困るというほどではないのですが、少し戸惑うお客様が来られることがあります。それは外国人の方です。
僕の店には、僕を含めて日本語だけが堪能な日本人しかおりません。日本語がしゃべれない外国人がお越しになられるとかなり疲れます。
ある日のことです。
「なんか、アゲインゆうてますよぉ・・」と、女性スタッフが怯えたように僕にいってきました。
1人の男性の外国人がニコニコしながらカウンターの前に立っていました。
その方は、以前に僕の店であるものの修理をした方でした。英語をしゃべっていたのでおそらくアメリカ人かイギリス人かオーストラリア人でした。その方の風貌から僕は何故か「ポール」と勝手に名付けました。
ポールは、以前に僕が修理した箇所を指差して、もう一度「アゲイン」とおっしゃられました。
確かに、修理前の状態に戻っておりました(きれいに壊れておりました)。
僕は「アゲイン」の言葉どおり、もう一度修理し直しました。修理というより、新しいものを付け替えました。
思ったよりも、きれいに、丈夫に修理が出来上がりました。
僕は、得意げに修理したものを渡しました。
ポールは、その修理したところを確認して満足し
「オウ、グレイト!」と日本人でも解る典型的な英語を発しました。
それから、何か英語を喋り捲っていました。おそらく僕をほめていたんだろうと思います。
僕は少し日本語を教えてあげようと思いました。
ポールは「グレイト」を何度も繰り返していたので、
「グレイト、イン ジャパニーズ、素晴らしい!」と教えてあげました。
予想通り、ポールは
「オウ 素晴らしい!」と繰り返しました。
お見送りする時にポールは
「ユーアー素晴らしい!」といってくれました。
ポールはそれから、僕の店に度々来てくれるようになりました。
そして僕が合鍵を作ったり、出来上がった表札を見たりする度に
「オウ、素晴らしい!」といってくれるようになり、店を去るときには
「ユーアー素晴らしい!バイバイ!」といってくれるようになりました。
教育した甲斐がありました。
2006年09月27日
2006年09月26日
「マスターキー」を通して見える日本
僕は、一本の「マスターキー」を持っています。しかもその「マスターキー」は合鍵です。
この「マスターキー」は僕の店のものではありません(テナントなのでマスターキーを持ちたくても、開ける扉がありません)。この「マスターキー」は、以前僕が勤めていた会社(某有名販売チェーン店)のある店舗の「マスターキー」です。僕はこの会社で管理職をしていたことがあります。
「マスターキー」は、その物件の全ての扉を開けることができるものです。通常なら「マスターキー」は管理されていなければなりません。悪用される恐れがあるからです。
会社を辞めた僕が「マスターキー」を持っていること自体、あってはいけないことなのです。本来なら会社にとっては管理体制を恥じるべきことなのです。おそらくこの会社は僕に「マスターキー」を渡したことすら忘れているでしょう。
僕の目の前に、辞めた会社の「マスターキー」があること、この事実を通して見えることがあります。
それは「モラル 技術の継承の危機」です。
僕は、この会社のモラルについてどうのこうの言うつもりはありません。なぜならモラルの低下は、おそらく日本の多くの会社で起こりうる(もうすでに起こっているかもしれません)ことだからです。
今の会社は、会社の存続のため、くだいていえば、利潤追求 のために、人件費を削減しようとしています。そのために正社員より安い非正社員(派遣社員、契約社員、アルバイトなど)の割合を増やそうとしております。上記の会社も、正社員よりも非正社員の方がはるかに多かったです。
非正社員が増えれば人件費の削減ができ、利益が多くなります。しかし、固定されていない人材、1つの会社に定着しない非正社員が増えれば、これまでに培ってきたその会社のモラルや技術の継承はどうなるのでしょう。
いろいろな規制緩和がなされ、ワークシェアリングなどというきれいな言葉ができてしばらく経ちますが、最近になって企業の不祥事や事故が特に多くなったと思います。企業の不祥事や事故の増加は、利潤追求のために正社員を削減し、非正社員を増やしたことと無関係ではないと思うのは僕だけでしょうか?
会社の真の利益は、各々の会社の存在理由が明確であること、そして各々の会社の成長が続く事だと思います。それらが決算上の利益を生み出す原動力となるのです。
一時の人件費削減のために、流動的な非正社員を多くすることはその会社の「モラル」と「技術」の継承を難しくします。なぜなら非正社員の不安定な雇用では会社を愛することはできないからです。安定があるからこそ安心して会社を愛することができ、仕事に打ち込むことができるのです。愛することができない会社の「モラル」や「技術」をどうして真剣に学ぶことができるでしょう?また「モラル」や「技術」を身につけたとしても、いつまでその会社にいるかわかりません。
仕事の根幹は「人」です。会社の真の利益を出すためには、会社を愛する人材を育てることがもっとも大切で近道ではないかと思うのです。今の会社のあり方(非正社員を雇用する)では、利益どころか、「モラル」や「技術」は低下していくばかりだと思います(そうでもない会社もたくさんあると思いますが)。
僕の店は、まだ売り上げが少ないので正社員を雇う余裕はありませんが、将来は必ず正社員を採用しようと思っています。僕の店を愛してくれて「技術」を継承してくれるようにと思っています。「モラル」に関しては、少なくとも僕よりは「人格者」が来てくれると思います。
ここまでにしておきます。
この「マスターキー」は僕の店のものではありません(テナントなのでマスターキーを持ちたくても、開ける扉がありません)。この「マスターキー」は、以前僕が勤めていた会社(某有名販売チェーン店)のある店舗の「マスターキー」です。僕はこの会社で管理職をしていたことがあります。
「マスターキー」は、その物件の全ての扉を開けることができるものです。通常なら「マスターキー」は管理されていなければなりません。悪用される恐れがあるからです。
会社を辞めた僕が「マスターキー」を持っていること自体、あってはいけないことなのです。本来なら会社にとっては管理体制を恥じるべきことなのです。おそらくこの会社は僕に「マスターキー」を渡したことすら忘れているでしょう。
僕の目の前に、辞めた会社の「マスターキー」があること、この事実を通して見えることがあります。
それは「モラル 技術の継承の危機」です。
僕は、この会社のモラルについてどうのこうの言うつもりはありません。なぜならモラルの低下は、おそらく日本の多くの会社で起こりうる(もうすでに起こっているかもしれません)ことだからです。
今の会社は、会社の存続のため、くだいていえば、利潤追求 のために、人件費を削減しようとしています。そのために正社員より安い非正社員(派遣社員、契約社員、アルバイトなど)の割合を増やそうとしております。上記の会社も、正社員よりも非正社員の方がはるかに多かったです。
非正社員が増えれば人件費の削減ができ、利益が多くなります。しかし、固定されていない人材、1つの会社に定着しない非正社員が増えれば、これまでに培ってきたその会社のモラルや技術の継承はどうなるのでしょう。
いろいろな規制緩和がなされ、ワークシェアリングなどというきれいな言葉ができてしばらく経ちますが、最近になって企業の不祥事や事故が特に多くなったと思います。企業の不祥事や事故の増加は、利潤追求のために正社員を削減し、非正社員を増やしたことと無関係ではないと思うのは僕だけでしょうか?
会社の真の利益は、各々の会社の存在理由が明確であること、そして各々の会社の成長が続く事だと思います。それらが決算上の利益を生み出す原動力となるのです。
一時の人件費削減のために、流動的な非正社員を多くすることはその会社の「モラル」と「技術」の継承を難しくします。なぜなら非正社員の不安定な雇用では会社を愛することはできないからです。安定があるからこそ安心して会社を愛することができ、仕事に打ち込むことができるのです。愛することができない会社の「モラル」や「技術」をどうして真剣に学ぶことができるでしょう?また「モラル」や「技術」を身につけたとしても、いつまでその会社にいるかわかりません。
仕事の根幹は「人」です。会社の真の利益を出すためには、会社を愛する人材を育てることがもっとも大切で近道ではないかと思うのです。今の会社のあり方(非正社員を雇用する)では、利益どころか、「モラル」や「技術」は低下していくばかりだと思います(そうでもない会社もたくさんあると思いますが)。
僕の店は、まだ売り上げが少ないので正社員を雇う余裕はありませんが、将来は必ず正社員を採用しようと思っています。僕の店を愛してくれて「技術」を継承してくれるようにと思っています。「モラル」に関しては、少なくとも僕よりは「人格者」が来てくれると思います。
ここまでにしておきます。
2006年09月22日
「盗られるものはあらへん」
合鍵を依頼されるお客様の約半分が
「このカギ、防犯性高いですか?」と聞いてこられます。
未だに、ピッキングに弱い「ディスクシリンダー」が多く見受けられます(たまにピンシリンダーもありますが)。
僕は正直に
「このカギは、防犯性が低いです。ピッキング犯罪の標的になったカギです」と申し上げます。
すると、ほぼ100%のお客様がおっしゃる言葉があります。
それは
「もし、家に入られても盗られるもんは何もあらへん。」
です。
僕は、お客様にカギの取換えを勧めます。不安を煽り立てて売り上げを伸ばそうとしている訳ではありません。取換えをしたからといって、完全な防犯になるとも考えておりません。でも、カギの取換えをお勧めします。
「盗られるものはあらへん」は、確かにそうかも知れません(別にお客様を見て思うわけではありません。失礼でしょうか?)。犯人は物色して盗るものがなければ帰るかもしれません。しかし、問題はそれではありません。
実際に、ピッキング犯を含む空き巣に入られたことのある方は
「盗られるものはあらへん」とは、決して言わないでしょう。
自分の「家」に見知らぬものが侵入された恐怖は、実際に入られた人にしかわからないのです。僕は、空き巣に入られた人に相談を受けたことが何度かあります。皆さん「盗られた怒りよりも、入られた恐怖の方がはるかに大きい」とおっしゃられます。その青ざめた顔が、それを物語っております。
現実は、未だに「ディスクシリンダー」が大多数を占めております。もし、まだ「ディスクシリンダー」がついていたら、防犯性の高いカギに換えるようにお勧めいたします。完全な防犯ではありませんが、玄関からの不法侵入にかなりの効力を発揮します。
ただ、あまりにも防犯に関して神経質になりすぎると、
「見えない敵」
との戦いになりますので、ほどほどにされますよう。
「このカギ、防犯性高いですか?」と聞いてこられます。
未だに、ピッキングに弱い「ディスクシリンダー」が多く見受けられます(たまにピンシリンダーもありますが)。
僕は正直に
「このカギは、防犯性が低いです。ピッキング犯罪の標的になったカギです」と申し上げます。
すると、ほぼ100%のお客様がおっしゃる言葉があります。
それは
「もし、家に入られても盗られるもんは何もあらへん。」
です。
僕は、お客様にカギの取換えを勧めます。不安を煽り立てて売り上げを伸ばそうとしている訳ではありません。取換えをしたからといって、完全な防犯になるとも考えておりません。でも、カギの取換えをお勧めします。
「盗られるものはあらへん」は、確かにそうかも知れません(別にお客様を見て思うわけではありません。失礼でしょうか?)。犯人は物色して盗るものがなければ帰るかもしれません。しかし、問題はそれではありません。
実際に、ピッキング犯を含む空き巣に入られたことのある方は
「盗られるものはあらへん」とは、決して言わないでしょう。
自分の「家」に見知らぬものが侵入された恐怖は、実際に入られた人にしかわからないのです。僕は、空き巣に入られた人に相談を受けたことが何度かあります。皆さん「盗られた怒りよりも、入られた恐怖の方がはるかに大きい」とおっしゃられます。その青ざめた顔が、それを物語っております。
現実は、未だに「ディスクシリンダー」が大多数を占めております。もし、まだ「ディスクシリンダー」がついていたら、防犯性の高いカギに換えるようにお勧めいたします。完全な防犯ではありませんが、玄関からの不法侵入にかなりの効力を発揮します。
ただ、あまりにも防犯に関して神経質になりすぎると、
「見えない敵」
との戦いになりますので、ほどほどにされますよう。
2006年09月20日
ファン
商売をしていて、一番嬉しいことは、僕やスタッフ、店に「ファン」ができることです。
ありがたいことに、僕には「ファン」がいます。特に面白い「ファン」を御紹介させていただきます。
1人目は、少し年上の男性です。時々店に現れます。
この方は、僕以外の人(スタッフなど)がいると僕の店には近づきません。店に僕しかいない時に僕に声をかけてくれます。
この方は、一度も僕の店を利用したことがありません。しかし僕と世間話をするのが好きなようです。
ここまでなら普通の「常連様」なのですが、この方はある意味「ストーカー」です。
店に来られるたびに僕に関する「報告」をしてくれます。
「昨日の5時に○○で見かけたけど、何してたの?」
「今日の3時から5時まで車が止まってなかったけど、どこ行っていたの?」
「いつもの駐車位置に止まっていなかったけど、どうしたの?」
極めつけは
「車のバンパーに新しいキズが2つ増えていたけど、どこでつけたの?」でした。僕自身も知らない情報をこの人は報告してくれるのです。
いったいこの人は普段何をしている人何だろう?今でも謎です。
2人目は、主婦です。
この方は僕が店を開いた時からのお客様です。
この方(Mさんとします)は、旦那様のお仕事の関係で数年間アメリカへ行かれてました。赴任前にも僕の店にお越しになられて別れを惜しんでました。
Mさんがつい先日、日本にお戻りになられ、僕の店にお越しになられました。
Mさんは僕と会えたのが本当に嬉しかったらしく、笑顔で走ってこられました。僕も嬉しかったです。
Mさんのお名前を僕は当然ながら覚えており、「Mさん、お久しぶりです。お元気でしたか?」と申し上げました。Mさんは「嬉しいっ!覚えていてくださったんですね!」とかなり興奮されておりました。
スタッフが見せに来る時間でした。僕とMさんはかなりのテンションで会話をしておりました。スタッフとMさんは初対面でした。
スタッフは僕とMさんの会話を聞きながら、僕とMさんの関係を知りたがっているようでした。
ひとしきりMさんとおしゃべりをして、少し沈黙になりました。すかさず
「オーナーとどのような関係ですか?」とスタッフがMさんに聞きました。
「昔、この人の愛人だったんですぅっ!」
アメリカナイズされたMさんは、本当に嬉しそうでした。
僕はまだ結婚もしておりませんので、「愛人」どころの話ではありませんでした。僕の方がドキドキしました。もちろんMさんは僕の「愛人」ではありません。言うまでもありません。
(こんなカイショなしに、愛人がおったんかいっ!)
みたいな目で、スタッフが僕を見たように感じました。
「ファン」は、本当にありがたいものです。
ありがたいことに、僕には「ファン」がいます。特に面白い「ファン」を御紹介させていただきます。
1人目は、少し年上の男性です。時々店に現れます。
この方は、僕以外の人(スタッフなど)がいると僕の店には近づきません。店に僕しかいない時に僕に声をかけてくれます。
この方は、一度も僕の店を利用したことがありません。しかし僕と世間話をするのが好きなようです。
ここまでなら普通の「常連様」なのですが、この方はある意味「ストーカー」です。
店に来られるたびに僕に関する「報告」をしてくれます。
「昨日の5時に○○で見かけたけど、何してたの?」
「今日の3時から5時まで車が止まってなかったけど、どこ行っていたの?」
「いつもの駐車位置に止まっていなかったけど、どうしたの?」
極めつけは
「車のバンパーに新しいキズが2つ増えていたけど、どこでつけたの?」でした。僕自身も知らない情報をこの人は報告してくれるのです。
いったいこの人は普段何をしている人何だろう?今でも謎です。
2人目は、主婦です。
この方は僕が店を開いた時からのお客様です。
この方(Mさんとします)は、旦那様のお仕事の関係で数年間アメリカへ行かれてました。赴任前にも僕の店にお越しになられて別れを惜しんでました。
Mさんがつい先日、日本にお戻りになられ、僕の店にお越しになられました。
Mさんは僕と会えたのが本当に嬉しかったらしく、笑顔で走ってこられました。僕も嬉しかったです。
Mさんのお名前を僕は当然ながら覚えており、「Mさん、お久しぶりです。お元気でしたか?」と申し上げました。Mさんは「嬉しいっ!覚えていてくださったんですね!」とかなり興奮されておりました。
スタッフが見せに来る時間でした。僕とMさんはかなりのテンションで会話をしておりました。スタッフとMさんは初対面でした。
スタッフは僕とMさんの会話を聞きながら、僕とMさんの関係を知りたがっているようでした。
ひとしきりMさんとおしゃべりをして、少し沈黙になりました。すかさず
「オーナーとどのような関係ですか?」とスタッフがMさんに聞きました。
「昔、この人の愛人だったんですぅっ!」
アメリカナイズされたMさんは、本当に嬉しそうでした。
僕はまだ結婚もしておりませんので、「愛人」どころの話ではありませんでした。僕の方がドキドキしました。もちろんMさんは僕の「愛人」ではありません。言うまでもありません。
(こんなカイショなしに、愛人がおったんかいっ!)
みたいな目で、スタッフが僕を見たように感じました。
「ファン」は、本当にありがたいものです。
2006年09月09日
天真爛漫な人
一昨年の夏のことでした。
「カギの交換をしてほしいんですが・・」と若い女性が店にお越しになりました。活発で利発そうなお嬢様でした。
その日の夜に早速伺いました。マンションでした。
もともとのカギは防犯性の低いカギでした。
僕は
「カギを換えて正解ですね。このカギは・・」など、取り留めのない話をしながら錠前本体をドアから取り外し、左手に錠前本体、右手にドライバーを持って、防犯性の低いカギを外し、新しいカギをつけようとしました。
「これから、防犯性の高いカギを取り付け・・」と説明するために彼女の顔を見ようとした時でした。
「パーンッ!」
ものすごく軽快で、すばらしく響き渡る音がしました。
彼女は「やったーっ!!」と大声をあげました。
僕はビンタされてました。汗で滲んだ僕の両手はふさがっていましたので何の抵抗もできませんでした。
彼女は、掌でつぶされた「蚊」を満足そうに僕に見せました。
「こんなに血を吸ってましたね!」と、悪びれる様子もありませんでした。
「・・よかったですね。」
僕は、苦虫を噛み潰したように答えました。少しずつほっぺたが痒くなってきました。
カギを錠前本体に取り付け、錠前をドアに取り付けようとした時でした。
不自然に彼女が手を振り上げた瞬間、
「パーンッ!」
一発目ほどいい音はしませんでしたが、彼女の手は僕の額に炸裂しました。なぜかスローモーションに見えました。
彼女は満足そうに、掌の「蚊」を僕に見せました。またまた僕の「血」がついていました。一度目は悲劇、二度目は喜劇でした。
カギ交換のお代金をいただき、車に乗りました。
不自然に大きくなった、ほっぺたと額の「ふくらみ」をかきながら、僕は言葉どおり「血」と「汗」を代償に彼女を満足させたことに喜びを感じました。
僕は、変な趣味は持っていません。
「カギの交換をしてほしいんですが・・」と若い女性が店にお越しになりました。活発で利発そうなお嬢様でした。
その日の夜に早速伺いました。マンションでした。
もともとのカギは防犯性の低いカギでした。
僕は
「カギを換えて正解ですね。このカギは・・」など、取り留めのない話をしながら錠前本体をドアから取り外し、左手に錠前本体、右手にドライバーを持って、防犯性の低いカギを外し、新しいカギをつけようとしました。
「これから、防犯性の高いカギを取り付け・・」と説明するために彼女の顔を見ようとした時でした。
「パーンッ!」
ものすごく軽快で、すばらしく響き渡る音がしました。
彼女は「やったーっ!!」と大声をあげました。
僕はビンタされてました。汗で滲んだ僕の両手はふさがっていましたので何の抵抗もできませんでした。
彼女は、掌でつぶされた「蚊」を満足そうに僕に見せました。
「こんなに血を吸ってましたね!」と、悪びれる様子もありませんでした。
「・・よかったですね。」
僕は、苦虫を噛み潰したように答えました。少しずつほっぺたが痒くなってきました。
カギを錠前本体に取り付け、錠前をドアに取り付けようとした時でした。
不自然に彼女が手を振り上げた瞬間、
「パーンッ!」
一発目ほどいい音はしませんでしたが、彼女の手は僕の額に炸裂しました。なぜかスローモーションに見えました。
彼女は満足そうに、掌の「蚊」を僕に見せました。またまた僕の「血」がついていました。一度目は悲劇、二度目は喜劇でした。
カギ交換のお代金をいただき、車に乗りました。
不自然に大きくなった、ほっぺたと額の「ふくらみ」をかきながら、僕は言葉どおり「血」と「汗」を代償に彼女を満足させたことに喜びを感じました。
僕は、変な趣味は持っていません。
2006年09月08日
珍しいお名前は困ります
僕の店は、カギ以外にも各種物品販売をしております。
その中でも売り上げが高いものに表札があります。
表札は印鑑と同様にお客様のオーダー商品です。キャンセルされると転売ができません。
その方から注文をいただいたのは、去年の4月でした。
その方は「サイズはこれでええわ。できたら電話してんか」といって、ある一枚のステンレス製のプレートを注文されました。珍しいお名前でした。その方も「これ、なんて読むかわかるか?」と聞いてきました。僕は、漢字に関してはけっこう詳しいほうなのですが、読むことはできませんでした。
プレートが届いて、その方の携帯に電話しました。留守電に入れました。
3日後にもう一度電話いたしました。留守電でした。
また、10日後に電話しました。留守電でした。
しつこく思われるのでこれ以上は電話しませんでした。
それからは電話をすることもなく、僕自身もプレートのことを忘れておりました。
去年の9月のことでした。
僕は、店の近くのファミリーレストランで友人と食事をしておりました。
友人といろいろお話をしていると、どこかで見た事のある人が入ってきました。表札を注文されたあの方でした。
「あれ、できたか?」
あの方は忘れておられませんでした。僕の方が忘れておりました。
「できておりますよ。いつでも結構ですので散歩のついでにお越しください」と申し上げました。
あれから1年経ちますが、その方はまだお引取りになられておりません。
珍しいお名前の表札は、前払いでいただきましょう。
その中でも売り上げが高いものに表札があります。
表札は印鑑と同様にお客様のオーダー商品です。キャンセルされると転売ができません。
その方から注文をいただいたのは、去年の4月でした。
その方は「サイズはこれでええわ。できたら電話してんか」といって、ある一枚のステンレス製のプレートを注文されました。珍しいお名前でした。その方も「これ、なんて読むかわかるか?」と聞いてきました。僕は、漢字に関してはけっこう詳しいほうなのですが、読むことはできませんでした。
プレートが届いて、その方の携帯に電話しました。留守電に入れました。
3日後にもう一度電話いたしました。留守電でした。
また、10日後に電話しました。留守電でした。
しつこく思われるのでこれ以上は電話しませんでした。
それからは電話をすることもなく、僕自身もプレートのことを忘れておりました。
去年の9月のことでした。
僕は、店の近くのファミリーレストランで友人と食事をしておりました。
友人といろいろお話をしていると、どこかで見た事のある人が入ってきました。表札を注文されたあの方でした。
「あれ、できたか?」
あの方は忘れておられませんでした。僕の方が忘れておりました。
「できておりますよ。いつでも結構ですので散歩のついでにお越しください」と申し上げました。
あれから1年経ちますが、その方はまだお引取りになられておりません。
珍しいお名前の表札は、前払いでいただきましょう。
2006年09月02日
ソースのシミ
ある寒い日でした。
その方は、若い男性でした。
一本のキーを出して
「このカギ、兄ちゃん作れる?」と聞いてこられました。
ベンツのカギでした。なおかつ、差し出されたキーは合鍵でした。
「このあいだ別のところで作ったんやけど合わんかってん。もうあかんかなぁ」と少しあきらめ気味でした。
合鍵はコピーを重ねていくと、少しずつ、もとのキーよりずれてきます。
僕は
「一度トライしてみます。もし回らなかったり、かたかったりしましたら決して無理してまわさないで下さい。合わなければ御返金いたしますので」といって、そのキーをお預かりして合鍵を作りました。
もしその車(ベンツ)に乗って来られていたら、その場で合鍵を試すことができるのですが、別の車に乗ってこられていました。
作り終わった後に、くれぐれも無理をされないようにと申し上げ、その方を見送りました。
一週間後
「兄ちゃん、ばっちりやったで!」と、すごく嬉しそうにその方がお越しになられました。
「兄ちゃん、あんたうまいなぁ。さすがやなぁ。よっ!職人!」と、異様なテンションでした。
「もう一本作ってもらえる?今日は(ベンツに)乗って来とるから」ということでもう一本作らせていただきました。
作り終わり、一度キーを試すために、その方のベンツまで行きました。
いかついベンツでした。スモークを貼ってました。その方は若いながらも、その筋の方のようでした。一発で合鍵はOKでした。本当によかったと思いました。
その方は、またまた大喜びで
「兄ちゃん、ちょっと待っとき」といって店を離れました。
しばらくして、白い袋を2つ持ってこられました。
「これ、食べて」と1つを僕にくれました。
たこ焼きでした。できたてのあつあつでした。
その方は
「しかし兄ちゃん、うまいなぁ。カギ屋何年やってんの?」「カギ屋によってなんで回らんかったり回ったりすんの?」「どんなカギでも開けれんの?」と子供のように聞いてこられました。カギに興味があるようでした。
そして
「兄ちゃん、遠慮せんとこれ食べて」とおもむろにそのたこ焼きをあけました。ソースの香りがそこら中に広がりました。
その方は、たこ焼きを1つ口の中に入れました。
その表情から、たこ焼きは相当熱かったようでした。
2つ目を口の中に入れた直後に、又、僕に何か言いたいようでした。
僕は(やばい、やばい、これ以上しゃべらんといて・・)とひやひやしながら、カウンターに出していたキーブック(ブランクキーの本)を片付けようとしていました。
悲劇は起こりました。
「お兄ちゃん・・ガボッ!」
たこ焼きは宙を舞い、キーブックの上で前回り受身をして静止しました。
僕は、予想通りの「悲劇」に呆然としていると、その方はおもむろに、キーブックに着地したたこ焼きに手を伸ばしました。そして・・口の中に入れました。
その方は「じゃぁ帰るわ」といって、何もなかったようにさわやかな笑顔で堂々とお帰りになられました。僕は、笑いをこらえるのに必死でした。その筋の方も、たこ焼きの熱さには勝てませんでした。
確かにたこ焼きは、あつあつが美味しいと思うのですが、僕はキーブックのソースのシミを見るたびに
「ガボッ!」
にならないように少し冷ましてから食べるように、と思っています。
その方は、若い男性でした。
一本のキーを出して
「このカギ、兄ちゃん作れる?」と聞いてこられました。
ベンツのカギでした。なおかつ、差し出されたキーは合鍵でした。
「このあいだ別のところで作ったんやけど合わんかってん。もうあかんかなぁ」と少しあきらめ気味でした。
合鍵はコピーを重ねていくと、少しずつ、もとのキーよりずれてきます。
僕は
「一度トライしてみます。もし回らなかったり、かたかったりしましたら決して無理してまわさないで下さい。合わなければ御返金いたしますので」といって、そのキーをお預かりして合鍵を作りました。
もしその車(ベンツ)に乗って来られていたら、その場で合鍵を試すことができるのですが、別の車に乗ってこられていました。
作り終わった後に、くれぐれも無理をされないようにと申し上げ、その方を見送りました。
一週間後
「兄ちゃん、ばっちりやったで!」と、すごく嬉しそうにその方がお越しになられました。
「兄ちゃん、あんたうまいなぁ。さすがやなぁ。よっ!職人!」と、異様なテンションでした。
「もう一本作ってもらえる?今日は(ベンツに)乗って来とるから」ということでもう一本作らせていただきました。
作り終わり、一度キーを試すために、その方のベンツまで行きました。
いかついベンツでした。スモークを貼ってました。その方は若いながらも、その筋の方のようでした。一発で合鍵はOKでした。本当によかったと思いました。
その方は、またまた大喜びで
「兄ちゃん、ちょっと待っとき」といって店を離れました。
しばらくして、白い袋を2つ持ってこられました。
「これ、食べて」と1つを僕にくれました。
たこ焼きでした。できたてのあつあつでした。
その方は
「しかし兄ちゃん、うまいなぁ。カギ屋何年やってんの?」「カギ屋によってなんで回らんかったり回ったりすんの?」「どんなカギでも開けれんの?」と子供のように聞いてこられました。カギに興味があるようでした。
そして
「兄ちゃん、遠慮せんとこれ食べて」とおもむろにそのたこ焼きをあけました。ソースの香りがそこら中に広がりました。
その方は、たこ焼きを1つ口の中に入れました。
その表情から、たこ焼きは相当熱かったようでした。
2つ目を口の中に入れた直後に、又、僕に何か言いたいようでした。
僕は(やばい、やばい、これ以上しゃべらんといて・・)とひやひやしながら、カウンターに出していたキーブック(ブランクキーの本)を片付けようとしていました。
悲劇は起こりました。
「お兄ちゃん・・ガボッ!」
たこ焼きは宙を舞い、キーブックの上で前回り受身をして静止しました。
僕は、予想通りの「悲劇」に呆然としていると、その方はおもむろに、キーブックに着地したたこ焼きに手を伸ばしました。そして・・口の中に入れました。
その方は「じゃぁ帰るわ」といって、何もなかったようにさわやかな笑顔で堂々とお帰りになられました。僕は、笑いをこらえるのに必死でした。その筋の方も、たこ焼きの熱さには勝てませんでした。
確かにたこ焼きは、あつあつが美味しいと思うのですが、僕はキーブックのソースのシミを見るたびに
「ガボッ!」
にならないように少し冷ましてから食べるように、と思っています。
2006年09月01日
筋金入りの貴婦人
その方は全身白のドレスをおまといになり、店の中にいらしても、日傘をさしたままでした。
左足を一歩前に出して、右足のつま先を立て「ごきげんよう」と挨拶をしてくれました。僕もスタッフも同じように右足のつま先を立てて「いらっしゃいませ」と挨拶をいたしました。その方と初めてお会いした瞬間でした。今でもしっかり覚えております。
僕の店は、カギ屋以外に各種物販、時計の電池交換、洋服のリフォームの受付などをしております。
その方は、古い腕時計を3つ取り出し
「申し訳ございません。この時計の電池を交換していただけますでしょうか?恐れ入ります。本当に申し訳ございません」とおっしゃられました。
先ず、時計のリューズ(時間あわせをするためのつまみ)を確認し
「10分ほどお時間いただけますか?」と申し上げますと
「申し訳ございません。よろしくお願いいたします。本当に申し訳ございません」とおっしゃられ、その場を少しお離れになられました。
枕詞に「申し訳ございません」、締めの言葉に「本当に申し訳ございません」と、別に悪いことをされたわけでもないのに、常に僕たちに謝っておりました。
僕も、何か悪いことが起こると「僕が悪かったのです」と自虐的になるほうです。謝ることは得意です。ですが、この方は僕の上を行っておりました。電柱にぶつかっても「申し訳ございません。本当に申し訳ございません」とおっしゃられる勢いでした。
電池交換は終わりましたが、特に古い腕時計のガラスが外れかけなのを見つけました。
僕は、力を入れてガラスを少し押しました。
・・やってしまいました。
とどめをさしてしまいました。
ガラスは、きれいに外れてしまいました。元には戻らなくなってしまいました。
しばらくしてその方が戻ってこられました。
立場が逆転してしまいました。
「申し訳ございません。ガラスが外れてしまいました。本当に申し訳ございません」
と申し上げましたところ
「申し訳ございません。私がこのような時計を持ってきたのが悪かったのです。お気を悪くなされないで下さいね。本当に申し訳ございません」とおっしゃられました。
結局、電池交換代をいただかないようにしたかったのですが
「申し訳ございません。お受け取り下さい。本当に申し訳ございません」といって、無理にお代金を出してきました。
もし受け取らなければ、その方はどうなるかわからなかったので、僕は苦々しい気持ちで受け取ってしまいました。
その方は、筋金入りの貴婦人でした。
左足を一歩前に出して、右足のつま先を立て「ごきげんよう」と挨拶をしてくれました。僕もスタッフも同じように右足のつま先を立てて「いらっしゃいませ」と挨拶をいたしました。その方と初めてお会いした瞬間でした。今でもしっかり覚えております。
僕の店は、カギ屋以外に各種物販、時計の電池交換、洋服のリフォームの受付などをしております。
その方は、古い腕時計を3つ取り出し
「申し訳ございません。この時計の電池を交換していただけますでしょうか?恐れ入ります。本当に申し訳ございません」とおっしゃられました。
先ず、時計のリューズ(時間あわせをするためのつまみ)を確認し
「10分ほどお時間いただけますか?」と申し上げますと
「申し訳ございません。よろしくお願いいたします。本当に申し訳ございません」とおっしゃられ、その場を少しお離れになられました。
枕詞に「申し訳ございません」、締めの言葉に「本当に申し訳ございません」と、別に悪いことをされたわけでもないのに、常に僕たちに謝っておりました。
僕も、何か悪いことが起こると「僕が悪かったのです」と自虐的になるほうです。謝ることは得意です。ですが、この方は僕の上を行っておりました。電柱にぶつかっても「申し訳ございません。本当に申し訳ございません」とおっしゃられる勢いでした。
電池交換は終わりましたが、特に古い腕時計のガラスが外れかけなのを見つけました。
僕は、力を入れてガラスを少し押しました。
・・やってしまいました。
とどめをさしてしまいました。
ガラスは、きれいに外れてしまいました。元には戻らなくなってしまいました。
しばらくしてその方が戻ってこられました。
立場が逆転してしまいました。
「申し訳ございません。ガラスが外れてしまいました。本当に申し訳ございません」
と申し上げましたところ
「申し訳ございません。私がこのような時計を持ってきたのが悪かったのです。お気を悪くなされないで下さいね。本当に申し訳ございません」とおっしゃられました。
結局、電池交換代をいただかないようにしたかったのですが
「申し訳ございません。お受け取り下さい。本当に申し訳ございません」といって、無理にお代金を出してきました。
もし受け取らなければ、その方はどうなるかわからなかったので、僕は苦々しい気持ちで受け取ってしまいました。
その方は、筋金入りの貴婦人でした。

