2007年07月22日

昇華

僕はカギ屋になって1つの こだわり ができました。

カギ屋という職業柄でしょうか、生活に関わる 物 事 については、その筋の職人さんに頼むようになりました。

その1つに、僕は特定の散髪屋さんに通うようになりました。

その方は評判がよく、店にはたくさんのトロフィーが飾られておりました。遠方からもたくさんのお客様がその店に通っておりました。又、調髪の技術のレベルの高さのみならず、その人柄からでしょうか、これほど気持ちの良い接客をされる散髪屋さんを、僕は見たことがありません。いつその散髪屋さんを覗いても、必ずお客様が待っています。


その店に通い始めて3回目のときでした。

いつものように何気ない会話をしておりました。いつものように気持ちの良い接客でした。

耳の上にはさみをいれはじめた時でした。会話が急に止まりました。

少し顔をかしげながら

「あなた、痩せた?」と僕に聞いてきました。

確かにその当時、僕はダイエットをしてました。前回の散髪をした時より2〜3kgほど痩せていました。

「今、ダイエットしてますんで2〜3kgほど痩せましたが。どうしてそんなことが分かるんですか?」と聞き返しました。


「毛の生える方向が若干変わってる。頭の肉がとれたんやろな」


僕はこの店を利用させてもらって3回目です。何度も来ている常連ではありません。もちろん前回の太っていたときの顔など覚えていなかったでしょう。

散髪屋さんは前回の僕の毛の生え方をきちんと覚えていてくれたのです。毛の生え方によって、おそらくハサミのいれかたをかえていたのでしょう。

僕は 感動 を覚えました。この人は本当の職人だと思いました。こんなにすごい人に調髪をしてもらっていることに 誇り さえ感じていました。

調髪が終わり、顔剃りがはじまりました。

座椅子が平らになり、僕は仰向けになりました。顔をそられながら僕は職人の 眼 を見ておりました。

力を込めてカミソリで口の周りのひげを剃っているときの 眼 は、剃っていくほどに険しくなっていきました。職人さんはカミソリの一剃り一剃りに全身全霊の力を込めているんだ、とあらためて感動しておりました。


顔剃りが終わり、座椅子の背もたれが動き始めました。

僕は自分がどんなに いい男 になっているか、鏡を見るのが楽しみでした。

背もたれの動きが止まり、僕の顔が鏡に映りました。

・・・職人の 眼 が険しくなっていった理由が理解できました。

僕の口の周りから 血 が噴出していました。

感動が、話のネタに 昇華 された瞬間でした。
posted by ロン at 21:40| 上海 ??| Comment(7) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月15日

カギ屋になる決心をした日

僕が1つ目の会社を辞めて無職の頃の事です。もう何年も前のことです。

その頃はだらだらと時間だけが過ぎていく日々を送っておりました。仕事の無い焦りと失望を抱えながら、毎日、車に乗ってあても無いドライブで時間をつぶす毎日でした。

ある日のことでした。

高校の時の友達(S君とします)から
「倉庫に作品があるんやけど運ぶの手伝ってくれへんか?」との電話がありました。

S君は家から少し離れたところに倉庫を借りていて、そこに彼の作品を預けていました。それを別の場所に移動するために車と人手が要るということでした。

何もすることの無かった僕は、車を走らせました。S君を車に乗せて倉庫に向かいました。

倉庫に着きました。

S君は倉庫の扉を開けるためにキーを取り出しました。しかしその扉に合うキーがありませんでした。おそらく紛失したようでした。

倉庫の持ち主に予備のキーがないか聞きましたが、持っていませんでした。

どうしてもその中の作品をその日に出さなくてはならないので、その扉を開けるために カギ屋 を呼ぶことになりました。

僕たちが倉庫に着いたのは、ちょうど昼時でした。僕はS君と昼食を食べることにして、その時間を利用してカギ屋さんに扉を開けてもらうようにしました。

昼食が終わって倉庫に着くと、カギ屋さんはとっくにカギを開けて新しいカギを取り付け、正常に機能するかのテストをしておりました。


僕は常々、カギは「キー以外では開かないもの」と思っており、キー以外でカギを開けることは、高度な技術、特殊技術が必要だと思っておりました。そのとき僕は、そのカギ屋さんが特殊技能を持つ 神様 に見えました。

それから僕はずっと、その光景を事あるごとに思い出しては、カギ屋に対する あこがれ を抱き続け、その想いは日増しに強くなっていきました。

ひょんな偶然から 神様 を見た日でしたが、この日が、僕がカギ屋になる決心をした日でした。



それから何年も経ち、僕は念願のカギ屋になり店を持つことができました。


先日、久しぶりにS君から
「倉庫に作品が・・?」の電話がありました。

前の店を辞め、独立をして新たに店を構えて1ヶ月も経っていませんでした。売り上げもあまり芳しくなく、焦っているところでした。

僕は時間どおりに店を閉めて、S君を車に乗せて倉庫に向かいました。

日頃のことをおしゃべりしながら作品を運び出しました。僕は自分の仕事のことを話しました。

「そういえば、この倉庫でカギ屋さんを見て、お前(僕のことです)カギ屋になろうと決心したんやったな」

心の底に封印されかけていた 情熱 が解き放たれた瞬間でした。
(僕はS君に、あの時がカギ屋になろうと決心したことを話したことさえ忘れていました)

新しく店を出して間もない僕の、焦り、不安な心を察してくれたのか、忘れかけていた純粋な あこがれ の気持ちを思い出させてくれた一言でした。

S君のこの一言で、僕はもう一度初心に帰ることができました。この日は、僕がもう一度カギ屋になる決心をした日でした。


僕はこの倉庫で、時を経て2人の 神様 に出会いました。


:ちなみにS君は日本のみならず、海外で活躍している海外在住のアーチスト(芸術家)です。
先日は日本での展覧会のため、少し日本に立ち寄って、またすぐに日本を離れて行きました。

新しく店をオープンしてのこのタイミングにS君と再会できたのも 神様 の力でしょうか?
posted by ロン at 20:17| 上海 ????| Comment(3) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月14日

あこがれ

合鍵を作っていてうれしいことが2つあります。

1つは、僕が作ったカギが用を成したことを、わざわざ、又は、近くに寄られたついでに「ありがとう。合鍵回ったで」といいに来て下さることです。

もう一つは、僕が合鍵を作る時に、小さな子供がみて、興味を示してくれることです。

僕も小さな時は、ものが出来上がる工程にものすごく興味がありました。おそらく僕が合鍵を作っているところを見ている子供は、僕が幼いころに抱いた気持ちと同じ気持ちを持っているのでしょう。

手打ちうどんの実演やポン菓子、綿菓子など、ものができる工程を見ながら、それらを作っている人たちを僕は、すごいなぁ と思いながらよく最後まで見ていたものでした。特に合鍵を作る人に対しては、「この人はすごい技術を持っているんだろうなぁ」と思いながら見ていました。僕にとって カギ屋 はあこがれの職業でした。


僕はカギ屋になりましたが、カギ屋になった今でも僕は あこがれ の気持ちを絶えず持っています。カギに限らず僕自身が持っていない技術や能力を持っている人には、老若男女問わずあこがれの気持ちを抱きます。


今、僕は ある人 にあこがれの気持ちを抱いています。

その人には特別な能力と技術があります。僕には無い卓越した能力と技術を持っております。

テレビに出ているあこがれのその人を見ていると、僕は胸が高鳴ります。その人の技術、能力をじっと見るたびに、あこがれが強すぎるせいか、鳥肌がたち気持ちが悪くなるほどです。

その人とは

ギャル曽根さん

です。
posted by ロン at 20:32| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(1) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月02日

ささやかな願い

一昨年のクリスマス近くのことでした。

僕は、彼女を食事に誘おうと思い、店を探していました。大げさなことを言うわけではありませんが、僕もカギ屋、商売人としていろいろな店(同業種、他業種)を回って、接客の応対を見ます。彼女との食事ではありますが、仕事だと思っております(このようなことを友達に言うと 言い訳すな!とたしなめられます)。

僕は未だに電話をかけるのが苦手なので、これは と思う店に直接予約を取りに行きます。

以前に行ったことのあるイタリア料理の店に予約を取りに行ったときの事でした。

「あの、この土曜日に2人、7時に予約したいのですが」

この店は、駅のすぐそばにあるビルの高層階にあるカジュアルな店でした。美味しく、雰囲気がとてもよい店でした。

「少々お待ちください」といって、カウンターにいた女性が一枚の紙を取り出しました。

その紙を見ながら、その女性はこういいました
「土曜日は、予約でほぼ満席です。お客様を予約で入れてしまいますと、その日に来られるお客様の席が無くなってしまいます。当日にお越しいただいて、そのときに席が空いておりましたらご利用ください」

僕は、耳を疑いました。

「ここは、、あらかじめ予約しにここまで来た人より、その日にきた人を優先するんですか?」と僕は聞きました。

何か困ったような顔をしていましたが、その店のオーナーと思われる女性も来て
「申し訳ございません。うちはそうさせていただいておりますので」と作ったような困った顔をして言いました。

おそらく、何が問題なのか、僕の質問の意味さえこのオーナーはわかっていないようでした。

僕は、この店での食事はしないことにしました。

そしてこの店に対して

ささやかな願い

を心の中でしました。



今日、ある用事でこのビルの前を通りました。
「そういえばあんなことがあったなぁ」 と懐かしいような気持ちでその店のあった高層階に目をやりました。

すると・・

・・店がありませんでした。


家も店も心も狭いカギ屋の

ささやかな願い

が、叶ってしまいました・・
posted by ロン at 22:55| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする