2007年02月25日

勘違い

合鍵のトラブルで、一番お客様にご迷惑をかけることは、こちらが作製した合鍵が回らない、ささらないことではなく、抜けなくなることです。僕の店で作った合鍵が、今までに一度だけ抜けなくなったことがありました。

ある夏の日でした。

いつものように店での仕事を一生懸命に励んでおりました。

一段落ついたころでした。午後6時ころでした。

一本の電話がありました。

「お宅で作った合鍵が抜けなくなったんですが」との電話でした。初めてのことでした。

お客様から、僕の店で作った合鍵に刻印されている、ブランクキーの番号を聞きました。ロータリーディスクシリンダーのキーでした(一般的なU9ではありませんでした)。

おそらく、一軒家のプッシュプルドアだろうと思いました。

僕は、すぐにお客様の家に向かいました。

家に到着しました。僕の店で作ったであろう合鍵がささったままになっていました。予想通りのプッシュプルドアの予想通りのシリンダーでした。

「おたくで三本合鍵を作ったんですが、カギは回るんですけど抜けないんです」

刺さったカギを僕はすぐに抜こうとしましたが、抜けませんでした。どうやっても抜けませんでした。

僕はとりあえず、持ってきた取替え用のシリンダーをお見せしてすぐに取り替えました。お客様のドアには二個のシリンダーがついておりましたが、同一組みではありませんでした。カギが刺さったままのシリンダーの方を取り替えました。

僕が取り替えたシリンダーを見て、「色が少し違うわねぇ」とそのおば様はおっしゃられました。確かに抜けなくなった鍵(シリンダー)も、僕が取り替えた鍵も金色でしたが、少し艶が違いました。もともとついていたシリンダーの色は、あるハウスメーカーのオリジナルの色でした。僕は自分がつけたシリンダーでご勘弁願おうと思いましたが、どうしてもお気にいらないときは、お電話くださいとのことで、その日は帰らせていただきました。

次の日でした。

「どうしても、もう一方のカギと同色にしたいのですが」とのことでした。

僕は
「ハウスメーカーと取引はありませんので、ハウスメーカーにお尋ねください。かかった費用は僕がお支払いします」といって電話を切りました。

数日後、予想通り電話がかかってきました。鍵を取り替えたとのことでした。

その数日後、そのおば様がお越しになられました。ハウスメーカーからの請求書をお持ちになられてました。僕は現金でその金額をお支払いしました。思ったよりもかなり安価でした。僕としては、かなり屈辱的なことでした。

またその数日後、またそのおば様がお越しになられました。
「これ」といって、僕の店できった作製したキーを二本お持ちになられました。

僕は、お客様が律義に合鍵を返しに来られたと思い
「わざわざお越しになられなくても、処分していただいてよかったですのに。ありがとうございます」と頭を下げました。

「何を言っているの?これを返品しに来たんです!」

僕は、この自分のめでたい頭を、一生共にしていくのでしょう。
posted by ロン at 21:52| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月24日

大失敗 その2

うららかな春の日でした。店は、ありがたいことに忙しく、スタッフ二人と僕とで、仕事をさばいておりました。

夕方、合鍵の仕事が同時に何件も入りました。僕の店には、キーマシンが5台あるので、スタッフと手分けして合鍵作りをしておりました。

ひと段落ついて、ほっ、と一息ついている時でした。

合鍵作製と、時計の電池交換が同時にきました。僕が合鍵をうけたまわったのですが、電池交換が難しそうだったので僕が電池交換をすることになり、スタッフに合鍵作製を任せることにしました。ピンシリンダーの単純なキー2本を、1本ずつ、合計2本の合鍵を作製するというものでした。

僕が時計の蓋を閉め終わって、カウンターに戻ろうとしたときでした。

「あのー、オーナー・・」と、スタッフの声がしました。いやな予感がしました。

「やってしまいました。元キーを削ってしまいました」と追い討ちの声が僕の頭を貫きました。スタッフの本当にすまなそうな顔がたまりませんでした。

スタッフは、うけたまわった2本のキーの1本をガイド側(元キーを挟む所)に挟み、1本をカッター側(ブランクキーを挟む所)に挟んで、カッター側に挟んだ元キーを2ピン目まで削ってしまったのです。

僕は、お引取りに来られたお客様に正直にこのことを伝えました。

お客様は
「あら、困ったわねぇ。どうしましょ?」僕は、シリンダーの交換を約束しました。大変なことなのに、あまり焦っている様子ではありませんでした。僕だけが焦っていました。スタッフは引きつった笑いをしていました。

先ず、お客様の扉をあけなければなりません。僕はお客様の家まで僕の車でお客様と一緒に伺う旨を言いました。

お客様は
「それなら、私の車で行きましょう」とのことだったので、お言葉に甘えて車まで行きました。

お客様の車はベンツでした。思わぬことでベンツに乗る機会を得てしまいました。僕は、解錠工具一式を持ってベンツに乗せていただきました。

あるマンションに着きました。どう見てもベンツに乗られる方が住むようなマンションではありませんでした。

「私のマンションなの。今度、住人が入れ替わるから合鍵を作ろうとしてたところなの」

この方は、マンションの大家さんでした。

とにかく、僕は早速、解錠にかかりました。

この錠前はかなり古く、おまけになかなかお目にかかれない錠前でした。僕はこの錠前、シリンダーの替えを持ち合わせていませんでした。破錠してしまうと後で厄介なので、ピッキングで開けざるを得ませんでした。

ピッキングをはじめてから5分が経ちました。なかなか開きませんでした。

「あなた、腕が悪いわねぇ」という言葉が聞こえてきました。

空耳かな?と思いながら、後ろでピッキングを見られているお客様の顔を見ました。

「腕、悪いんじゃないの?」とはっきり、僕の顔を見ておぬかしになられました。

ほんの少し、どつきたいなぁという衝動に駆られましたが、僕の店でやらかした失敗から、お客様の貴重な時間をいただいているので何ともできませんでした。

「時間がもったいないから、鍵を預けている業者に行きましょう」との言葉で、ある不動産業者まで行きました。車の中では
「あなた、部屋を借りてくれない?リフォームはこれから全室するからきれいになるわよ」と、言葉を巧みに変えながら僕を商売の餌食にしておりました。

結局、その不動産業者から鍵を借りて、合鍵を数本作ってお渡ししました。

その方は、それからも何回かお越しになられ、仲良しになりました。

心の広い方でした。
posted by ロン at 20:47| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月21日

大失敗 その1

僕の店で、しでかした大失敗を紹介いたします。

僕の店のシステムは、番号札お客様にお渡しいたします。例えば1番の番号札をお客様にお渡しして、うけたまわった仕事の対象物(合鍵など)に1番の番号札をつけ、出来上がったものをお客様にお渡しするときに番号札を照合して確認いたします。

ある春の日でした。日曜日でした。

僕の店は結構忙しく、スタッフと一緒に大忙しで仕事をしておりました。

その日は特に忙しく、休む暇もありませんでした。

特に合鍵が多く、一度に何本も合鍵の作製をうけたまわっておりました。

一段落着いて、合鍵がそろそろなくなったときでした。

お客様が合鍵を引き取りに来られました。

スタッフがレジ応対をしました。ディスクシリンダーでした。
「2本でしたよね」とお客様にお尋ねしたところ
「1本ですよ」との返答でした。スタッフは一本を残してお客様に元カギと合鍵をお渡ししました。

5分後くらいに、別のお客様が合鍵を引き取りに来られました。

僕が対応をいたしました。ディスクシリンダーでした。
「1本でしたよね」と問いかけると
「2本やで」との答えでした。


何か厭な予感がしました。

僕は、番号札を確かめました。お客様がお持ちになられた番号札と元キーにつけていた番号は一緒ではありませんでした。

カギの渡し間違いをしでかしてしまいました。

お客様に正直に説明いたしました。お客様は怒り狂ってしまいました。
「どないしてくれんねん!!」

「今からお客様の家に伺って、カギを開けさせていただいて新しいカギを取り付けます」とお伝えしても、お客様は
「うぉらー! うぉらー!!」と怒り狂っており、僕の言葉など聞いてくれません。

僕は、スタッフに「このお客様の前のお客様を探しに行ってきてくれ」というと、そのスタッフは飛んで探しに出かけました。

しばらくの間
「うぉらー!うぉらー!!」は続きました。

スタッフが諦めて帰ってきて、僕が「うぉらー!」を聞き飽きたときでした。

はじめにカギを渡し間違いをしたお客様が、偶然戻ってこられました。スタッフは事情を話し、納得していただいてカギを受け取り、「うぉらー!」のカギと交換いたしました。

「うぉらー!」は憮然としてカギを持って帰られました。

カギの渡し間違いは、決してやってはいけないことです。お客様が家に帰られて、シリンダーにカギを突き刺して初めてカギが違うことに気づくのです。お客様が店にお越しになられても、別のお客様に元キーを渡してしまっているので、元キーもお渡しできません。とにかくこれは絶対にしてはいけないミスです。


カギを渡し終えた後、スタッフはものすごくすまなそうな顔をして
「すみません」を僕に繰り返していました。


その日は店が終わったあと、スタッフと一緒に食事をしました。

彼は僕の説教を聞きながら、もくもくとメシを食っていました。そして僕の家まで車で送らせました(僕は酒飲みなので)。

でも、お金を出したのは僕でした。
posted by ロン at 22:28| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月15日

場外乱闘

仕事を離れてまで、カギのことで追いかけられたことがあります。

初対面の時から、その方は昔からの友達みたいに気軽に話しかけてきました。友達ならばさわやかな会話だろうと思いますが、少し恐怖を感じました。ふくよかな女性でした。


ある日のことでした。僕が店が終わったらよく行くスーパーで、半額弁当をあさっていたときでした。どこかでお見かけしたふくよかな女性と目が合いました。

「わださん!あなた、わださんですよね?!」と、迫りよってきました。

僕は、わだ ではありません。

僕は
「僕は、わださん ではありませんよ」と言いました。

「そうですか、わださん ではないですか」といって、また後ろをむいて歩き出しました。

僕は、後姿を目で追っていました。

その女性が5 6歩進んだときでした。ものすごい勢いで振り返り

「あなたの名前を教えてください!」と迫ってきました。

僕は
「名前は個人情報なので、教えることはできません」とお断りいたしました。ものすごい恐怖におののきながら。

するとその女性は
「聞こえるの。私には聞こえるの。私の心の声が○○○のxxx号室にカギを取り付けなさいって。わださん に取り付けてもらいなさいって」彼女の心では、僕はまだ わださん でした。

○○○とは、このスーパーの近くの老人ホームでした。

「お断りいたします」といって、気の小さい僕は、半額の弁当さえ買わずに全速力で逃げ出しました。




その女性との場外乱闘はこれだけにはとどまりませんでした。

僕が、ある日少し早く家に帰る日でした。

家の近くで、悪寒を感じました。見覚えのある顔が迫ってきました。

ある家を指差して

「あの家の上で、少し前に白い着物を着た女の人が踊ってましたよ」

あの家とは、僕の家でした。

僕には、もう逃げ道はありませんでした。
posted by ロン at 20:55| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月14日

マスメディアの影響

カギ屋が大盛況になる日があります。それは防犯に関するワイドショー番組や特番などが放送された次の日です。

最近は少なくなりましたが、5〜6年前はよくありました。おおよそ午前中にお越しになられます。

お越しになられるお客様は、前日に放送された特定のカギ(シリンダー)が、いかに防犯性が高いかということを、僕に説明してくれます。その日は、何度も同じことを聞くことになります。

お客様の説明されるシリンダーは、その時の最新のシリンダー、もしくは、抜きん出た特徴を持つシリンダーです。

僕はすべてのシリンダーを網羅しているわけではありません。僕は新しいシリンダー、突飛なシリンダーよりも、防犯性が高いのは当然として、実用性があるシリンダーのほうを信用しています。特約店でなければ合鍵を作ることができないシリンダーや、オーナー登録制などのシリンダーは、確かに防犯性が高く、セキュリティも万全なのはわかるのですが、この日本でそこまでする必要性があるか、いつも疑問に思っています。

「昨日、テレビでやってた・・・というカギはありますか?」とお客様は聞いてきます。僕が知らないふりをすると、鬼の首を取ったようにお客様は評論家さながらの説明をされます。「そのカギは・・」と説明をしてくれます。

僕はお客様の行動を見たり、言動を聞いたりするたびに
「人間はマスメディアの影響をうけやすいんだなぁ」と思います。

達観しているようですが、

「納豆でダイエットができるんやったら、茨城県民も水戸泉も、もっと痩せとるわ!!」と最近テレビに突っ込んでおります。

僕も人間です。
posted by ロン at 21:44| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月05日

相性

ある老夫婦でした。石の表札の注文をいただきました。とても感じのいい老夫婦でした。

珍しい名字でした。またご要望のフォント(字体)、石の種類もなかなか渋いものでした。

約一週間後その表札が届き、早速、間違いが無いかを確認いたしました。
すばらしい出来上がりでした。お客様に 届きました のお電話をかけました。

次の日、僕は午前中をスタッフに任せて昼過ぎに店に出ました。

スタッフは
「あの表札、横書きではなくて縦書きでしたよ」と言ってきました。ご注文は縦書きでした(届いたものは横書きでした)。僕は聞き間違えていたのです。スタッフが気を利かせてすぐに再注文してくれていました。

約一週間後に表札が届きました。

ここで間違いがあれば、お客様に迷惑をかけることになるので、気合を入れて確認しました。

目を疑いました。

縦書き、サイズ、フォントはOKなのですが、なんと石の種類が違ってました。

僕はスタッフに
「石の種類の変更でもあったんかいな?」と聞くと
「ごめんなさい」という返事でした。

3回目の注文をしました。注文をした直後にその老夫婦がお越しになられ
「まだかいな?」といってきました。もちろん間違った表札が届いたとは申し上げられず、しどろもどろになりながら

「表札に心を込めておりますので、もう少しお待ちいただけますでしょうか」と、わけのわからないことをいってしまいました。ご夫婦はいい方でした。笑ってお帰りになられました。

3回目の表札が届きました。問題ありませんでした。

お客様に 届きました の電話をかけました。数日後お引取りにこられました。

老夫婦は本当に感じのいい方でしたが、この店とは相性が悪いと思っていました。

この老夫婦がお帰りになられるときに、漬物石にしては軽い、前の表札の処分を考えておりました。

僕は
「もう一軒、家を建てられたときにお使いください」と、表札の一枚を渡そうとしました。

旦那様の方が
「ちょうどよかった!表札をつけるところがかなりへっこんどるから、何かで埋めようとおもっとったんですわ!この表札埋めたらええんですわ!」

最後の最後に、名誉挽回できました。
posted by ロン at 18:10| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする