2006年08月29日

悪気のない人

毎年、春前になると来られる方がいらっしゃいます。今年もお越しになられました。

その方は、古くなったシリンダーとキーをお持ちになられて、
「このシリンダーの合鍵を、3本ずつ作ってくれ。元のキーは処分してくれ。できるだけきれいなキーで合鍵を作ってくれ」といいます。

持ってこられるシリンダーの数は10個ほどです。そして、そのシリンダーは、あのピッキングに弱いカギです。今では生産中止になっています。

新たに作った合鍵3本を、ひとくくりにしてプレートをつけ、部屋番号を書きます。前の部屋番号と重ならないように頭を使っているようです。

「新しく入ってくる人に、できるだけ新しいカギを渡したい。だから、合鍵を作るねん」と説明してくれます。

お持ち帰りになったあと、前の部屋に重ならないように、カギの取り付けをします。

めでたし、めでたし・・・


毎年、堂々とこのようなことをされるので、
「これは、正しいことだろうか?僕が真面目すぎるのだろうか?」と悩みます。

僕は、領収書を書くためにこの方からいただいた名刺を今でも大切に保管しています。

その名刺を見ながら
(間違ってもこの方からは絶対に家を買わない)
と心に誓っております。
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2006年08月28日

僕はまだカギ屋を続けてます

その方は若い美しい女性でした。知性と人柄が顔に表れている方でした。

「このカギの合鍵を作ってください」と、あるカギを差し出しました。

見た事のあるキーウェイ(溝)でした。ある日本のメーカーの典型的なキーウェイでした。ただ、メーカーのロゴ、ブランクキーの番号もなく、何も刻印されていませんでした。

「これは、どこで使われているカギですか?」と尋ねました(僕の尋ねた意図は、扉、ロッカーなどのどの部分で使われているかを知りたかったのです)。

すると
「カナダです」とお答えになられました。

僕は、日本のカギが、海外に輸出されているのだろうか?それとも偶然にキーウェイが一緒なのだろうかと考えておりました(実際に外国製のカギでも日本製のカギで代用できることが多々あります)。

17本の注文でした。お聞きすると、カナダ、アメリカのカギ屋さんはかなり荒っぽい、正確にカギを作ることができない、合わないことがよくあるので、日本で作っていく、とのことでした。この方は、わざわざカナダからカギを持ってきて、僕の店に依頼されたのでした。彼女のステイ先は日本人の友達がたくさんいるので、みんなに渡しておく、とのことでした。

僕は、かなりのプレッシャーを感じました。合わなかったからといって、すぐに作り直し、返品ができる距離ではないのです。もし鍵穴に入らなかったら大変迷惑をかけることになるのです。

もう一度、キーウェイを確認して、間違いないことを確信して合鍵作りを始めました。


「もし合わなければ、また来ます。2年後に帰国しますので」

「僕の店が続く限り、いくらでも作り直しいたします」


本当にさわやかで美しい女性でした。


あれから3年経ちますが、彼女はまだ来られていません。

僕の店もまだカギ屋を続けております。

もしもの時のために、僕はできる限りこの店を続けようと思っています。
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2006年08月27日

商品開発の難しさ

5年ほど前に、そのマンションは防犯性の高いカギに全室交換いたしました。マスターキーシステムにしたそうです。

そのマンションは、学生専用のマンションです。

住人が卒業する度に、又、住人がカギを紛失したり盗難にあう度にカギ交換をします。

マスターキーシステムのカギ交換となると、そのマスターキーに合うように、新しいカギをメーカーから取り寄せます。取り寄せる際は、必要事項(物件名、マスターキー番号など)を書き込んで注文いたします(僕の店は、メーカーと直接の取引はありませんので、問屋さん経由で注文します)。

通常は2〜3週間で店に届いて、それを交換して めでたしめでたし となります。

このマンションについているカギは、かなり防犯性の高いカギです。世間並みには人気があっての良さそうなカギです。

しかし、カギ屋さんでもこのカギのマスターキーシステムを見たことのない方が多いと思います。普通の交換用シリンダーと、マスターキーシステムのシリンダーでは、同メーカー、同名称でありながら、キーウェイが違います。マスターキーシステム専用に、シリンダーが開発されているのです。

このマンションのカギ交換をしたのは、あるカギ屋さんでしたが、廃業されました。縁があって僕が引き継いでカギのアフターフォローをさせていただいておりますが、このカギの取り換えの依頼が来ると、いつも気が重いです。

必要事項を書いて問屋さんに発注するのですが、納期が極端に遅いのです。

問屋さんに聞くと
「このメーカーの、このカギはマスターキーシステムをしているところがほとんどないので、新たにマスターキーシステムのシリンダーを作ることになると、そのラインを一から組むことになるので、メーカーもてんやわんやになる」というのです。

こんな調子だから、納期が通常の3倍ほどかかります。

お客様(大家さんや住人)は「早く!」と僕に言ってこられ、
僕は問屋さんに「早く!」とせがみ
問屋さんはメーカーに「早く!」とお願いするのですが
メーカーは「てんやわんや」になります。

防犯性が高いカギでも、人気がないカギは、お客様、販売店、問屋、メーカーのストレスの塊になります。

このカギの交換をしながら、いつも商品開発の難しさを感じております。
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2006年08月26日

初めてのカギ作り

僕が店を持つ前のことです。まだ車一台で仕事をしていた頃のことです。

その日はポスティングを朝からしておりました。

昼過ぎに、僕の携帯に一件の着信がありました。登録していない番号だったので「ひょっとしてお客様かな?」と思い、かけ直しいたしました。

「カギ屋さんですか?」と女性の声がしました。

ポスティングでこれほど早く反応があったのは本当に珍しく「僕って、最高!」と一人で喜んでおりました。

「なくしたカギを作っていただけますか?おいくらくらいでしょうか?」との問いかけに
「お伺いいたしますので、そのとき見積もりをいたします」と応え、お客様のご住所をお聞きして早速伺いました。

雑然としている部屋でした。まだ家具も定位置に置かれていないような状況でした。片づけができていない部屋で子供が二人遊んでいました。

「この扉のカギを作ってください。できればお安くお願いします」

この扉のカギは、シリンダー部分を取り出して、鑢で削って簡単に作れるものでした。

カギができて、お客様にお渡しするとき
「あと2本作っていただけますか?3本必要なんです」との後に
「明日、この部屋を出て行くんです」とおっしゃられました。

「実は、ここの管理人さんがすごく怖い人で、はじめにもらったカギを一本でも無くすと3万円の罰金があるんです。明日お返ししなくてはならないのですが、荷物の整理をしていて、ゴミを捨てるときにカギも一緒に捨ててしまったんです・・」

3万円も払うなら、カギを作ったほうが安くつく、ということで僕に仕事をくれたのでした。

僕は、この方は今日から新しい生活が始まるものだと思っておりました。

僕の初めてのカギ作りは、この方のこの部屋での最後の日でした。

大げさな言い方ですが、一本のカギにも「ドラマ」があります。

どんな仕事も、いろいろな人の「ドラマ」で成り立っている と感じた仕事でした。
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2006年08月25日

僕の車は・・・

僕の車は普通の車ではありません。

僕は、店の仕事以外に車による「移動合鍵作製」をしようとしていました。お客様の希望する場所まで伺って合鍵を作り、できれば鍵穴に入れて回るかどうか確認したかったのです。
合鍵は実際に使われる場所で使わなければ、合うか合わないかがわからないので、今でもお渡しした後が心配です。
そのほか、カギに関することには、できるだけお客様の要望にお応えしたいと今でも思っています。

僕の車には、3台のキーマシンがあります。

1台は普通のキーマシン
1台はコードマシン(コードナンバーでキーを作製するもの)
1台はディンプルキーを作製するもの

の3台です。自慢ではないのですが、ほとんどの合鍵を作製することができます。

ブランクキーも、普通のホームセンターの合鍵コーナーよりもはるかにたくさんの種類があります。コードマシンを積んでいるので紛失キーの作製もできます。又、ディンプルキー作製もできるので、ベンツ、BMWなどの高級車の合鍵作りも可能です。

合鍵以外にも、カギ交換にも対応できるようにしています。

たくさんの錠前、防犯性の高いディンプルシリンダーも積んでおります。

キーマシン3台、ブランクキー多数、錠前、シリンダーなど、僕の車は要塞のようになっております。

ところが、です。

僕は店をかまえているので、ほとんどの時間を店で過ごします。そのため、この車が出動することはほとんどありません。又、合鍵作製の要望はほとんどありません。たまにカギ交換にいくためにこの要塞に乗るくらいです。あとは、自宅と店を往復するくらいです。

あまりにも、たくさんのものを詰め込んでいるため、かなり重くなっています。駐車場のタイヤの部分は、地面がへっこんでおります。何よりも高級車でもないのに燃費が6kmと、驚異的な悪さになっております。

結局は、店を往復する以外はほとんど役に立たない車に、高くなったガソリンを注いでいるのです。

知人からは「マニアに磨きがかかったな」とお褒めの言葉をうけたまわりました。

僕の車は趣味の車です。

そして

僕の車は火の車です。
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迷える子羊

これは、僕がお世話になっているカギ屋さんから聞いたお話です。実話です。

中年女性のお客様(Oさんとします)は、何度も自宅の扉のカギを換える方で、このカギ屋さんにずっとお願いしていたそうです。

防犯性の高いカギに何度換えても
「また泥棒に入られました」といって、何度も何度もカギを換えたそうです。このほかにも、人とすれ違うたびにOさんは「今、バッグの中のものをあの人にとられた」などと言っていたそうです。僕たちの感覚では考えられません(最近は、このような方が増えたように思います)。

カギ屋さんも初めのうちはOさんのカギ交換の要望を聞いていたようですが、そのうちにネバーエンディング、エンドレスになると思い、ある一回を境にお断りしたそうです。

そこからOさんの必死の電話攻撃が始まりました。一日に何度も電話がかかってきて「カギを換えてください、お願いします!お願いします!!」と何度もせがまれたそうです。死に物狂いの懇願だったそうです。カギ屋さんはOさんの電話には、もう応えませんでした。しばらくするとOさんからの電話もなくなりました。

Oさんから電話がかかってこなくなって、しばらくの間平穏な日々が続きました。

そんなある日、一人の男性からカギの取換えの依頼の電話がありました。

「カギを取り換えてほしいのですが・・」

問題はその後でした。

「取り換えるのは私のところではありません。私は○○教会で神父をしているものですが、Oさんという方をご存知ですか?」

久しぶりに聞いた名前に、カギ屋さんは愕然としました。

「もう一度、もう一度だけでいいのでOさんの家のカギを換えてもらえないでしょうか?」

神父様の話によると、どうしてもカギ屋さんにカギを換えてほしい、とOさんから相談を受けたそうです。Oさんはカギ屋さんをそう簡単に自由にはしてくれませんでした。


Oさんは、迷える子羊になって、神父様に相談したのでした。

神父様は、Oさんに代わってカギ屋さんに依頼をしたのでした。

カギ屋さんは、神父様には逆らえず、これが最後という条件で神父様立会いの下、Oさんのカギ交換をしたのでした。

「困ったときの神頼み」をしたかったのは、Oさんよりもカギ屋さんだったかも知れません。
posted by ロン at 00:13| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月23日

正義は勝つ!

僕の店は合鍵作製がかなりの売り上げのウエイトを占めます。

お客様のお持ちになられるカギの種類によって、合鍵作製のためのマシーン(キーマシーン)が異なるため、僕の店のキーマシンは1台ではありません。僕の車に搭載しているものも含めると8台あります(少し自慢です)。

各キーについて適切なキーマシンで合鍵を作製することにより作り直しや返品を最小限に抑えるためです。何よりも、作り直しや返品のためにお客様が店に来るために御足労いただかないよう、いつも心がけております。おかげさまでほとんど作り直しや返品はありません。

2ヶ月ほど前の話ですが、僕の店で合鍵を作ったというお客様が
「これ、ここで作ってもらったんやけど、回らんかったんで作り直してくれるか?」と、ここで作ったという合鍵と、一本の元カギを持ってこられました。僕はもちろん作り直すつもりで、両方をお預かりいたしました。

(あれっ、これは僕の店で切ったものじゃない)

明らかに僕の店で切ったものではありませんでした。

お客様には失礼だったのですが「これは、本当にこちらで作ったものですか?」と尋ねました。

「間違いない。ここで作ったんや。ここでしかカギは作ってへん」と自信満々におっしゃられました。

そのカギは山の高さが合っていませんでした。明らかに深く作っていました。

このお客様のお持ちになられたカギは、僕が一番神経を使う極めて精度の高いカギでした。僕はこの種類のカギの合鍵を作るためだけに、専用のキーマシンを購入しておりました。

僕は明らかに山の高さが異なるカギを作ったと思われたことが屈辱でした。
しかし、そのカギは僕の店で使っているブランクキーのメーカーと一緒だったので、僕の店で作ったものではないという決定的な証拠を示すことはできませんでした。

結局、新しい合鍵を作ってお渡ししました。

「このお客様は、お持ちになられた合鍵が、この店で作ったものではないことを気付いてくれるだろうか?もし気付いてくれても、もう一度こちらに来て間違いだったことを認めてくれるだろうか?」と心の中で思っていました。

それから一週間ぐらいして、そのお客様がお越しになられました。

「兄ちゃん、よう考えたら前のカギ、ここで作ったもんと違うかったわ。前のカギは○○で作ったもんやったわ。迷惑かけたな。ごめんな」

僕は前の合鍵が僕の店で作ったものでないという自信がありました。ただ単に「僕の店は開かないカギは作らない」といったような精神論、プライドではありません。

それは、お持ちになられた合鍵は、僕の店で使うキーマシンと明らかに違う「刃」を使って作製されていたからです。キーマシンの「刃」の形によって、ある部分の切り口が、僕の店で使うキーマシンの切り口と異なっていたのです。

この方がわざわざ、このことをいうために僕の店にお越しいただいたこと、その誠実さが嬉しくて、僕は新たに作ったカギのお代金をいただくのをすっかり忘れて「ありがとうございました」を何回も繰り返していました。

僕はその日
「来るなら来い!正義は勝つ!」と、少年の頃に憧れたヒーローのような気分に浸ってました。
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2006年08月21日

新種のウイルス?

今年の4月のことでした。

僕のお得意様から電話がかかってきました。

「わしの友達やねんけど、鍵を盗られてしもたんや。気持ち悪いさかい鍵を取り換えてほしいねん。安くしてや!」との依頼でした。

その友達とは動物病院の院長でした。

お話を聞くと、飲みにいってそのまま公園のベンチで寝ていたということでした。カバンの中の財布と鍵を取られたということでした。今でもこんな豪快な方がいらっしゃると思うと結構嬉しかったです。

僕は早速現場へ行きました。結構大きな動物病院でした。

盗られた鍵の扉は2箇所あり、どちらとも施錠された状態でした。2階の院長室に入る扉でした。

1箇所は院長室に入る外からの扉でした。もう1つは病院の中から院長室に入る室内錠のある扉でした。また、隣の部屋から続いているベランダからの掃きだし窓も鍵がかかってました。やはり院長室だけあってかなり厳重でした。

僕は先ず、外の鍵を見ましたが潔くあきらめました。最近多いプッシュプルドアの同一組みのカギ、ロータリーディスクシリンダー(ピッキングが困難)でした。

次に、ベランダからの掃きだし窓の解錠にかかりましたが、どうしても解錠できませんでした。

最後に、室内錠の解錠にかかりました。

ピッキングで解錠を試みましたが、不思議なことに全然反応がありません。今までほとんどピッキングで解錠してきたのに(自慢ではありませんが)全く手応えがありません。普通のピンシリンダーだったのに、です。

僕は、解錠に関しては鍵穴からあけたいといつも思っています。ピッキング以外の解錠方法は最後に手段だと考えております。

どうしてもピッキングでの解錠ができなくて、かなりあせっていました。心拍数と呼吸数があがり、汗がどんどんでてきました。1階では先生方がウサギと犬の診察をしておりました。

結局、ドリリング(鍵をドリルで破壊する方法)で解錠しました。解錠にかかった時間は3分でした。

僕は、外側の扉のカギ(2個同一組み)と、室内錠の合計3個を取り換えました。極めて防犯性の高い鍵に換えました。

それからしばらくして、僕は今までにない高熱に見舞われました。ものすごくひどい風邪のようでした。一週間ほど寝込みました。医者からもかなりきつい薬をもらいました。僕はその頃ニュースで騒がれていた「新種のウイルス」を疑いました。動物病院での仕事だったので、動物を媒介した殺人ウイルスに僕は感染したのではないかと思っていました。

その後、すっかり体調がよくなって彼女とデートしていました。


僕が動物病院での仕事の後にひどい風邪にかかったこと、どんな薬をもらったかということを説明すると
「インフルエンザを疑われましたね」と答えてくれました。

本当にその風邪はインフルエンザよりもひどかったと思ったので
「エボラ出血熱か西ナイル熱か思たんやけど」と言ってみると、少しあきれた顔で
「そんなんありえへん」と鼻であしらわれました。

僕の彼女は看護師です。
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2006年08月20日

法律を知った日

去年のちょうど今頃の暑いときでした。

同業者が「解錠できますか?できればお願いしたいんですけど・・」と電話をかけてきました。

話によれば、物件のオーナーからの依頼で、鍵をなくしたので鍵を換えてほしいとの依頼でした。鍵がないので解錠と鍵の交換をするという依頼でした。

僕は店が終わってからその物件に向かいました。物件は1階部分が貸テナントの物件で、普通のピンシリンダーがついている扉と、その横にガラス窓、その横にその物件の2階へ通じる階段の扉がありました。2階は、賃貸物件で人が住んでいるということでした。貸テナントは久しく空き物件だということでした。

夜だったこともあり、ピッキングで貸テナントの扉の解錠を試みましたが、解錠できませんでした。おそらくマッシュルーム(アンチピッキングピン)が入っていたと思います。夜なので鍵を壊すにも音がするのでその日はあきらめて出直すことにしました。

次の日のまだ明るいうちに、もう一度伺いました。物件のオーナーはすでにお越しになられていました。

もう一度ピッキングを試みましたが、やはり開きませんでした。

ピッキングをしているときに、物件のオーナーがこんなことを言ってきました。

「この2階に住んでいる住人は、家賃をもう2年程払っていないんですよ。催促しても、その月だけは払うんですが、最近は電話さえ出ようとしないんです。今、裁判所に立ち退きの申請をして、もうすぐ(命令が)出る予定ですが、今でも連絡が取れないんです。おそらく居留守を使っているんでしょうね」と、穏やかな口調でおっしゃられていましたが、明らかに怒りを帯びていました。

ピッキングが駄目だとわかり、破錠をしようかと思いましたが、その扉は大きなガラスがついており、かなり古いものだったので扉にダメージを与えるとガラスが割れる恐れがあったので、横のガラス窓を開けることにしました。

ガラス窓の解錠に取り掛かり、しばらくの時間、窓をガタガタいわせていると、扉が開く音がしました。2階から誰か出てきたようでした。

物件のオーナーがお話をされていた例の「不払い住人」でした。

物件のオーナと「不払い住人」の久しぶりのご対面でした。

物件のオーナーは、今までこらえていた怒りを爆発させました。

「あなたはもうすぐしたら、ここから出て行くことになります。もうすでに裁判所に申請してます。もうすぐ命令が出ますので、準備をしておいてください。よくも今までこんな恥知らずなことをされてましたね」

そのほかにいろいろなことを言っておられましたが、怒りに満ちたその声を聞きながら、僕はひたすら窓の解錠をしました。

窓があき、その物件の中に入って扉のカギを開け、鍵の取換えをしました。

この「不払い住人」はどうなるのだろう?

僕は自分がした解錠、鍵の取換えよりも「不払い住人」がどうなるのかが心配でした。何か悪いことをしたみたいな気持ちになりました。

2日後、物件のオーナーから電話がありました。

「どこかゴミ回収をしている業者を知りませんか?」

お聞きすると、解錠をした次の日に、早速「不払い住人」は出て行かれたそうです。引越しというより、ほとんど夜逃げみたいでした。

僕も気になってもう一度その物件にいってみたところ、本棚など、かなりのものがまだ部屋に残っていました。オーナーは「どれでも要るものがあれば持って帰ってください」といってくれたのですが、何も持って帰りませんでした。

「不払い住人」は、お詫びの気持ちが書かれた置手紙を残して、行き先も告げずに出て行かれたということでした。

法はこういうところで生きているんだな、と複雑な気持ちがした経験でした。
posted by ロン at 23:56| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月19日

決めゼリフ

僕の店はカギ屋ですが、カギ以外にいろいろなことをさせていただいております。そのうちの1つに「洋服のリフォーム」の取次ぎをしております。

かいつまんで言えば、洋服のお直し(長いズボンの丈を短くしたり、ズボンのウエストを大きくしたり小さくしたりします)をうけたまわって、そのうけたまわった服をその筋の職人さんに委託してお直しをします。

もう2年程前になります。

うけたまわったリフォームができあがって店に届き、お客様に「できました」のお電話をさせていただいたときのことです。

「○○様のお宅でしょうか?」
「はい、そうですが。」

電話に出られた方は声からして、男性のご老人でした。

「いつもありがとうございます。××の洋服のリフォームのコーナーですが、いつもお世話になっております」
と決まり言葉のご挨拶をいたしました。

すると、いきなり

「お世話になってないっ!」
といって、ものすごい勢いで電話を切られました。

確かに僕は、洋服のリフォーム以外にはお世話をしたこともなく、うけたまわったときのその方の顔も忘れておりました。

恨みをかうようなことはしておりませんし、なにか粗相をしたのかな、僕の顔が気に入らないのかな、確かに僕は犬に嫌われるので、あのご老人は犬の生まれ変わりだろうか、それとも僕の若さと美貌にに嫉妬しているのかな、とわけのわからない想像をしておりました。

その方の怒りに満ちた「お世話になってないっ!」は、あまりにも怒りがこもっていて、電話の向こうの表情を想像すると笑いがでてきました。俳優だったら間違いなく主演男優賞ものでした。

10分ほどして「あんた、さっき電話してくれた人か?」と、一本の電話がありました。俳優からでした。

訳をお聞きすると、朝から「家のリフォーム」の売り込みの電話がその日は何件もかかってきたそうです。しかもものすごくしつこい売り込みだったということでした。タイミングが悪いことに、僕が電話をかけた時は、特にしつこい売り込みの直後だったのでした。「リフォーム」という言葉が、一人の老人を俳優に変えたのでした。

この俳優は何度も「すまんかったなぁ」と繰り返し、申し訳なさそうに電話を切りました。

この手の勧誘の電話は、僕の店にもしょっちゅうかかってきます。

この手の電話がかかってきて、怒りがこみ上げてきたときの僕の決めゼリフは

「お世話になってないっ!」に決めてます。
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2006年08月18日

未だに理解できません

今年の春前でした。鍵の取換えを依頼されました。事務所の鍵でした。

現場まで行きました。一階建てのうなぎの寝床のような長細い事務所でした。事務所というより小さな倉庫のようでした。

その事務所には3つの扉がついておりました。その3つの扉は道路に面した長い面に等間隔についていました。鍵は全てインテグラル錠でした。

その方は、3つの扉の真ん中の扉の鍵を換えてほしいとおっしゃられました。右と左の扉はすでに開いておりました。

いざ、鍵を換えようと真ん中の扉を開けてもらいました。倉庫のような事務所の中がいやがうえにも見えました。

すると、です。理解ができない光景が目に飛び込んできました。

その事務所は、単純に「部屋」でした。長細い「部屋」でした。それらしいオフィス用品はありましたが、長方形の部屋、何の仕切りもない長方形の空間でした。

3つの扉には何の意味があったのか、未だに理解できません。
posted by ロン at 23:15| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月17日

最悪の仕事は最悪のタイミングでやってくる

カギをあける際の工具、解錠工具はいくつかの種類があります。

ピッキングに代表されるピック、車の解錠で使われるオープニングツール(差金みたいな物)など、現場の状況、シリンダーの種類によってカギ屋は解錠工具を選択します。

特定のシリンダーに使用される専用の解錠工具に、トライアウトキーというものがあります。その鍵穴に入るキーが予め用意されており、そのどれかで解錠できるというものです。

トライアウトキーを使用する代表的なものに、米国GM社の6カットシリンダーがあります。このトライアウトキーを使って解錠をした事がありました。最悪の仕事は最悪のタイミングでやってくる、ということを実感した仕事でした。

2月の雨の降っている日でした。

その日は特に寒く、又、僕は風邪気味だったのでスタッフに店を任せて家に帰ろうとしていました。

若い夫婦が「インロックしてしまいました。すぐそこなんですけれど・・」と店にやってきました。店から近い場所でのインロック解錠ということで「すぐに伺います。ご安心ください」と返事をしました。普通の国産車なら短時間で解錠ができます。その夫婦は安心した様子で「ありがとうございます」といってくれました。

まず、車種の確認のためにお車まで案内していただきました。外車でした。いかつい車でした。カギはGMの6カットシリンダーでした。

「しまった!」と思いました。

鍵穴にトライアウトキーを1つずつ挿して、試していくという作業をするだけですが、それにかかる時間は、最初の1個目で解錠できることもあれば、最後の1個で解錠する場合もあります。又、GMの6カットシリンダーに関しては、トライアウトキーでの解錠率は100%ではありません。解錠できないこともあります。つまり、持久戦になる可能性があるのです。

特に寒い上に雨が降っており、風邪気味だったので、僕は悪いほう悪いほうに考えてしまいました。大体、悪いことは重なるものなのです。

予感は当たりました。持久戦になりました。

雨に降られて、時間が経つにつれ熱が上がっていくのがわかりました。鼻の奥とのどが痛くなり、どんどん腫れてくるのがわかりました。だんだん息苦しくなってきました。こんなときはなぜか雨も強くなってくるのです。一通りのキーを試しましたが解錠できずに、2回目のトライをしました。もう完全に僕はびしょぬれでした。

結局、2回目のトライの何十本目かで解錠はできましたが40分かかりました。どうして1回目で解錠できなかったのか、ということを考える余裕もありませんでした。ただ「悪いことは重なる」という自信がますますつきました。

次の日、お医者さんに診てもらいました。

風邪ではなくインフルエンザでした。僕は「ホレ見てみぃ!ただの風邪じゃなかったやろが!思った通りや!また勝った!!」と、心ではガッツポーズをしたまま自信満々で4日間寝込みました。

僕は、暗い人間でしょうか?
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2006年08月16日

母が「刺客」を送り込んできた日

僕は今、三十代後半です。独身です。

いい加減この年になると、母親は顔を会わせるたびに「早く結婚せい」といってきます。

別に結婚したくない訳ではありませんが、仕事の性質上、出会いがありません。それを理解してくれないので、話がかみ合いません。いくら説明しても「努力せい!」といいます。努力の問題ではありません。

2年程前の秋だったと思います。いつものように「早く結婚せい。早く出て行け」と僕を責めておりました。僕は「別に結婚したくない訳ちゃうけど、出会いがあらへんねん。俺、別にホモちゃうし」と答えると、母は少し上目遣いで「違うかったんかいな」とおぬかしになられ、少し安心したようでした。僕をホモだと思っていたようです。本当に話がかみあいません。

僕がホモではない、と母が確信した日から数日が経ちました。

母は「今日、友達と、友達の友達があんたのところに行くから、何かあったら安くしといたって」といってきました。母の友達はよく家に出入りをしており顔を覚えているので、店に来ても慌てることはないと、気にも留めておりませんでした。それが間違いでした。

その日は、朝からお客様がぽつぽつとお越しになられておりました。また、僕がお世話になっている錠前師のJさんとその奥さんも遊びに来られてました。

母の友達と、その友達(Oさんとします)が店に来られたので、僕は「おはようございます」と挨拶をしました。Oさんとは、初対面でした。

いきなりOさんは話を切り出しました。
「あなたにぴったりの女性を紹介するように、あなたのお母さんに頼まれたの。少しお時間よろしいかしら?」

母は僕の嫁探しのために、Oさんという「刺客」を送り込んできたのです。

僕は、お客様の接客中だったのですが、Oさんにとってはそんなことは関係ありません。

「あなた、どんなひとがお好みなの?年上?年下?やっぱり若い方がいいわよねぇ?私の息子も若い方がいいといってましたものねぇ。やっぱり二十代の方がいいわよねぇ。背は高い人?低い人?どちらがお好み?」と、決壊したダムの如く、かなり大きな声で僕に詰め寄ってきました。僕は一転してさらし者になりました。Oさんは、何か別の職業をしているのかなと思わせるような口調でした。僕にはそのとき人権はありませんでした。

こんな調子で、Oさんの路上での呼び込みのような話は延々と続きました。Oさんの僕に対する質問が真剣であればあるほど、お客さんもJさんもJさんの奥さんも笑いをこらえるのが必死のようでした。笑いをこらえて肩が震えていました。

この「刺客」の勢いなら、変なことを言ってしまうと、僕のお嫁さんが僕の知らないところで決まってしまいそうでした。

重要なことには何も答えなかったのですが、何も答えなければOさんに対して失礼だと思い、「どんな髪型が好みなの?長い人?ポニーテール?」とのどうでもいい質問に「髪型は別に・・ないですが・・ポニーテールより・・少し短い人が・・」と、うかつにも答えてしまいました。本当にどうでもいい嫁の条件でした。

「よしっ、わかった!」とOさんが満足そうにお帰りになったところを見届けると、Jさんと奥さんは何もいわず、にやっと薄ら笑いを浮かべて帰っていかれました。Oさんは何がわかったのか、僕にはわかりませんでした。

それから数週間がたって、一通の釣書が送られてきました。

少し髪の短い、年下の女性でした。母は「どや?」と勝ち誇ったように僕に見せてきました。

こんなことがあったからではないのですが、僕には今、彼女がいます(釣書の方とは違います)。僕に彼女ができてから、母の精神状態は安定しております。

でも、もし・・

不吉なことは考えないようにしましょう。
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2006年08月15日

同級生の親

まだ、桜が咲く前の肌寒い頃だったと思います。

僕の店に、僕の両親と同じくらいの年齢のご夫婦がお見えになり、ある物の修理をうけたまわりました。修理には時間がかかるものだったので、お預かりして、引き換えに伝票をお渡しすることになりました。

伝票にお名前と電話番号をお書きいただき、控えの伝票をお渡しするとき、見覚えのある、珍しいお名前が書かれているのに気がつきました。僕の高校時代の同級生の名字でした。

「ぶしつけで失礼ですが、娘さん、○○高校に行っていませんでしたか?」とお聞きしました。僕は、この名字を持つ同級生(Mさんとします)の あること が本当かどうか知りたかったのです。

「あなた、娘を知っているの?どっちの子?上の子?下の子?」
このご夫婦には、2人のお嬢さんがいらっしゃって、両方とも僕の卒業した高校に行っていました。

「僕は今、○○才です」
「あぁ。あなた、Mちゃんのお友達だったのね」

「お亡くなりになられたと伺ったのですが・・」

ここから、Mさんの話になりました。
「Mちゃんは、高校を卒業してから短大に行って、社会にでてから本当に頑張っていたのよ。そこで好きな人ができて、少し化粧をするようになったの。本当にきれいになったのよ。かわいかったのよ・・」

僕も知っている同級生の名前を、お母さんは一生懸命に思い出しながら、僕との会話を楽しもうとしていました。お母さんの知らないMさんが過ごした高校時代の思い出のかけらを拾い集めるように・・。

ひとしきりお話をしました。Mさんが結婚をして子供を産んだ直後に亡くなったという話になると、すごく明るくお話になっていたお母さんは、突然大粒の涙を流し、今までの声が嗚咽に変わりました。

つらいことを思い出させて申し訳なかったと思いましたが、お母さんが本当に愛情を込めてMさんを育てたということが、ひしひしと伝わってきました。ご主人は「もういい」といって、そっとお母さんを抱き寄せました。

母親の瞳には、その子がそのまま成長せずに時が止まったように、幼くて一番かわいかった時の姿のまま映っている、ということを聞いたことがあります。母親にとって子供は、いつまでたっても子供なのです。

Mさんのお母さんの姿を見ながら、僕の母の瞳には僕はどのように映っているのだろうと思うと、僕も涙が出てきました。

「生きている」ことが、最低限の、そして最大の親孝行だと気付くきっかけを与えてくれた出会いでした。
「先立つ不幸」の重さがストレートに僕の胸に刻み込まれた出会いでした。

今日はお盆なので、生きることと死について考えてみました。
posted by ロン at 22:07| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月12日

「カギ屋」である僕の楽しみ

カギ屋である僕には楽しみがあります。1つは、ピッキングでカギをあけること、もう1つは廃盤になったような古いカギ(もう手に入れることができない錠前など)を見つけ出して、手に入れることです。

僕は、今までに3件の廃業したカギ屋さんの在庫を引き取りました。そのうちの1件の話をします。

その店はオーナーが亡くなり、6年間在庫をおいておいて、僕の店にその方の娘さんが偶然僕の店に来たときに「在庫を引き取ってほしい」とのお話がありました。昔からの筋金入りのカギ屋さんでした。倉庫に積みきれないほどの在庫があり、マシンなども手入れが行き届いていて本当にきれいな状態でした。FUKIのブランクキー(H番)は、その方がカギ屋を廃業する前までの分は全てそろっていました。その方のカギに対する愛情が伝わってきました。

そのカギ類を引き取るために、僕のバンで8回その方の家と店を往復しました。すごい量でした。

僕は、倉庫から「宝物」を見つけるたびに「ウオー!」「ヒエー!「なんじゃコリャー!」などの悲鳴を上げていました。本当に博物館の展示品を運び出すような心境でした。

ほとんどは、ピッキングに弱い例のメーカの例のカギでしたが、そのメーカー以外の錠前は今まで見たことがないものも多く、ほぼ揃っていました。量もすごかったです。

僕がカギ屋になって、一番興奮したときでした。その夜はわくわくして眠れませんでした。

次の日から、カギの仕分けが始まりました。

ピッキングに弱い例のカギは、分解して部品取りをしました。
その他は、メーカーごとに仕分けをしました。

僕は仕分けをした後、誰かに見せたくて取引している問屋さんに連絡しました。

問屋さんは「こんなカギ、もう廃盤で手に入りませんよ。うわっ、こんなカギはじめてみた!これはもうつぶれたメーカーのカギで、しかも同一組みとは・・・」など、鑑定団みたいに鑑定をしてくれました。自分がほめられているようでした。

全てのことに通じるのですが、他人にないものを手に入れたときに、人間は喜びを感じるものだろうと思いました。

少し、コレクター、マニア、オタクと言われる方々の心境がわかった瞬間でした。

僕はこのことがあって以来、時間さえあれば金物屋さんなどを回って、珍しいカギを物色しに行っています。
posted by ロン at 23:21| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月11日

「お金持ち」のお客様

最近では「お金持ち」の生活を紹介する番組がありますが、僕は今までに「お金持ち」といわれる方のカギ交換に、二回いったことがあります。

一件目は、お医者様でした。店に来られたのは奥さんだと思います。

「防犯性の高いカギに取り換えてほしい」との要望でしたので、まず始めに、今使われているキーを見せていただき、メーカーの特定をして、大まかですが錠前の型を推測いたしました。典型的なプッシュプルドアの2個同一のカギでした。

「とにかく、開けにくいカギにして下さい」とおっしゃられるので、ピッキング、破壊にはもちろん、スペアキーが作りにくい外国製のカギをつけることになりました。

その方のお宅に伺って、扉を見たとき「あれ?僕の予測違いかな?」と思いました。明らかにメーカーも違いますし、ドアの形も違いました。

その方にお伺いいたしますと「ここじゃないの。ついてきてください」といわれました。

ものすごい家でした。本当に迷うような家でした。その家の中庭に面するカギの取換えでした。大まかに言うと、馬鹿でかい中庭が四方を建物で囲まれているようでした。その中庭は、もちろん本物の芝生でした。

僕は、緊張のあまりトイレに行きたくなり、トイレをお借りしましたが、もとに戻ってくることができなくて、その方にトイレまで迎えに来てもらいました。本当に恥ずかしかったです。


二件目は、見るからに普通の女性でした。

「カギを無くしてしまったので、気持ち悪いから換えてください」との事でした。できるだけ早くとのことなので、とりあえずそのお宅に伺いました。

自動門扉が開くと、曲がりくねった車道があり、その方の敷地には、4件の建物がありました。どれも風格、歴史のあるかなりいいつくりでした。

僕は、地元でずっと住んでおりますが、こんなところがあったとは知りませんでした。

四件のうちの一件の裏口の扉のカギを取り換えました。

お金持ちには定番の「高級な犬」が、僕の仕事にお構いなくじゃれてきて、相手にしなければすねていました。僕の顔はよだれだらけになりました。

これらの仕事を通じて学んだことがあります。

「お金持ち」には、共通した「合言葉」があるということです。

それは「安くして!」という言葉です。
posted by ロン at 22:31| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月07日

監禁男について

やっぱり、ということが起こりました。防犯のための道具が悪用されました。

ここ最近世間を騒がせている「監禁男」です。

「監禁男」の報道で、「監禁男」のマンションの部屋の扉が何回も写されました。ここが犯人の部屋ですと大々的に報道されました。

この扉を報道で御覧になられた方は多々いらっしゃると思います。

この扉には、通常の公団錠のほかに補助錠が取り付けられておりました。この補助錠は、外からしか開閉ができません。内側からは操作できないものです。監禁をするにはもってこいの道具です。

この事件は、防犯のための道具が悪用された典型的な事件です。防犯の道具は、使い方によっては、新たな犯罪を起こしうるのです。ストーカー対策のためのスプレーをストレス解消のために撒いたり、スタンガンを悪用したり、この類の事件は、最近特に多くなったように思います。

これらの事件に共通することは、全て、「甘やかされた犯人」の「異常欲望」のために使用されているということです。「やむにやまれずに罪を犯した」というより「自己の欲望達成」のためです。

通常、補助錠をつけるということは、空き巣から家を守るためがほとんどです。スプレーや、スタンガンは自分を異常者から身を守るためです。他人を支配したり、傷つけたりと言う目的に販売されていません。

特に外側からしか操作できない補助錠などは、上記の目的のほかに、徘徊老人が外にでないようになどと、やむにやまれない事情で依頼に来られる方が多いです。自己の欲望を満たすために、それらの切実な思いを裏切るような使用方法により、防犯の道具を冒涜しているのです。

「監禁男」について、心がどうとか環境がどうとか僕にはよくわかりません。ただ個人的には、このような異常犯罪がこれ以上発生しないようにということと、異常犯罪を犯したものには厳罰を下してほしいという希望があるのみです。
posted by ロン at 22:21| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月06日

ピッキングに8時間

僕がまだサラリーマンのときでした。

僕はその当時、平日サラリーマン、休日カギ屋という2足のわらじを履いていました。

朝早く、ある家の娘さんが、カギをなくして家に入れないということで、早速現場に急行しました。

娘さんは、両親が旅行でいないので家に入れない、自分は今からアルバイトに行くというので、朝帰りのまま直接仕事場に向かわれました。

その家は、玄関が装飾錠で2ロック、裏口がレバーハンドル錠でした。

まずは玄関をピッキングで。

2つのうち1つは開きましたがもう1つが開きません。僕はそのときはまだ駆け出しで、ピッキング以外で解錠したことがありませんでした。また、玄関の扉に取り付けてある装飾錠の取換え品も在庫がなかったので、ひたすらピッキングを試みていました。

ピッキングを始めてから1時間、どうしても開かないので、玄関をあきらめ勝手口のピッキングを開始いたしました。

鍵穴はすぐに横向いて、解錠の手ごたえもあるのですが、開きません。

何度か玄関と勝手口を往復して、ずっと頑張っていました。しかし開きません。

何時間もピッキングをしていたので、その家の隣の方が不審そうに僕をじっと見つめていました。僕はしどろもどろになりながら、怪しいものではないということを必死に伝えました。考えてみれば、依頼者、立会人がいなくて見知らぬ家で僕が一人でピッキングをしているので、疑われても仕方ありませんでした。

結局、7時間ほどピッキングをしましたがだめでした。

僕は、知り合いの錠前技師(Y氏)に応援を頼みました。

Y氏が到着して、もう一度ピッキングチャレンジしました。最後のあがきです。僕の右手の人差し指はもう肉刺がつぶれてました。

すると、です。

なんと今まで開かなかった玄関のカギが、開いたのです。

結局、8時間かかって何とか開き、10分ほどしてその娘さんが帰って来られました。勝手口に確認をさせていただいたら、勝手口は内側からかけるカギがあったので、ピッキングをしても無駄だということがわかりました。

娘さんからお代金をもらい、半分をY氏に渡し、ひりひりする指のまま車で帰路につきました。

よく考えてみれば、もし、解錠がうまくいったとしても、娘さんが帰るまで残っておかなくてはいけなかったのです(カギを開けたまま離れることはできないですよね)。

最初の種々の確認の大切さを痛感した仕事でした。
posted by ロン at 00:09| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | こんな仕事をしました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月05日

カギのメンテナンスについて

カギのメンテナンスについてお話いたします。

カギは、時間を経ると回りにくくなったり、抜き差しがスムーズにいかなくなることがあります。特にピッキングに強い精密なカギは要注意です。

一般には、カギが回りにくくなるのは、ゴミが鍵穴に入ることが考えられます。ゴミといっても、粉塵が鍵穴に入って回りにくくなります。また、長年カギを使ってますと、カギとキーの摩擦による磨耗で、かみあわせが悪くなり、回りにくくなります(カギとキーが合わなくなるのです)。

ゴミ、粉塵は鍵穴に入って回りにくくなることについては、いろいろな対処方法があります。キーを鉛筆でなぞったり、潤滑剤を注入したりとありますが、僕は、一度脱脂洗浄剤を注入した後に、粉体ボロンをふります(現在では、両方一緒になっている便利な鍵穴洗浄剤があります)。大体一発で、カギはよく回るようになります。

長年カギを使用していて、回りにくくなったものについては(潤滑剤で回ることもありますが)、なかなかもとには戻りません。この場合はカギを取り替えるのが一番だと思います。

余談ですが、車のメーカーの代表的なカギが、長年使っていると回りにくくなることが多いです(薄いからです)。また、住宅用のカギは、キーによって取り付けられた年代がわかるものがあります。かなり古いものだと、お客様には取換えをお勧めいたします(このまま使用されていると、ある日突然、カギが回らなくなる可能性があるからです)。

これ以外にも、キーがやわらかい材質でできていて、少しのダメージ(キーの先がダメージを受ける)で、鍵穴に差しにくくなるものがあります(防犯性は高い外国製のカギですが)。


カギによって、カギのメンテナンスは異なります。もし今、家のカギが回りにくくなっていたり、抜き差しがスムーズでない場合は、すぐにカギ屋さんに相談してみてください。無理に使っていると、本当に回らなくなったり、キーが折れたり、また、カギによっては、市販の潤滑剤で対応ができないものもありますので、間違った対処をすると、後々大変なことになります。

カギ屋さんは、お客様の声を心からお待ちしております。
posted by ロン at 00:16| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ カギ屋 カギ業界の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月03日

カギ屋になりたい方へ

お客様からよく聞かれる質問があります。

「カギ屋さんになるには、免許がいるんでしょう?」
「カギ屋さんは資格がいるんでしょう?」

お客様は、カギ屋になるためには、何か特別な資格がなければならないと思ってられる方が大勢いらっしゃる、というより、ほとんど全てがカギ屋は免許がなければならないとなれないと思っていらっしゃるようです。

社会の安全、犯罪を防止するという重要な社会的使命を背負う「カギ屋」には、その技術を操る責任がありますので、お客様がそう考えられるのは当然のことだと思います。

結論を言えば、法律、条例の上では、カギ屋には何の制限もなく、極端に言えば技術がなくても、度胸と資金さえあれば「カギ屋の看板を揚げる」ことはできます(一部、免許制にするという動きは、地方公共団体によってはあるようですが)。

でも、「カギ屋の看板を揚げる」ということと、「カギ屋になる」ということは、全く異なります。

確かに、「カギ屋の看板を揚げる」ことについては、法律上では何の制限もなく、各関係機関の許可、承認、届出などは必要なく、老若男女、年齢制限はありません。ある意味では、露天商をするよりもはるかに自由です。

ただ、カギ屋を職業として考える場合、絶対とは言いませんが必要な条件があります。それは「カギへの興味」「カギが好き」ということです。

カギの技術、つまり錠前技術は、興味がなければ上達しません(これはあらゆる職業にもいえることですが)。それに加えて、技術を持ったとしてもそれを職業として利益を上げるためには、宣伝、営業トークなど、技術とは別に相当の投資、努力を積まなければなりません。結果は急に出るものではなく、かなりの忍耐力を必要とします。

ピッキング犯罪が急増して、カギ屋が乱立しましたが、廃業するカギ屋が急激に増えています。又、合鍵作製などは、ホームセンターなどでも増えてきていますので、現在、カギ屋の供給過剰だといえます。

これらのことを踏まえた上で、なおかつ「カギに興味がある」「カギ屋になりたい」と思う方のみ、カギ屋を職業として成功する可能性があります。

ただ、「なんとなく」「やることがないから」と思うのなら、カギ屋にはならないほうがいいと思います。

たまたま、開業場所がよければ成功するかも知れません。それはそれでいいことですが、お客様の要望に応えられるだけの技術を習得するには、やはり「カギへの興味」「カギが好き」という心が必要なのです。

僕を、カギ屋として支えたものは(まだ若輩者ですが)、やる気 体力 根性などではなく「カギへの興味」でした。

誰でも看板を揚げることのできる「カギ屋」は、「カギ屋」になった後に試練が待っています。その試練は「カギへの興味」「カギが好き」という気持ちによってのみ超えることができると思います。
posted by ロン at 00:41| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ カギ屋 カギ業界の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月01日

僕が泣いて怒ったお客様

カギ屋という仕事は、ただ単に「モノ」を売るだけではなく、「技術」と「安心」を提供するため、他の販売、サービス業より繊細な接客技術を必要とします。お客様とのコミュニケーションの中でお客様の本心を見抜き、要望にできるだけ沿うものを提案します(カギ屋のみが、特別な接客技術が必要だといえば、他の販売、サービス業に対して失礼かも知れませんが、特に「セキュリティ」を扱うという面で、僕は異なると思っています)。

もうずいぶん前のことですが、夏前の日曜日だったと思います。

老夫婦でした。旦那様がカギについていろいろ聞いてこられました。ご要望は防犯性の高いカギを御自分で取り付けられたいということでした。

まず錠前の種類を確認し、それに適合する防犯性の高いカギを何種類か提案いたしました。その当時、僕の店では6種類のカギ(防犯性の高いシリンダー)を扱っておりました。

一つ一つの説明がおわり、ある外国製のシリンダーを買いたいということになりました。そのカギはオーナー登録制になっており、お名前、住所などを記入してそのメーカーに登録するというものでした(通常の防犯性<耐ピッキング、耐破錠>に加えて、オーナーでなければスペアキーを作ることができないというセキュリティを備えたものでした)。

僕は、「こちらにご記入ください。取り付けをされるご住所とお名前などです。お手数ですが。販売店として当店でも1枚お預かりいたします」と申し上げましたら、今まで何も発言されなかった御婦人が突然
「あなたに、住所を教えなくちゃいけないの?」と明らかに嫌悪感を抱いた表情で僕に言ってきました。

もし、僕以外のカギ屋なら、もう一回丁寧に御説明するか、お断りするかで済んだと思いますが、僕はちがいました。

「お客様、確かに今日始めてお会いしましたので、信用も何もないと思いますが、こちらが住所をお聞きすることさえできないほど信用されないのでしたら、僕の店で買わないで下さい。僕を始めから疑っているのなら、もう二度と来ないで下さい。どんな御事情があるか存じませんが、人間としての最低限のマナーを守れない方にはこちらで買っていただかなくても結構です。何よりも、あまりにも僕に対して失礼です。僕に対して謝ってください。」といってしまいました(実際には、こんなきれいな言葉ではありませんでした。涙も流れていました)。

このことについては僕がおかしいのでしょうか?人格を否定されたと思うことは、僕の被害妄想でしょうか?僕の我慢が足りなかったのでしょうか?それとも怒るような事ではないのでしょうか?

確かに僕も言いおわった後でかなり後悔しましたが、僕にも感情があります。あまりにもむき出しにしてしまったので、横で全てを見ていたスタッフもかなり怯えていました。

しばらく沈黙が続いた後、旦那様が
「申し訳ございませんでした」
と深々と頭を下げられました。予想外でした(この接客で消費者センターに相談されるかと思ったぐらいでしたから)。

後出しかも知れませんが、こんな若輩者の言葉で、長い人生を重ねてこられた方に頭を下げさせてしまったことが、僕はものすごくつらかったです。この方にもプライドもあるだろうにと思いながら、自分の吐いた言葉が毒のようにしばらく僕を悩ませ続けました。

この話の結末は、少し意外でした。

結局、老夫婦はその当日に一つその外国製のカギを買って行かれ、後日(1ヶ月後くらいだったと思います)にも、もう一つ同種のカギを買っていかれました(もちろん登録書に御記入されました)。

感情をむき出しにした僕の言葉を、わずか1%ほどの僕の正義を、この老夫婦は広い懐で包んでくださったと思っています。

コミュニケーションの難しさと、コミュニケーションの多彩さを考えさせられた出来事でした。
posted by ロン at 22:09| 上海 | Comment(1) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする