2007年09月20日

1億円

つい最近、忘れられない方とお会いしました。その方は、僕がホームセンターに勤めているときに、大変迷惑をかけた方でした。

僕が声をかけました。
「あの、Nさんですか?」

「そうやけど兄ちゃん、なんでワシの事知っとん?」

すっかり僕のことを忘れられているようでした。

「○○というホームセンターの○○店に、写真の現像を出された事がありますよね。その時はご迷惑をおかけしました」

「ああっ、あのときの兄ちゃんかぁ!」

思い出していただけました。


あの出来事は、僕にとって、そしてNさんにとって忘れられない出来事でした。


僕がホームセンターで働いていたとき、その店では写真の現像、DPEをしておりました。正社員だった僕は、2人の女性パートさんを使う立場でした。

休日、祭日など忙しい日は2人で、平日は1人で写真の現像をしておりました。僕と2人のパートさん以外には、写真の現像をできる社員、パートさんはいませんでした。


僕の休みの日でした。


僕の携帯に店から電話がかかってきました。なにやらただならぬ様子でした。

「えらいことがおこりました。Sさん(写真の現像ができるパートさんの一人です)がお客様の写真をダメにしてしまいました」僕と仲の良かった社員からの電話でした。


次の日、店に行くと店長が
「あの写真、えらい高くつくかも知れへんで。お客さんが言うにはあの写真が無かったら、1億円ぐらい損するかも知れへん言うとったで」


僕は意味がわかりませんでした。


その日の昼過ぎに、その方(Nさん)が来られました。

「あんた(僕のことです)が責任者か?えらいことしてくれたな・・」Nさんは笑いながら言っていましたが、明らかに動揺していました。

僕と店長は事務所で、その方のお話を聞きました。

「実は、あれは補助金の申請書類につける証拠写真やねん。今回、ある公立の美術館の施工をさせてもらったんやけど、今回の工法は日本で初めて我が社がやらしてもらってん。その工法を説明するために写真をとったんやけど、この写真が無かったら補助金が出ないねん。補助金が約1億円やねん。どないしてくれるんか説明してほしい」

僕と店長は、言葉も出ませんでした。僕はともかく、これだけの額は店長レベルで決断できるわけもありませんでした。

このことに関しては、結局本部で対処することになりました。


このことで、パートのSさんは即日店を辞め、写真の現像の業務は廃止となりました。

もともと僕は、写真の現像以外に部門の担当を持っており、かつそのグループ長でした。写真の現像などは、部門を持っているものが、片手間でできるような業務ではありませんでした(僕が片手間で写真の現像などできるものではない、と店長に提言をした直後にこの事件が起こりました)。店長は学生アルバイトからも<会社の犬>と呼ばれているような、稀に見るイエスマンでした。僕はグループ長の立場を外され、サービスカウンター専任の社員となりました(僕はチーフという管理職でもありました)。



僕は、このことが引き金となってこのホームセンターを辞めました。そして独立して カギ屋 になりました。



久しぶりにお会いしたNさんは
「あの時は、えらい迷惑かけたなぁ。でも、こっちも土壇場やったからしょうがなかってん」と、その時も僕に気を使って下さっていました。このときに初めて知りましたが、Nさんが撮影した予備の写真をつなぎ合わせて、申請して補助金はなんとかもらえたようでした。
Nさんもあの事件が引き金になったかどうかはわかりませんが、今は独立されて別の仕事に就いていらっしゃいます。


それからしばしば、Nさんは僕の店に来てくださいます。


一つの出来事が起こると、人間は似たような道を歩むのかな?と考えさせられた出来事、そして出会いでした。
posted by ロン at 21:32| 上海 ??| Comment(4) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月16日

虎の威を借る狐3

これは、僕が今までに見た中で一番醜かった出来事です。

今年の4月頃の頃でした。僕はカギや、表札の代金の支払いをするために郵便局(今では郵政公社というのでしょうか)と銀行に行っておりました。

郵便局の前に来たときでした。

親子連れでしょうか、車椅子に乗ったお婆ちゃんを一人の女性が後から押しておりました。おそらく母と子だと思いました。

その女性は、車椅子に乗っているお婆ちゃんに大きな声で何か言っているようでした。僕は聞くつもりではなかったのですが、あまりにも大きな声だったことと、その内容がお婆ちゃんの身体的欠陥をつきながら罵声を浴びせるような事だったので、ひどい印象を持ちました。

そのときでした。

ある女性が、自転車ついて郵便局に近づいてきました。

ちょうどその親子連れの後ろを通ろうとしていたところでした。

郵便局に前は、急な坂になっていましたので、車椅子を押すにはかなり苦しいものでした。

僕が見ているところから、ちょうどその女性と親子連れが重なったときに、親子連れが後ずさりしました。自転車のペダル部分にその車椅子を押している女性のくるぶしが当たったようでした。

一瞬の出来事でした。

「もう!何処見てるのよ!!気をつけなさいよ!!」

どう見ても、車椅子を押している女性が後方を確認せずに後ずさりをしていました。それでも自分が被害者のような言い方で、自転車をついている女性に罵声を浴びせました。その顔は憎しみを凝縮して、この世のものとは思えないくらい醜いものでした。


郵便局での振込みを済ませた後、少し時間がたって僕は銀行で振込みをしようとしていました。偶然にその親子も銀行のATMで何かをしているところに出くわしました。

この車椅子を押している女性が、この車椅子に乗っている女性に罵声を浴びせていました。その内容はあまりにも えぐい ことなので割愛させていただきます。


僕はこの光景をみて、人間の最も醜いところを見たと思いました。

この車椅子を押していた女性は、車椅子に乗っている女性をダシに好き放題していました。

人間が否定できない大義名分を振りかざして、我を通そうとしているのです。否定できない大義名分とはいろいろありますが、この場合は<弱者をいたわる>ということでしょう。

「弱者をいたわる良心のある人間」を装い、自分は何をしても良いと思っているのでしょうか?自分は弱者をいたわっている「聖者」だと思っているのでしょうか?

本当に心の底から<弱者をいたわる>のなら、どうして弱者に罵声を浴びせたりするのでしょう?


このような、人間の良心を逆手にとって好き放題のことをしようとする人間がいる限り、人間の心を操る人間がいる限り、

公金横領と不正受給はなくならないでしょう。
posted by ロン at 21:13| 上海 | Comment(4) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする