぁ・・)と思っておりました。

「今日、この机の鍵が開かんかったらちょっとやばいねん。新しい一年生の書類が入っとんねん。キーをいれたまま閉めたら、いきなり鍵がかかってしもてん」この方はすぐ近くの高校の教師でした。

「とにかく本当によろしくお願いします。大変なんですわ。今日中にやらんとあかんのですわ」と念押しをされました。何をやらんとあかんのか僕にはわかりませんでした。

その高校は僕の店の目と鼻の先にあります。僕はピックを持ってその高校に行きました。

先生が「この机ですわ」といって、ある机を指差しました。僕は鍵穴を覗きました。上下タンブラーのディスクシリンダーでした。

「この人、カギ屋さんやねん。みんな見ときいや。今から鍵開けるで」
言わなくてもいいのに、そのひげ先生の一言で僕は職員室のヒーローになってしまいました。

ピッキングで開けようとしました。すぐに鍵穴は回るのですが、デットボルトは引っ込みません。何度やっても同じでした。職員室の皆さんは僕の鍵開けの姿を穴が開くほど見てました。

シリンダーに番号が書いてありましたので、僕はその番号を控えてコード作製をしようと一旦店に戻りました。

その机のコード番号を探しました。アルファベットが付いている番号と付いていない番号がありました。

コードマシンでその鍵を作りました。高校の職員室に行って鍵穴に入れてまわしました。回りませんでした。

次に別の番号で作ってみました。鍵穴に突っ込みました。キーは鍵穴に入りませんでした。

僕はどうして鍵が回らないのか判りませんでした。友達との時間がどんどん近づいてきました。

よくよくキーを見てみると、僕が作り間違えをしていることに気がつきました。すぐに作り直して三度高校へ向かいました。

高校に向かう途中に友達に電話をしました。

友達は気を使ってくれて
「また今度にしようや」といってくれました。この約束は、僕が無理やり誘ってようやくこの日のこの時間にしたものでした。僕が高校時代に仲の良かったあこがれていた友達と5年ぶりに会う約束でした。

僕は何度も「ごめん、ごめんな」を繰り返しました。申し訳ない気持ちで次の約束もできませんでした。

高校の職員室に到着して、机の鍵穴にキーを差し込んで回しました。開きました。

「やったーっ」

先生は本当に喜んでいました。たとえるなら
「勝訴」と書かれた長い半紙を持って裁判所から出てくるときのようでした。

友達と会えなくなったことは、僕の未熟さからだと判っていてもどうしてもやり切れませんでした。

先生も僕もお互い土壇場でしたが、僕自身の未熟さを充分承知した上で最後に一言、言わせてください。

何が やったーっ じゃ!!
posted by ロン at 21:46| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月21日

重い言葉

その方は会社を経営されている方でした。

「カギを落としたか、盗られたか知らんけど、カギが見当たらへんねん。カギを至急に換えて欲しいねんけど」

サムラッチ錠と補助錠が付いていました。同一キーでした。

とりあえず、補助錠をディンプル錠に替えました。

「不安やから、もう一つの方も替えとってくれへんかな」

サムラッチ錠の取替え用シリンダーを持ち合わせていなかったので、取り寄せて後日取り付けに行きました。


それから2年が過ぎました。

「カギを落としたか、盗られたか・・」 どこかで聞いたような声、聞いたような内容でした。電話での依頼でした。

「とにかく急いでんねん。早く替えて欲しいねん」

その方の扉のシリンダーを記憶しておりましたが、やはりサムラッチ錠の取替え用シリンダーを持ち合わせてなかったので、その日のうちに問屋に取りに行き、その方の家に取替えに行きました。

取替えが終わり「兄ちゃん、ありがとうな。迷惑かけたな」という言葉をいただいた後に
「あんた、カギ開けできるか?」といってこられました。

「わしが持っとるマンションの鍵をなくしてしもてなぁ」

この方はよく鍵をなくされる方だな と思いながら

「カギ開けはできますよ」と答えました。


数日して、その方と時間を合わせてマンションに行きました。

ディスクシリンダーでした。錠前は公団によくある型のものでした。

解錠してシリンダー交換をしました。かかった時間は5分ほどでした。

お代金をいただくときに

「あんた、このマンション要らんか?」と唐突に言ってきました。

僕はてっきり、解錠&取替えの代金をこのマンションで払うのかと思いました。この方はお金を持っていないんだろうか?これが差し押さえの状況なのだろうか?といろいろ頭を駆け巡りました。これでマンションがもらえるなら、僕にとっては真によい条件でした(僕は本当にめでたい頭を持っています)。

「このマンション、息子のために買ったんやけど、やりたいことがあるゆうて出て行きよったんや。いつ帰ってくるか分からへんねん」

重い言葉でした。

僕はこの方の息子さんの代役を務めることはできません。

社長という地位、経済的余裕があっても手に入れられないものがあるということを知った、30代後半の夏でした。
posted by ロン at 22:31| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月11日

同世代バッシング

これは、僕が言ったことではありませんので御了承ください。

その方は、芸術家です。御高齢です。何度も市や県の作品展で入賞されている方です。僕の店はカギの業務のほかに名刺作成もしておりますので、その方が芸術家だという事がわかりました。

その方が初めて店に来られた時から、よく話が合うのですぐに打ち解けました。非常に面白い方です。

最近のことです。

そのときは、僕が今の店を離れて、別の店で商売するという話で盛り上がっておりました。その方は、

「店を構えるんやったら、場所を選ばんとあかんで。場所によって、売り上げが変わるからな」と厳しい顔で僕に忠告してくださいました。ありがたいお言葉をいただきました。

実際、僕は店を出す場所に関しては、かなり悩んでおりました。やはりお年を召された方の言葉には、重みがありました。

僕はこの方に教えを請いました。

「どんなところがよろしいでしょうか?」と聞きました。

「できたら、よく目立つところや。道路に面しとう方がええな。駐車場があるほうがええわ。人がたくさん通る所やな」

マニュアルどおりの答えでした。何のひねりもない答えでした。いっぺんに芸術家から、ただのおっさんに変わりました。

「でも最近なぁ・・」

おっさんが、何かつぶやきたそうでした。

「この辺で、ようけ人が並んでるところがあるやろ。何か訳のわからん健康食品を売っとる所や。3ヶ月ほどしたらさっさと閉めよる」

言われてみれば最近、この類の店が僕の住んでいる地域では、たくさんあります。

おっさんは続けました。

「あんなところに並んどる奴ら見てみい。わしと同じ年取った奴らや。何が楽しいてあんなところに並んどるんやろうなぁ。アホとちゃうか!」

このおっさんは、何が言いたかったのでしょう?

興奮して、唐突に同世代バッシングをし始めたことに、僕は笑いが出てしまいました。

聞いたことも無いメーカーの健康食品を実演販売して、3ヶ月ほどしてさっさと閉める店に並んでいるご老人を見るのは、確かに気持ちのいいものではありません。

この気持ちのいいものではない感情を「アホとちゃうか!」という言葉で見事に表現したこのおっさんは、確かに芸術家でした。

:先日の 微妙な違い にコメントをくださった cvayanさんへ

コメントありがとうございました。ご質問に答えさせていただきます。

僕は、ザ・たっちの違いは解りません。というより
以下の3つの理由によって解りたくありません

1 必然性がない

茉奈 佳奈の違いを解るということは、茉奈さんのファンである僕には必然性があります。見分けることができるからこそ茉奈さんのファンであることが証明されるのです。僕は、ザ・たっちのファンではありません。

2 利益がない

僕の短い人生において、ザ・たっちを見分けることができたからといって、僕には何の精神的、経済的利益もありません。

3 母が喜ぶ

もし、ザ・たっちの違いが解るほど僕は男の顔を観察している と母が誤解したら、母は僕のことを「やっぱり・・」といってホモと勘違いし、奴に優越感を与えてしまいます。
(母が、僕をホモだと思っているエピソードは過去の記事
「母が刺客を送り込んできた日」
又は
「セールスに負けた日」
をお読みください)。
posted by ロン at 23:55| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月17日

厚顔

2月のことでした。

乳母車をひいた女姓がお越しになられました。貴婦人のような近代的な帽子をかぶった、何ともいえないモダンな女性でした。

「この合鍵をお願いします」と一本の鍵をわたされました。普通のピンシリンダーのキーでした。

鍵を受け取る時に、乳母車の赤ちゃんが視界に入りました。

恐ろしくいい顔をした赤ちゃんでした。

男の子にしても女の子にしても、形容のしようがないほど可愛く、精悍な顔つきをした赤ちゃんでした。

合鍵を切り終わり、レジをする間に
「この赤ちゃん、本当にいい顔をされてますね。今までこんなにいい顔をした赤ちゃん、見たことがないですよ。」
お世辞ではなく、本当に僕の心から出た言葉を、何ともいえないモダンなお母様に伝えました。

僕は、モダンなお母様が恥ずかしがって「ありがとう」とか、謙遜して「そんなに言われたのは初めてです」とか、「よかったねー」と、赤ちゃんに微笑みかけるとかするものだと思いました。

そのお母さんは、
「いい顔してるでしょう。よく言われるのよ」と、当たり前のようにおぬかしになられました。

本当にいい顔をしているので、ここまでならお茶目なママだなぁ、と微笑ましいのですが

「男の子ですか?女の子ですか?」との僕の質問に
「女の子なの。皆さんに精悍だと言われるんですよ」とまじめな顔をしてお答えになられました。

さらに
「将来が楽しみですね」と僕が言うと
「女優かタカラヅカにいけると思うんだけど」と、追い討ちをかけられました。僕は顔で笑って心で笑ってました。

近代的な帽子から、ちらっと見えたお母様の顔は、春巻の皮のように厚い化粧でおおわれてました。

この赤ちゃんの、将来が本当に楽しみです。
posted by ロン at 23:25| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月12日

虎の威を借る狐

僕の仲のいい友達から聞いた話です。

友達は以前、ホームセンターに勤めていました。

そのホームセンターには、なぜかクレームが多く、友達もクレーム処理を数多くこなしてきたそうです。

その一つの、かなり変わったお客さんのエピソードを紹介いたします。


僕の友達は、電動工具の担当をしていました。

ある日
「これ、2回しか使ってへんのに、もう動かへんねん。不良品ちゃうか?」と、一人のお客様がそのホームセンターで買われた丸ノコを持ってきました。

早速、その友達が、対応をしました。

そのお客様は、奇抜な格好をしていることによって、よくテレビに出ている中年の男性で、その当時、関西ではかなり有名な一般人でした。

お客様の使い方を聞いていると、どう考えても壊れるような使い方でした。説明書にも書いてあることを無視して、かなりの長時間作動させていたということでした。

友達は
「そんなに長時間使っていて、焦げたような臭いがしませんでしたか?」との質問に
「焦げたような臭いはしとったで」としゃあしゃあといっていたそうです。

丸ノコを長時間連続で使用すると、不具合をおこすということは、少し考えれば予想ができないことではありません。仮に百歩譲って予想ができないとしても、長時間の使用の禁止は説明書に書かれてあることです。

そのお客さんは
「2回しか使ってへんのに動かんようになったんやで!不良品とちゃうんかい!」と、いって、交換か返品を要求したそうです。

友達は、いくらお客様でも筋が通ってないことは、受け入れることができませんといって、交換も返品も断ったそうです。社会的には至極当然のことです。

するとお客様は、ある人と一緒に仲良く写っている一枚の写真を友達に見せて
「わしは、この人 と仲がええねん。今日のこと、この人に言うてテレビで放送してもらうで!」といったそうです。

この人 とは、関西では知らない人はいないというほどの有名な落語家さんでした。もちろん僕も知っている人でした。

友達は
「お客さん、そんなんおかしいですやん。お客さんの使い方が間違っているのに、それをテレビに言うなんて筋違いですやん。テレビにいうなら言ったらよろしいですやん」と言ったそうです。

結局、この騒ぎを別の従業員が副店長に言いに行って、慌てて副店長が出てきて新品と取り替えたそうです。


今でも店や企業、役所などに対するクレームを週に一回放送する某番組に この落語家さんは出て、司会を務めています。この番組は、消費者は全て正しい、との立場から、店や企業、役所などを厳しく批判します(大抵は店などが悪いように思いますが・・)。

店にしろ役所にしろ、クレームを起こされる側に問題があるとは思いますが、そうでなく、このお客さんのような人が、事実を歪曲していることがあることを、この落語家さんはご存知でしょうか?

虎の威を借る狐 は、それ自体が恥ずかしい行為ですが、付け加えて 威力業務妨害 になることを認識しなければなりません。

こんな中年馬鹿狐が、モラルの低下を招くのでしょうね。
posted by ロン at 22:41| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月08日

ファン 2

その日は、女性スタッフに店を任せて出張工事に出かけておりました。簡単なシリンダー交換だったのですが、いろいろ寄り道をして、店に帰ったのは2時間後でした。

店に帰ると、スタッフの顔が変わっておりました。目の下に くま をつくっており、げっそりしておりました。

僕は
「何かあったんかいな?」と尋ねると
「Tさんという方がお越しになられました。オーナー(僕)のことを友達や言うてましたよ。先ほどお帰りになられましたよ」と、かなり疲れた口調で言いました。

Tさんは、僕の店のお得意様ですが、かなり個性的な中年女性です。今までは、僕が店にいるときにお越しになられ、かなりの長時間世間話をされます。その日は、店に女性スタッフがいたので、その女性スタッフと世間話をしていたようでした。

僕は、
「面白い人やったやろ?」と笑いながら言うと
「もういいです!」といってすねてしまいました。

「何があったん?」と聞くと、僕が出張に行ってからすぐにTさんがお越しになられて、ずっと世間話をされてましたそうです。ほかのお客様が来られても、ずっと一人でしゃべってられてました。
スタッフは、同じ内容の話を、何度も何度も聞いていたそうで、あいづちを打つのに、かなり疲れたそうです。
Tさんが少し疲れたようなそぶりをしたので、スタッフはすかさず
「今日は面白い話をありがとうございました」と言うと、Tさんは
「何、その言い方?私にもう帰れということ?」と切り替えされたそうで
「いえいえ、面白いお話なので、もっとお話できたらと思いまして・・」と、心にもないことを言ってしまったそうです。
Tさんは、それからまた30分ほどお話をされて、満足したようでお帰りになられたそうです。Tさんは、おしゃべりをしに来ただけで、何も注文をされなかったそうです。

スタッフによると、Tさんは
「私の同級生には、警察のえらいさんや、一流企業の部長がいる」という類の自慢話を何度もしていたとのことでした。僕が相手をするときと同じことをいってました。


ある日、カギの問屋さんが来て、世間話をしていました。

「この間、強烈なお客さんがいましたよ。あるカギ屋さんが下手をうってしまって、僕も謝りに言ったんですけど、訳のわからんことをわめき散らしてました。私の同級生には警察のえらいさんがいるとか、一流企業の部長がいるとか・・」

どこかで聞いたような話でした。

「その人、ひょっとしてTさん言う人ちゃいますか?背の低い少し年をとってる女の人・・」というと
「そうそうそう!!!」と、大爆笑してました。



それから何週間が経ったある日、僕が店にいるときにTさんがお越しになられました。
Tさんは相変わらず
「私には、警察のえらいさん・・」の類の話をまたされました。

一息つくと
「この間、鍵屋さんにカギを替えてもらったんだけど、散々だったのよ!だから私、言ってやったの。私には警察のえらいさんや、大企業の部長が同級生にいるって。」
また、はじまりました。

ひとしきり話をした後、
「やっぱり鍵屋さんは、あなたのような信用できる人に頼まないとねぇ」

僕は、この方から仕事をうけたまわったことはありませんでした。

この方は、無条件で話を聞いてくれる人を信用するのでしょう。
posted by ロン at 19:36| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月15日

場外乱闘

仕事を離れてまで、カギのことで追いかけられたことがあります。

初対面の時から、その方は昔からの友達みたいに気軽に話しかけてきました。友達ならばさわやかな会話だろうと思いますが、少し恐怖を感じました。ふくよかな女性でした。


ある日のことでした。僕が店が終わったらよく行くスーパーで、半額弁当をあさっていたときでした。どこかでお見かけしたふくよかな女性と目が合いました。

「わださん!あなた、わださんですよね?!」と、迫りよってきました。

僕は、わだ ではありません。

僕は
「僕は、わださん ではありませんよ」と言いました。

「そうですか、わださん ではないですか」といって、また後ろをむいて歩き出しました。

僕は、後姿を目で追っていました。

その女性が5 6歩進んだときでした。ものすごい勢いで振り返り

「あなたの名前を教えてください!」と迫ってきました。

僕は
「名前は個人情報なので、教えることはできません」とお断りいたしました。ものすごい恐怖におののきながら。

するとその女性は
「聞こえるの。私には聞こえるの。私の心の声が○○○のxxx号室にカギを取り付けなさいって。わださん に取り付けてもらいなさいって」彼女の心では、僕はまだ わださん でした。

○○○とは、このスーパーの近くの老人ホームでした。

「お断りいたします」といって、気の小さい僕は、半額の弁当さえ買わずに全速力で逃げ出しました。




その女性との場外乱闘はこれだけにはとどまりませんでした。

僕が、ある日少し早く家に帰る日でした。

家の近くで、悪寒を感じました。見覚えのある顔が迫ってきました。

ある家を指差して

「あの家の上で、少し前に白い着物を着た女の人が踊ってましたよ」

あの家とは、僕の家でした。

僕には、もう逃げ道はありませんでした。
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2007年02月05日

相性

ある老夫婦でした。石の表札の注文をいただきました。とても感じのいい老夫婦でした。

珍しい名字でした。またご要望のフォント(字体)、石の種類もなかなか渋いものでした。

約一週間後その表札が届き、早速、間違いが無いかを確認いたしました。
すばらしい出来上がりでした。お客様に 届きました のお電話をかけました。

次の日、僕は午前中をスタッフに任せて昼過ぎに店に出ました。

スタッフは
「あの表札、横書きではなくて縦書きでしたよ」と言ってきました。ご注文は縦書きでした(届いたものは横書きでした)。僕は聞き間違えていたのです。スタッフが気を利かせてすぐに再注文してくれていました。

約一週間後に表札が届きました。

ここで間違いがあれば、お客様に迷惑をかけることになるので、気合を入れて確認しました。

目を疑いました。

縦書き、サイズ、フォントはOKなのですが、なんと石の種類が違ってました。

僕はスタッフに
「石の種類の変更でもあったんかいな?」と聞くと
「ごめんなさい」という返事でした。

3回目の注文をしました。注文をした直後にその老夫婦がお越しになられ
「まだかいな?」といってきました。もちろん間違った表札が届いたとは申し上げられず、しどろもどろになりながら

「表札に心を込めておりますので、もう少しお待ちいただけますでしょうか」と、わけのわからないことをいってしまいました。ご夫婦はいい方でした。笑ってお帰りになられました。

3回目の表札が届きました。問題ありませんでした。

お客様に 届きました の電話をかけました。数日後お引取りにこられました。

老夫婦は本当に感じのいい方でしたが、この店とは相性が悪いと思っていました。

この老夫婦がお帰りになられるときに、漬物石にしては軽い、前の表札の処分を考えておりました。

僕は
「もう一軒、家を建てられたときにお使いください」と、表札の一枚を渡そうとしました。

旦那様の方が
「ちょうどよかった!表札をつけるところがかなりへっこんどるから、何かで埋めようとおもっとったんですわ!この表札埋めたらええんですわ!」

最後の最後に、名誉挽回できました。
posted by ロン at 18:10| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月29日

人は見かけどおりのこともある

その方(Gさんとします)と初めてお会いしたのは、僕が店をもって1年も経っていない時でした。

「カギ無くしてしもて家に入られへんねんけど」と閉店間際にこられました。

僕はGさんの後をついていきました。Gさんの扉のカギはディスクシリンダーでした。ピッキングで解錠してシリンダーを取り出し、鑢でカギ作りをしながらGさんと雑談をしておりました。いかつい顔をしてましたが、なかなか面白く、人懐っこい人でした。僕は、気の合ったお客様には安くしてしまうという欠点があります。Gさんについては、わずかなお代金をいただきました(気の合わないお客様から法外なお代金を受け取るというわけではありません。適正価格を満額いただくだけです)。

Gさんは、それからちょくちょく僕の店に来るようになりました。

先日のことです。

僕の店に来ていろいろ話をしていました。

ふとしたことで、僕の買い物に付き合ってくれることになり、僕の車で某大型電気店に行きました。僕があるものを買うために、値段の交渉をしてくれるというのです。

Gさんは、見た目がいかつく、交渉もかなり強引でした。見ていてハラハラしました。おかげで予想していたよりも、安く買うことができました。

その電気店で、僕の店のお得意様に会いました。少し話をして、ごきげんよう、といってわかれました。

Gさんに
「今さっき、僕が話していた方の娘さんが、市会議員ですよ」と言いました。

Gさんは
「議員さんやったら、俺の前科、もみ消してくれへんかなぁ」と淡々と言いました。

よくよく聞くと、Gさんは、いわゆる弁当もち(執行猶予中)でした。



いかつい顔は、伊達ではありませんでした。
posted by ロン at 22:31| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月19日

僕が僕であることの証明

5年ほど前の話です。

年は60歳くらい、男性、ピシッとスーツをまとい、その身なりから社会的地位のある方とお見受けいたしました。

「これと同じ大きさのゴム印を作ってください」と一個のゴム印を差し出しました。学校法人でした。少し長い学校名でした。やはり社会的地位のある方でした。

「これもお願いします」ともう一個、ゴム印を差し出しました。
 理事長 ○○○○と彫られてました。
「この○○○○を××××にしてください」と名前の変更を希望されました。別に難しいこともありませんので、僕はありがたく注文を請けたまわりました。

そのお持ちいただいたゴム印の印影をいただき、変更するところをその方とお互いに確認しあって、伝票を書きました。
出来上がったら、到着の連絡をするために、お客様のお名前を伝票にお書きいただきました。お名前は××××でした。電話番号もお書きいただきました。

「商品が出来上がりましたらお電話をいたします」と申し上げました。

「電話は結構です。1週間ほどしたら出来上がりますよね?一週間後に来ます」とのことでした。

「もし、何らかの理由で一週間後でも出来上がっていない場合がありますので、こちらから必ずお電話いたします」と申し上げました。

「電話は要らないので置いておいて下さい」

「いえ、入れ違いになりますと御迷惑をかけることになりますので」

それから電話をかける、いらないの口論となりました。


僕が電話にこだわるのには理由があります。

商品が届いていないのにお客様がお越しになられると御足労をかけることになり迷惑をかけることになります。また、何らかの理由で、御注文どおりの商品が出来上がらないや納期が遅れる場合などは、予めの連絡ができなければ、それも迷惑をかけることになります。特に印鑑関係については、納期が遅れると法的なことが絡む場合がありますので、特に注意しております。

以上は建前です。


本音は、僕はこの方の電話を拒むその態度に、ある種の異常さを感じていました。

あまりにもしつこく電話での連絡を嫌がるので
「お客様、僕が電話をして何か不都合なことがあるんですか?」といいました。

突然、その方の態度が豹変しました。

「あんたもおかしなことを言いよるな!こっちがええ言うたらそれでええんじゃ!一年たっても二年たっても商品来えへんことがあるんかい?」と怒鳴り声を上げました。

「可能性としてはあります。しつこいようですが電話をおかけいたします」といいました。

結局、この方は罵声を僕に浴びせて店を離れていきました。


本人を特定できる情報(住所や電話番号、免許証番号など 以下個人情報とします)をかくす人は、おおよそ違法行為をしている人、もしくはしようとしている人、又は自意識過剰の人です。僕は、個人情報を隠そうとする態度に、極度の嫌悪感を覚えます。

僕は、個人情報を隠す者の根底と、匿名で誹謗中傷を書き込む者の根底は、抵触する部分があると考えています。

この方が違法行為をしようとしていたかどうかはわかりませんが、僕は嫌悪感を覚えました。

経営者でありながら、商売よりも感情が先立つことがあります。でも僕はこの感情を大切にしていきたいと思っています。大げさに犯罪抑止などというつもりはありません。この嫌悪感は理屈ではありません。僕が僕であることの証明だと思ってます。
posted by ロン at 22:45| 上海 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月17日

猪八戒

大晦日に、1人のお客様がお越しになられました。

「カギが閉まってしもたんやけど、開ける方法ないかいな?」

よくお聞きすると、いつもカギをかけない部屋のカギが、ふとした弾みでかかってしまって開けられない、使わないカギなのでキーもない、と言うことでした。その方の風貌は、どっしりとした体格で、西遊記でいうと猪八戒のようでした(僕は本物の猪八戒を見たことはありませんが)。

玄関の扉ならともかく、室内のカギなので別に慌てるほどのこともないと思っていました。


「部屋の中に、おせち料理の食器が入ってるねん。明日お客さんがたくさん来るから、はよ開けたいねん。はよ開けんかったら間に合わへんねん」とその方が続けました。

この時期にして、このハプニングあり、でした。

ちょうどその日は、午後からスタッフが出勤する予定でした。

「あと、2時間程したらお伺いできるようになりますが」と申し上げますと

「以前、ここで家のカギ、ほとんど換えたんやけど覚えてるか?あんたが紹介してくれた人がきてやってくれてん。ほとんどのカギを換えたんやけど。ごっつい金額やったで」と、猪八戒は恩着せがましく言ってきました。

どうも、僕か、その紹介した人(Jさんとします)に、無料で開けさせようとの口ぶりでした。

「もし、解錠ができなければお代金はいただきませんが・・Jがそちらに伺っても同じだと思います」と申し上げると

「カギの壊し方を教えてくれへんか?」といって来ました。どうしても解錠にお金を払いたくないようでした。

カギの壊し方は、カギの解錠に関することなので教えることはできません。ある意味ではピッキングと同じく、その技術が悪用されると犯罪に抵触する恐れがあるからです。ある意味では、ピッキングよりも早く解錠で来てしまう恐れがあります。

僕は正直に
「カギによってカギの壊し方は異なりますので、一概には教えれません。それより、カギの壊し方は倫理上お教えすることはできません」と申し上げました。
その方も、心では納得されていたとお見受けいたしました。それ以上は聞くこともなく、困ったような顔のままお帰りになられました。

つい数日前のことです。

猪八戒が僕の店の前を通りました。僕と目が合い、近づいてきました。

「兄ちゃん、迷惑かけたな。よう考えたらカギの壊し方なんか教えられへんわなぁ。結局、こっちで考えながら壊してん。戸に穴あけてん。後でまた塞ぐことにしてん」

年末に来られた時の棘はなく、すごくやさしくなったように感じました。

その変わりようは、例えるなら、恩着せがましい猪八戒から、霜降りトントロに変わったようでした。
posted by ロン at 21:23| 上海 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月08日

グエン

今年初めての珍客を紹介いたします。

1月3日のことでした。

同業者から一本の電話がありました。

「MIWAの○○の本体持ってますか?もしあるようでしたらお客様を紹介します。お客さんがこのカギを分解してしまって、元通りに戻すことができなくなって」とのことでした。

僕の店は、通常のカギ屋よりもたくさんの種類と数を持っていると自負しております。同業者のいう錠前は、当然持っておりました(通常のカギ屋さんもこれはもっていると思います)。僕はそのお客さんをこちらにお越しいただくようにいいました。

2時間ほどして、その方は来られました。

「さっき、電話あったと思うが」とかなり焦っているようでした。色の黒い男性でした。
すぐにお客様が分解したという錠前本体を確認しました。見事にばらばらでした。元通りに戻すことは不可能でした。

「このカギ、新しいのあるか?」と少し訛った口調でした。
僕は、そのタイプの錠前の新品を差し出しました。すると
「これに、もっといいカギをつけてくれるか?」とのリクエストでした。

何度聞いても、やはり訛ってました。おそらく外国人だと思ったので
「ニーハオ」と言ってみました。何の反応もありませんでした。中国人ではありませんでした。
僕は素直に
「どちらの方ですか?」と聞きました。

「俺、ベトナムだ」と答えてくれました。

僕はこの方の国籍、風貌、雰囲気から、勝手に グエン と名付けました。

僕が、この錠前に防犯性の高いシリンダーをつける間にグエンは
「俺が鍵を取り換えようと思っただ。ばらばらになってしまっただ。どう直していいかわからないだ。だから買いに来たんだ」と切々と語ってきました。南方の顔つきで東北弁をしゃべっていました。

僕がシリンダーをつけおわると
「カギ、何本ついてる?」と聞いてきましたので
「3本ですが、何本ご入用ですか?」と聞き返しました。

「全部で6本いるだ」とグエンは言ってきました。

僕が合鍵を作っていると
「鍵の調子が悪いから、換えようとしたんだ。でも壊してしまっただ。お父さんの家の鍵だ。お父さんにプレゼントするだ」と、しゃべりかけてきました。よく聞くと、お父さんの家に新年の訪問をした時に、鍵の調子が悪いので直そうとしたところ、シリンダーのはずし方がわからずに、ねじをはずしていくうちにばらばらになってしまったとのことでした。

僕はグエンのこの心に少し感動、そして自分がやらかした失敗の尻拭いをする姿に親しみを覚えました。

グエンは、お父さんの家の新しい鍵を手にすると、僕の店のショーケースの中のある錠前を指差して
「この鍵、いくらするだ?」と聞いてきました。

「これは、お母さんの家についている鍵だ。俺が換えるだ」


親孝行のグエンに、僕は何ともいえない心地よさを感じました。

グエンがばらばらになった錠前をもって、こちらに来ないように僕は祈ってるだ。
posted by ロン at 21:46| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月15日

崇め奉られた話

その日は、朝にスタッフに入ってもらって僕はドライブを楽しんでおりました。車を海岸沿いに停めて、僕は海に向かって演歌を鼻歌で歌いながら、日本に生まれてよかったと実感しておりました。

さびの部分に入った時に携帯がなりました。店からでした。いやな予感がしました。

「Aさんという方から、トイレのカギが開かないということですけど。すぐ来て欲しいと言ってますが」

Aさんは、以前に僕が扉のカギを取り替えさせていただいた方です。Aさんのお宅にすぐに向かいました。

トイレの鍵や風呂の鍵などの室内錠は、鍵穴がある玄関錠とは違い、カギが開かないとなると厄介です。キーを失くして開かない場合と違い、錠前本体の故障の可能性が高いからです。ラッチやデットボルトを切断しなければならない場合には、扉にダメージを与えないようにしなくてはなりません。

Aさんの家に着くとAさんは、待ってましたとばかりにヒーローを見るような眼差しで僕を迎えてくれました。ものすごく焦っていました。
「トイレのカギが閉まったままになって、開きませんねん。もうトイレに入られへんかと思うと怖くて・・隣の人にトイレを借りに行くのも恥ずかしいし・・」とかなり取り乱しながらしどろもどろに説明してくれました。

僕は、絶対開けられるという自信はなかったのですが
「必ず開けますから御安心ください」といって、そのトイレの扉に近づきました。Aさんは「ナンマンダブナンマンダブ」と僕の背中を拝んでいました。


鍵を見ました。

僕は10円玉を財布から取り出しました。

そして

レバーの中心の切れ込みに10円玉を突っ込んで90度まわしました。

レバーを下げて引っ張りました。扉は開きました。約10秒の出来事でした。


Aさんは、スーパーヒーローを見るような眼差しで僕を見つめてくれました。そして今度は、僕に面と向かって「ナンマンダブナンマンダブ・・」と、先ほどよりも強い勢いで拝み始めました。


僕が帰ろうとすると
「おいくらですか?」と聞いてきました。

こんなことでお代金をいただくのは心苦しかったので
「結構ですよ」と僕はいいました。

Aさんは「駄目です!!」といって、3千円を僕に無理やり渡してくれました。



崇め奉られた上に、10円玉の力で3千円を手に入れました。

しめしめ・・
posted by ロン at 23:33| 上海 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月12日

ポール 再び

9月27日に紹介させていただいた、ポールから表札の注文をいただきました。そのときのことを書かせていただきます。

その日、僕が出張工事から帰ってくると、女性スタッフが青い顔をしておりました。
「本当にこれでいいんでしょうか?」といって、一枚の表札の注文書を僕に差し出しました。ある英語をしゃべる外国人からだということでした。よくよく聞いてみると、ポールからの注文でした。

僕はその注文書を見て
「そんなやつ、おらんやろ!」と声を出して一人で突っ込んでしまいました。

表札のデザインは、漢字を浮き彫りにして、その漢字の読みをアルファベットで漢字の横に浮き彫りにするものでした。

ポールの注文は
漢字は「胡椒」
アルファベットは「pepper」でした。

注文書には、商品が店に到着したことを連絡するために、お客様のお名前と電話番号を書いていただきます。ポールの注文書の名前の欄には「pepper」、ましてや「胡椒」という文字は見当たりませんでした。

「奥さんにプレゼントするといってましたよ」と、女性スタッフから聞きました。

確かに「胡椒」は「pepper」です。

奥さんの名前が「胡椒」という名前だろうか?
これは、日本人、または外国人に通じるだろうか?
奥さんは、外国人から「ハーイ、ペッパー!」と呼ばれるのだろうか?
などと、いろいろな疑問が浮かんできました。


1週間ほどして、ポールが表札をとりに来ました。

僕は、そのときも出張をしていて、女性スタッフが対応しました。

ポールは大変満足をしていたとのことでした。



ポールのこの注文は、外国人独特のユーモアだったのかな、と思うとともに、ひょっとしたらポールは、ものすごい豪邸に住んでいて、とてつもない広い厨房を持っているのではないかと思いました。

「砂糖」に「sugar」、「唐辛子」に「red pepper」、「豚脂」に「lard」の注文を心待ちにしております。
posted by ロン at 21:35| 上海 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月11日

学術的分類

カギ屋を利用されるお客様を学術的に分類し、各々の対処方法を発表いたします(これは、あくまでも僕の対処方法です)。

僕の店にお越しになられるお客様を、僕は恐れ多くも3つに分類しております。

第一類は、目的を持って合鍵作製を依頼される方、表札、印鑑を作られる方です。毎日お越しになられる大切なお客様で、僕やスタッフの生活を支えてくれる「ビジネス系」の方々です。

第二類は、ビジネスの目的を持ってらっしゃらない方々ですが、僕やスタッフとのおしゃべりを楽しみにお越しになられる方々です。僕やスタッフにとっては精神的に元気をくれる「癒し系」の方々です。

第三類は、上記以外の方々です。どういう方々かというと、見えない敵と日々闘っていらっしゃる「妄想系」、及び、スプリンクラーや、扇風機などからの 謎の声 が受信できる「電波系」の方々です。カギ屋という商売柄、第三類の方々はよくお越しになられます。季節の変わり目に、お越しになられます。

お客様と僕の店の関係を学術的に説明すると、第一類ビジネス系と第二類癒し系の方々は、僕の店との相互依存により、双方が物質的利益、精神的利益を享受することとなり、良好な関係を恒久的に継続することを双方が望んでいると推測され、その実現のために双方の理性と人間性をもって、より強固な絆となることが期待されます。

第三類妄想系、電波系の方々は、僕の店に一方的な依存をすることで、第三類妄想系、電波系の方々のみに精神的利益が享受され、または、双方に精神的不利益がもたらされることとなり、良好な関係を構築することが極めて困難であります。
かいつまんで言えば、うっとうしいので僕の店には来ていただきたくありません。

第一類、第二類に関しての対処方法は、言うまでもなく、誠意を持って接客いたします。これらの方々を増やすことが、そのカギ屋の腕の見せ所であります。

第三類の対処方法は、
「妄想系」の方々については簡単です。この方々は、ほとんど同じことを相談してきます。おおよそ「どんなに防犯性の高いカギをつけても、すぐに入られる」「犯人は、わかっている」「警察も相手にしてくれない」といってすがってきます。対処方法として「犯人が判っているのなら、その犯人が捕まってから店にお越しください。それまではどんなカギをつけても無駄ですよ」と言いましょう。こんなやり取りを2,3回繰り返すと来なくなります。おそらく別のカギ屋さんに相談しに行かれるでしょう。

「電波系」の方々については、少し厄介です。何を言っているかわからない上に、頼んでもいないのに何度もお越しになられるからです。
商売人としては、少し心苦しいのですが、威厳をもって対処することをお勧めいたします。ほんの少し怒鳴り気味での接客を心がけましょう。


店が暇になると、こんなことを真剣に考えている僕は、「第三類」に分類されるのでしょうか?
posted by ロン at 22:47| 上海 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月18日

久しぶりにその方(Pさんとします)はお越しになられました。実に3ヶ月ぶりくらいでした。

お話によると、腸にポリープができて切除のために入院し、退院したのですが、すぐに又、大出血して命からがら救急車で運ばれて、再入院されたということです。

Pさんは、某有名製造メーカーのエンジニアだと言うことでした。僕もこの方にいろいろ教わりました。

「久しぶりにここに来たけど、まだ本調子とちゃうわ。まだ顔、白いやろ。ごっつい出血したから、輸血までしたんやで。会社が今週いっぱい休みをくれたからここに来てん。」

やっと病院から出てきた喜びのためか、いつもより饒舌でした。しゃべりたくてたまらない様子でした。

お客様はPさんしかいらっしゃらなかったので、大きな声でいろいろな世間話をしておりました。

ふとしたことから、健康の話になりました。Pさんにとっては先日まで入院していたので、かなり白熱した話し合いになりました。

僕も今年の春に血液検査をした際に、肝臓と腎臓に少し異常値が出ておりました。ところが、ある健康食品を食べ始めてから異常値がなくなり、お医者さんもかなり興奮して喜んでくれたという経験があります。そのことをPさんに話しました。Pさんは、この話にものすごく興味があるようだったので僕は嬉しくなって、機関銃のように喋り捲りました。

Pさんが僕の話に熱中している時でした。

1匹の虫が飛んできました。肌色の蛾のような虫でした。小豆のような大きさでした。

その虫はPさんの顔の周りを回ってました。Pさんは、僕の話に夢中で虫のことなど気付いておりませんでした。

僕は、その虫を目で追ってました。



その時でした。



虫は、Pさんの口の中へ入っていきました。そしてそのまま・・

・・呑みこんだようでした

Pさんは話に熱中して、僕の引きつった顔も、虫の味も感じていなかったでしょう。

僕は、口の中に虫が入ったことを言うべきか言わざるべきか迷いました。

結局、僕はいい子でいたかったので、そのままにして何も言わず話を続けました。



次の日もPさんはお越しになられました。

「やっぱり、体の調子があんまり良くないわ。本調子ちゃうわ」


Pさん、あなたは頑丈な体を持っています。
posted by ロン at 22:14| 上海 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月08日

イエス・キリスト

僕の一言が、思いもよらないことを引き起こしたことがあります。

今年の夏のことでした。
「お客さんの部屋のカギを換えてあげようと思うんですが、どんなカギがありますか?」と聞いてこられました。

その方は住宅のリフォームをされている方でした。誠実さが顔に滲み出ておりました。お客様の要望を低予算で仕上げてあげようとしておりました。その腰の低さ、物腰の柔らかさからやさしい人柄が感じられました。

僕の店には、カギを御自分で取換えをしようとされる方が多々相談に来られます。この方もお客様のために、自身で取換えをしようとされていました。

玄関の扉のカギに関しては、メーカー、錠前の形式、扉厚などを調べてきていただけたら、こちらで取換え用のシリンダーを特定し、取り換え方を説明して、めでたしめでたしとなりますが、室内錠となると、お客様の言葉だけで錠前の形式を特定することがかなり難しくなります。

僕は、その方に
「一度、そのカギを見れば取換え用の錠前が特定できるのですが・・」と申しあげました。

お客様は「そうですか・・」といって、少し肩を落とされてお帰りになられました。


3〜4日経ってから、その方がお越しになられました。

いきなり
「私について来てもらえますか」とおっしゃられました。

僕は
(この間の説明が気にいらなかったのだろうか?連れ出されて殴られるのかな?やさしそうな顔をされてるのに・・)などと、1人で起承転結を想像しておりました。

想像を膨らませながら、その方のあとをついていくと
「これを見てください」といって、その方は車(バン)のドアを開けました。

一枚の扉が入っておりました。

この方は、僕にカギを見せるために扉をそのままお持ちになられたのです。

おそらくカギに関しては、知識がなかったので、取り外しをせずにそのまま扉を持って来られたのでしょう。不器用なところに、あらためてこの方の人柄を感じました。

僕は、その扉についているカギが僕の店にあるかどうかを調べるために、店までその扉を運びました。そのカギは室内錠にしては珍しく、棒鍵のケース錠で、すでに廃番になっているものでした。相当古いものでした。

何故か僕のコレクションの中にそのカギの新品がありました。今となってはかなり貴重なもので、僕はもしこの方が、欲しいとおっしゃられたらどうしようと思っておりました。

その方は
「別にこのカギを新しくしようとするつもりはありません。古いので、新しくて使いやすくて見栄えのいいものを安く付けたいのですが」とおっしゃられました。ホッとしました。

結局、このカギのサイズにぴったり、または似たようなものは無く、他の型のカギを取り付ける手間を考えると、現状のままにすることになりました。ただ、相当に古いカギだったので、ノブの根元についているパッキンが擦り切れて無くなってガタツキがありましたので、少し調整をさせていただきました。

その方は
「ありがとうございました」といって、その扉を背負って車に戻っていかれました。


僕は人間のちょっとした一言によって、思いがけないことを引き起こすことがあるんだなと、少し「罪」の意識を感じていました。

その方の扉を背負った後姿は、十字架にはりつけられたイエス・キリストのように見えました。

その方は扉に加えて、僕の「罪」をも背負ってくださったのかも知れません。

・・アーメン・・
posted by ロン at 22:49| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月30日

連鎖

ある中年夫婦でした。

この御主人は、以前に僕の店で合鍵を作ってくれた方でした。

「カギがない南京錠は、どないしたら開きますやろか?」という質問でした。

前に合鍵を作った時には、かなり値切られました。できるだけお金がかからないようにということだと思ったので、僕がその現場まで出張して解錠をすることは考えませんでした。

この方は、これまでにも僕の店の前を通られる時には必ず挨拶をしてくださいますし、労いの言葉をかけてくださいます。この方の人柄を信じて、僕は南京錠の つる 程度なら切断ができるボルトクリッパー(金属線を切断する工具)をお貸しいたしました。

一週間ほどして、その御夫婦がお越しになられ
「ありがとうございました。おかげさまで助かりました」といってボルトクリッパーを返してくれました。

僕は、その後主人にどこの南京錠をなぜ破壊したのかをお聞きしました。

この方は見かけによらずビルのオーナーでした。

ビルの部屋を事務所としてある人物に貸していたところ、家賃が滞りはじめたので、その人物に連絡を取ろうとしましたが連絡が取れないとのことで、その事務所に行くと、もぬけの空でした。

ここまでならよくある話なのですが、そのビルの集合ポストに頑丈な南京錠がかかっていたままになっていました。その南京錠を破壊するために僕に相談してきたとのことでした。

その御主人は
「おそらく、振り込め詐欺か、なにか違法なものを販売していてその代金の郵送先やったかも知れへん。実際、事務所はこのポストのためだけに借りたかもしれへんな」とおっしゃられておりました。


次の日のことでした。

僕の知り合いのある女性が
「南京錠を開ける方法ない?」と、言ってきました。

理由を聞くと
「2,3日前から、私のところのポストだけに、何でか知れへんねんけど南京錠がかけられてんねん。私のところ、普通の市営の公団やねんけど」と言うことでした。

状況がわかってしまったので、前の方のように軽々とボルトクリッパーを貸すことはできませんでした。その南京錠を勝手に破壊してしまうことは、法的に正当かどうかがわからなかったので
「警察に相談して、破壊してもいいと言ったらこれ(ボルトクリッパー)貸してやるわ。警察に立会いしてもらって破壊したらええねん」と提言しました。

実際は、他人の所有物であるポストに、勝手に南京錠をかける恥知らずな人間には容赦ない罰を与えればいい、と思っていました。最近のニュースを見ていると、他人の迷惑を考えない人間が増えているようです。こんなニュースを見るたびに、僕は「アホとちゃうか!」「こんなやつ、おれが総理大臣やったら死刑じゃ!」とわけのわからない独り言をテレビに向かってつっこんでおります。時々、父ものってくれます。

数日して、その女性がきて
「一応、警察に聞いたら壊してもええと言ってくれたけど、ポストをガムテープで頑丈に目張りして中の郵便物をとられへんようにしたら、次の日には南京錠はなくなっとったわ」といいました。

犯罪とまではいえないかも知れませんが、奇妙なことは連鎖します。


今になって思うのですが、この女性が南京錠をもう一個ポストにつけたら、犯人にストレスを与えることができた上で、問題解決ができたかも知れません。

ただし、もし犯人が カギ屋 だったら、犯人の思うつぼだったでしょう。
posted by ロン at 21:31| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(1) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月18日

シュールな御夫婦

僕の店は、カギに関する業務のほかに、表札、印鑑などの販売もしております。

にぎやかな御夫婦でした。

「表札を買いたいんですが」

僕は「どんな感じのものがよろしいですか?」と尋ねました。

御夫婦は僕の店に飾っている、あるサンプルを指差して
「こんなやつがいいです」とおっしゃられました。

最近よく売れ始めている、わざと古めかしさを醸し出したセラミックの表札でした。

僕は

「いやー、御目が高い。この表札は最近・・」と営業口調で御夫婦にいろいろ説明をいたしました。

御夫婦は、僕の説明が終わる前に

「これにします」とおっしゃられました。

僕が注文書に必要事項を書いてると

「あのー、彫った部分に色を塗らないでいただけますか」とおっしゃられました。

石材やタイル(セラミック)や木の表札は、名字や名前を彫った部分に墨(塗料)を塗ります。彫っただけでは文字の部分が凹になるだけで何が彫ってあるかわからないからです。

おそらくメーカーも技術的には、たやすいことですが、念のためにメーカーに聞いてみました。

メーカーは

「問題なくできますが、何が書いてあるかわからなくなりますよ」とのこと、僕の思ったとおりのこたえが返ってきました。

僕は、問題なくできますが、何が書いてあるかわからなくなること、その上でノークレームなら注文をお受けする旨を伝えました。御夫婦は考えることも無く
「ではお願いします」と注文されました。しかもフォントはメーカーが用意しているものの中で肉幅の細いドラゴン体というフォントにされました。


一週間ほどして、モノが届きました。

確認のために箱から取り出して拝見しました。
2m離れて見たら、何も書いていないただのタイルにしか見えません。

僕なら卓袱台をひっくり返して
「こんなもんいらんわっ!」というようなものでした。

御夫婦に「届きました」の電話をしました。御夫婦はすぐにお越しになられました。

僕は万が一の場合の言い訳を考えながら、恐る恐るモノを御夫婦にお渡ししました。もしカウンターをひっくり返されたらどうしよう、キャンセルされたらどうしよう・・

「これはええもんができたわ!こりゃええ!」と御主人が口を開き、今までの緊張がとけました。

御夫婦ともにかなり満足されたようでした。

僕は

「失礼ですけど、この表札で本当にいいんですか?少し遠くから見たらなに書いてあるかわかりませんよ」と言ってしまいました。

「なに書いてあるかわからんほうがええねん。こらええわ」とモノを見つめながら本当に満足していました。何が「こらええわ」なのか僕には理解できませんでした。

一般的には、表札は家の顔ですので、かっこよく、目立つほうがよろしいと思うのですが、全く逆を突っ走るこの御夫婦のシュールなセンスを見習おうとしている僕がいました。
posted by ロン at 19:48| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月16日

『どこ』の鍵?

全てではありませんが、カギ屋を続けているとお客様がお持ちになられたキーを見ると、そのキーが『どこ』で使われているかがわかるようになります。

例えば、このキーは35年から40年前に建てられた公団のカギ、特定の車にしか使われないカギ、おおよそ勝手口にしか使われないカギなど、大まかにわかるようになります。

ある日のことでした。

中年の女性でした。

たくさんの種類のキーの合鍵を作ろうと僕の店にお越しになられたようでした。

鍵の束を持ち出され
「一本ずつ合鍵を作ってください」とおっしゃられました。約十本ありました。

その方のお持ちになられている鍵の一式だったと思います。車、ロッカー、玄関、勝手口など比較的わかりやすい鍵ばかりでした。

二十分ぐらいして、その方が戻ってこられました。僕はとっくに作り終えておりましたので、あとはレジを打つだけでした。

お渡しする時に、僕は少し「知識」をひけらかしたくなりました。

「こちらは、親指で押すタイプの玄関の鍵(サムラッチといいます)ですね。こちらは勝手口の鍵ですね。こちらは・・」と少しすましたように申し上げました。

お客様は
「すごーい!見ただけでわかるんですね!」

思うつぼでした。僕は、あまり人からほめられることが無いので、この方の言葉を聞いて、ドーパミンが放出されたようでした。

「ある程度、お持ちになられたキーは『どこ』でお使いになられるカギかわかりますよ」と、僕は脳内モルヒネ全開のスネ夫のように得意げにしゃべってました。



その時でした。

お客様の後ろに並んでいらっしゃった一人の中年の男性が、差し出そうとしていたキーを見ながら、すばやくそのキーをポケットに戻しました。そして僕を睨みながら、すばやく立ち去っていきました。怯えたような、又、見方によっては怒りに満ちたようでした。



カギ屋をしていると、いろいろな方と出会います。

おそらくこの方は被害妄想だったのだと思います。

僕が言い当てる『どこ』とは、家の玄関であるとか、ロッカーとか鍵が使われている部分ですが、この方は、僕がいう『どこ』とは、家の場所を特定することだと思われたようです。この方が、僕にキーを見せずに立ち去ったということは、つまり僕がこの方の家を特定してよからぬことをすると思っていたのでしょうか。

おそらくこの方は、二度と僕の店にお越しになられないどころか、カギ屋さんで合鍵を作ることができなくなったと思います。

僕は、悪いことをいったでしょうか?
posted by ロン at 23:29| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

金庫の中身

それは、腰が直角くらいに曲がったおばあちゃんでした。年は90歳前後でした。

「あのー、金庫を開けて欲しいんやけど、開けれまっか?」

理由をお聞きすると、中に大事なものが入っているが番号をあわせても開かない、キーはあるが、とのこと。おばあちゃんは、車の運転ができないので、僕の店にはわざわざタクシーでお越しになられたとの事でした。

僕は、僕の車に乗せておばあちゃんの家まで向かいました。

おばあちゃんは
「息子の嫁の意地が悪くて、悪戯ばかりして私を困らせんねん。この金庫もダイヤルを嫁が変えたんじゃ」と、息子さんの奥さんの悪口をずっと言っておりました。あまり深入りすると僕の頭が混乱すると思ったので、上の空で聞いておりました。言うまでもありませんが、ダイヤルを変えるなどということはほとんどできません。

何故か、お年を召された女性は息子の嫁の悪口を言うものです。このおばあちゃん以外にも、そのように悪口を言う女性には、僕は何人か遭遇しております。

おばあちゃんの悪口が最高潮に達した時に、おばあちゃんの家に到着いたしました。おばあちゃんの家の扉には、防犯性の高いスイス製のシリンダーがついておりました。おそらく頻繁にカギ屋さんにお世話になっていたと思われます。

僕は、息子の嫁がダイヤルを変えたという金庫を見ました。

テンキー式の金庫でした。

「大事なものが入ってるねん。開けること出来まっか?ほんまにあの嫁は意地が悪いねん、なんであんなに意地が悪いんやろ?」と、金庫を前にしても悪口を言っておりました。

僕は、この手の金庫の解錠はしたことがありませんでした。幸いにも僕の知り合いのカギ屋さんが、以前にこの金庫を解錠した事をおばあちゃんが言っていたので、そのカギ屋さんから番号を聞くことができました。本当に幸いでした(今考えてみると、おばあちゃんは金庫開けを、少なくとも僕以外にも依頼していたのですね)。

金庫の中に入っているものは、お客様のものですので、カギ屋の仕事は扉を開けるまでです。もちろんカギ屋は依頼人立会いの下で解錠をします。

キーを挿して、番号を押しました。

「ピー」と言う音がして、キーが軽く回りました。

金庫の扉が開きました。

本来なら僕の仕事はここまでですが、
「中のもん、とってくれまへんか?」との事なので、おばあちゃん立会いの下に、金庫の中に手を伸ばし、中のものを取り出しました。

中に入っていたものは・・

・・饅頭でした。

僕が今までにした仕事で、最高のギャグでした。

僕は、二度と金庫の解錠では僕を呼ばないということを条件に、お金はいただかずに店に戻りました。釘を刺しておかないと、何度も呼ばれると思いました。


おばあちゃんの「快進撃」は、これだけにとどまりませんでした。

数週間が経ったある日、見覚えのある腰が直角くらいに曲がったお