2006年07月31日

タウンページの効用

カギ屋になって、売り上げを上げるために一番苦労したのは「知名度」を上げることです。僕はカギ屋を始めた当初は無店舗だったので、宣伝方法に関しては最重要課題でした。

カギ屋になりたての頃、僕はタウンページ、ホームページ、ポスティング、又、知人からの紹介(紹介手数料を支払う)などいろいろチャレンジいたしました。

カギや錠前技術を扱う仕事の性質上、もっとも効果的だと思われる宣伝方法は、
@地域に密着している 
A誰でもアクセスの方法を知っている 
B信用がある 
Cどこでもアクセスできる 
などの理由で「タウンページ」が一番だと思われます。

でも真相はどうでしょう?

僕は店を出してから「タウンページ」に広告はうっておりません(一行の名前と住所、電話番号が載っているだけで、広告は打っておりません)。

店を構えていない頃は、名刺大の大きさの広告を出しておりましたが、一年でタウンページを頼ってきたお客様は、ほんの数名でした。

一年だけでタウンページに広告を出すことをやめたので、あまりえらそうにいうことはできませんが、他のカギ屋に聞くとほとんどが
「タウンページに出すのなら、カギのカテゴリーの一番前に、一ページ出すこと。それが一番効率的だ」といいます。

宣伝は、必要とされる場所、時間にいかに目立つか、が勝負になります。「露出度」なのです。店を構えるにしても、ただ安い場所に出すだけでは売り上げは上がりません。人がたくさん集まるところ、人目につくところ、その業種の必要とされる場所、をいかに確保するかが売り上げを左右します。
「目立つところに、大きく出す」は、タウンページでも店舗でも、大きな投資となります。投資した広告料、家賃の見返りがあるかないかは、実際にやってみないと結果がでないです。本当に博打です。

最近の動向を見てますと(カギ屋によって様々ですが)、タウンページよりもインターネットからの依頼が多くなったそうです(僕の店はホームページを持っておりませんので、比較はできません)。もっとも、緊急にインターネット検索できないような状況(インロック、キー紛失など)では、タウンページが有用ではあるとのことですが。

安易に、目立つ場所に大きく出すだけでは、売り上げをとることが難しくなりました。錠前技術以外に宣伝技術が求められる時代になったと同時に、インターネットの普及により、宣伝技術が卓越していれば、投資額が少なくても効率のよいビジネスができるようになったということでしょうか。

ただ、宣伝技術のみ卓越し、錠前技術のない「衣のみの天麩羅」のようなカギ屋につかまらないように、消費者にも「見抜く技術」が求められるようになりました。

消費者の「見抜く技術」の重要さは、カギ業界に対してのみではなく、社会全体のあらゆる業界に対していえることですね。
posted by ロン at 23:59| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ カギ屋 カギ業界の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月29日

子供だまし

2月のはじめくらいでした。

一人の男子高校生が「この合鍵作ってください」と一本のカギを持ってきました。体育会系の礼儀正しい好青年でした。

途中から真っ二つに折れていて、合鍵はできませんでした(もちろんコードマシンで作製することはできましたが)。

「このカギを作ることはできません。折れていないカギをお持ちいただければすぐにでも作れますが」と伝えると
「形が似てればいいんです。もうこれしかないんです。借りてきたらばれてしまいます」と何か訳ありでした。

僕もカギ屋ですから、疑わしいものは合鍵を作ることはできません。でも高校生が犯罪に関わったりすることは無いだろう、いや、最近は犯罪が低年齢化しているし、未成年だし、もしかして彼がどえらいことをやってしまったら僕も新聞に載って有名人になってしまうかも、この高校生と社会的に心中するつもりは・・・などと妄想をふくらましておりましたら、
「これは部室のカギです。これで、何回目になるかわからないほどカギをおってしもて、今度監督に見つかってしまったら殺される。一応、形だけは整えてカギを用意して、あわなかっても卒業まではシラを切り通す。カギ屋さんには迷惑をおかけいたしませんので」というのです。

その高校生は真剣な表情で語ってました。あまりにも必死な表情と内容が内容なので僕は何か愛おしさを感じました。

「じゃあこれ作るから、後はうまくやりいや。金はいらんからがんばってな!どうしてもシラを切りとおされへんかったら、そのときはまた来てな」と、僕の店にあった同型のキーの合鍵を作りました。

高校生は「ありがとうございました!」と最後まで礼儀正しく深く頭を下げて帰って行きました。僕は笑いながら見送りました。

どうしようもない状況への反応は個人個人によって異なりますが、この高校生はあまりにも実直で不器用で純粋でした。

僕は、高校時代を思い出しながら(社会に出ても純粋さを忘れんとってほしい)と心でエールを送りました。

もう卒業して今はどこで何をしているかはわかりませんが、また笑わせに来てほしいです。
posted by ロン at 22:25| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月28日

ブランクキーは売れません!

カギ屋にはお客様の要望でもお応えできないものがあります。そのうちの一つにブランクキー(合鍵のベース)の販売です。ブランクキーは、犯罪に使用される恐れがあるからです。

その方は、見るからにあちら方面の方でした。

一本の車のキーを取り出して
「このカギの、まだ加工してへんカギあるか?」と聞いてきました。

もちろん、そのカギは僕の店に在庫はありますが、ブランクキーをお売りすることはできません。彼のお目当てのそのブランクキーがかかっている場所を僕の体で隠して
「これは、何のカギですか?初めて見るカギですね。」と、とぼけながらそのブランクキーをすばやく胸のポケットに隠しました。

「ポルシェや」と彼がいうまでに、もうすでにそのブランクキーは彼の視界にはありませんでした。

「ポルシェのカギはうちでは扱っておりません。残念ですが」と、話を終わらせようとすると
「似たようなやつでええねん。そこにあるやつとちがうんかい!」と指差しました。うかつにも、隠し損ねたポルシェのブランクキーが一本引っ掛かっておりました。

僕は、冷静を装って
「これは、トヨタのカギです」ととぼけました。すると彼は
「これは?これは?・・・」と手当たり次第にボードにかかっているブランクキーを指差し、僕に聞いてきました。
その度ごとに「ダイハツです。スバルです。ミツビシです。」と答えました。今考えたら、かなりスリルのあることをしていました。

彼は、もどかしかったからか「ポルシェのカギ、取り寄せることできひんのかい!」といってきました。

僕は「取り寄せることはできますが、カギ屋でない方にブランクキーのままお売りすることはできません。もしお客様が同業の方ならお分けすることもありますが」と申し上げましたら
「もし俺がカギ屋やったら売ってくれるんかい!」としつこく粘ってきました。僕は正直に
「もしお客様がカギ屋さんでしたら、問屋さんから買ってください。この店は、一般の方にブランクキーをお売りすることは倫理上いたしません」と切り替えしました。

結局、彼は僕をにらんで帰っていきました。

このお客さんを機に、ブランクキーを売ってくれというお客さんへの対応が楽になりました。彼をかわしたのですから僕も少し自信がつきました。

でもやはり、いつまでたっても苦手なお客さんは苦手です。もうこれ以上、彼と同業の方が来られませんように、と祈るばかりでした。
posted by ロン at 23:11| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月26日

防犯性が高すぎるカギ

「とにかく、防犯性の高いカギに取り換えてください」

中年女性のお客様でした。空き巣に入られたか、ただ防犯性の高いカギに換えるかは、その時はわかりませんでした。

「とにかく、防犯性の高いカギ、簡単に開かないカギにかえてほしい」と繰り返しておっしゃられたので、錠前のメーカーと型を特定するために、お持ちのキーを見せていただきました。

うわさには聞いていた、ICチップ付のあのカギでした。僕もその時初めてそのカギにお目にかかりました。

「お客さん、これ以上のカギは、うちでは扱っておりません。このカギ自体の取り扱いもいたしておりません。これほど防犯性の高いカギはありませんよ」と申し上げました。詳しくお聞きすると、その中年女性は、不動産業を営んでいる方で、お得意さんがカギの取換えの希望をされているとのことでした。ICチップ付のそのカギは、そのお得意さんの扉のカギでした。お得意さんが、なぜこれほどのカギを新しいカギに取り換えたいか、という話はここでは伏せておきます(その方の話は僕の理解を超えるものだったことだけは付け加えておきます)。

そのお得意さんはかなりのお金持ちらしく、安全なカギがつくのであればお金はいくらでも支払うというものでした。

僕はさっきも申し上げたとおり、ICチップ付のカギなどもっているはずもなく、ましてそれ以上の防犯性を持つカギなどは想像もつきません。

僕は、一旦お断りをいたしましたが、「安心させるだけでいい」と言うので「一切ノークレーム」という条件で、いつも頼りにしているカギ屋さんに説明をして、補助錠をつけるということになりました。

結局は、もともとついていたカギより防犯性の劣るカギ(それでも防犯性はかなり高いカギです)を追加するという工事になりました。もちろん適正価格での工事でした。

クレームはでておりませんので、おそらく満足いただけたと思うのですが・・・
posted by ロン at 20:14| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

外国製のカギについて

外国製のカギについてお話いたします。

僕の店も以前は外国製のカギを扱っておりました。

外国製のカギは、日本製のカギとセキュリティの考え方が違います。カギそのものの防犯性能(耐ピッキング性能、耐破壊性能など)はもちろんですが、それ以上のセキュリティを追求しています。具体的には、キーコピーができない、もしくは極めてキーコピーがしにくくなっています。第三者によってのキーを使用しての犯罪の防止も視野に入れているのです。

これらの性能は、カギ自身が持つ防犯性能プラスアルファになるかと思いますが、あまりにも防犯性能が高すぎると、一旦何かが起こるとかなり不便になります。キーを追加しようとしても容易に追加できないのです。もちろんこれらのカギに交換したときは、お客様は「(キーが容易に追加できないことに関しても)さすが外国製のカギだけあってセキュリティが高い」とおっしゃられるのですが・・・

僕は外国製のカギが嫌いです。別に国粋主義ではありません。カギに関していえば、防犯性、セキュリティの高さにに伴って利便性が反比例します。合鍵1本作るのに大げさな手続きをとらなくてはいけないのが、なにかわざとらしいと思うのです。キーをなくしたりとられたりすると、面倒な手続きをして合鍵を作らねばなりません。というより、合鍵を作ることに面倒な手続きがある上に、時間もかかるのでお客様はキーを紛失されると、取換えする事が多いです。

心理学に<認知的不協和理論>という言葉があります。かいつまんで言えば「苦労して得た結果に価値付けをしたくなる」「高い代償を払った食べ物はきっと美味しい」というものです。カギに関して言えば「これだけキー一本追加にも労力を使うのだから、きっとすばらしいカギに違いない」というところでしょうか。

日本製でも、同じようなシステムをとっているカギが数種類あり、キーを作るために僕の店に来られたりしますが、結局はカードやナンバーを紛失されて作製ができなくて交換するケースが多々あります。確かにお客様の自己責任ですが・・

僕は、合鍵が作りにくいというセキュリティは、余計なセキュリティだと思います。合鍵が作りにくいということが防犯性が高いということにはなりません。確かにキーの本数を管理すべき理由がある場合は、これらのカギは願ってもないよいカギになります。しかし犯罪に関して言えば、キーを盗んだ第三者が合鍵をわざわざ作って犯罪に使うでしょうか?そんなことよりも盗んだキーで扉を開けると考えるほうがよほど自然です。

まだ、西洋に対する崇拝が残っているのでしょうか?もし、同じようにカギ自身の防犯性が高くて、キーコピーに関してセキュリティが高くても、アジアの製品であれば、はたして日本人は買うのでしょうか?

結局は、キーを紛失したり盗まれたりした場合、ほとんどがカギ交換をされます。紛失したキーを作るのみにしても、外国製のカギは不便なのです。

外国製のカギ(日本製のカギでも、合鍵を作りにくいシステムにしているものを含む)を取り付けているお客様は、便利さを犠牲にしてほとんど起こりえない犯罪に対して過剰に反応している、と考えるのは僕だけでしょうか?

現在、僕の店では外国製のカギは扱っておりません。
posted by ロン at 00:33| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(1) | カギ カギ屋 カギ業界の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月24日

最後に一言

ある雨の日曜日でした。

若い夫婦が、防犯性の高いカギに取り換えたいとのことで、僕の店に来られました。ご丁寧に錠前に書かれてあるメーカーと、刻印を予め調べてこられてました。

残念ながら、その錠前に適合するカギはありませんでした。というよりその錠前の刻印自体初めて聞くものだったので、後日こちらからお調べして連絡することになりました。

お名前とお電話番号をお聞きすると
「電話番号は重要情報やから教えられへん」とおっしゃられました。

以下は、僕がそのご夫婦にお伝えした言葉です。

「わかりました。確かに電話番号は個人情報ですのでお客様のお気持ちもわかります。お客様の錠前に適合するカギのことは必ずお調べいたします。でも心外ですね。お客様にカギのことをお調べしてお伝えようとしても、電話番号を教えていただけないのは、こちらを信用していないということですね?それならそれで結構ですが、もし調べて適合するカギがあったとしても、決してこちらには注文しないで下さいね。信用していない店からお買い上げいただくことはないですよね。もし信用されていない店からお買い上げいただいても後味が悪いと思いますし、こちらが取り寄せたカギをお客様にお渡しした後に、万が一、何かが起こった場合や、お客様の思い込みで何かが起こったと勘違いされた場合でも、カギを取り寄せてお渡しした私が真っ先に疑われるわけですよね。こちらとしても大変迷惑ですし、お客様も私も望んでないでしょう。もちろん、お客様のご質問に関しましてはきちんと調べさせていただきますのでご安心ください。ニ、三日経ったらお電話ください。ただし、公衆電話からおかけください。こちらの店はナンバーディスプレーがついてまして、非通知設定は拒否いたしますし、非通知設定でなければお客様の電話番号がわかってしまいます。公衆電話なら特定できませんのでお客様もご安心でしょう?くれぐれもこちらといたしましては、お調べするだけにとどまらせていただきますので」

若い夫婦は、慌てて電話番号を僕に教えようとしましたが、僕はお断りして、こちらの店印をついたカラの伝票の控えをお渡ししました。

僕は、まだ人間が未熟だなぁと思いながらも、やはり許せないものは許せませんでした。

ニ、三日して、公衆電話から電話がかかってきました。結局、その型の防犯性の高いカギは特注品になるので、かなりお値段が高くなる旨をお伝えしました。

この若い夫婦に、最後に一言

御静聴ありがとうございました
posted by ロン at 22:18| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

現金決済が基本

カギ屋には商売上の鉄則が何個かあります。そのうちのひとつは「現金決済」です。相手が一般のお客様でも業者さんでもです。(もちろん個人的に、または企業に対しての掛売りなどはそのカギ屋の采配によりますが)。

なぜ現金決済かというと、あとになるほどお客さんはお代金を払いたくなくなり、ついには「踏み倒し」という荒技にでます。住所や電話番号をお聞きしていてもなんのその、特に解錠などの代金に関しては、ほとんど原価がかからないのでカギ屋自身もあきらめてしまう場合が多いのです(でも、忘れた頃にひょこっと振込みがあったりするので、わからないものです)。

電話で「お金は持っていますか?」と、カギ屋を始めた当初は聞きづらかったのですが、今では「約・・・円かかりますがよろしいですか?お客様が御満足いただいてからお代金を頂戴いたします」というようになり、お代金をとり損ねることは少なくなりました。

ここから僕の「現金決済」に関する失敗談を紹介します。

彼はリフォーム業者でした。まだカギに関しては経験、知識の少なかったのですが、僕をよく頼ってくれて、又、よく僕のところから何度もカギを買ってくれてお互い持ちつ持たれつの関係でした。

最後に彼が必要としたカギが僕のところには在庫が無く、彼に直接、僕の取引先に引き取りにいってもらって、あとで僕に対して支払いをする約束でした。彼は取引先から「ありがとうございました。助かりました」とわざわざ僕に電話をかけてきました。そのカギは緊急を要するもので、彼は本当に助かったようでした。僕も役に立ってよかったと思いながら、また、彼が注文をくれるのを期待しました。

ある日支払いにまだ来てない彼に電話をかけました。何度かけても電話にでません。

何回目かにかけたときに、いきなり切られました。彼は「信用」という「秘密兵器」を使って支払いを拒否したのです。それ以来、彼とは会っておりません。電話もしておりません。金額的にはそんなに大きくありませんが、もう彼にはカギを売ることはないでしょう。わずかの金額のために彼は「信用」を一瞬にして失ったのです。頼ってきても何も教えませんし、アドバイスもしません。

「人を信じたい」という心と「信じていいのかな」という心の「すりあわせ」が僕の中で始まるきっかけをつくった出来事でした。

以前、会社に勤めていたときに、上司から言われた言葉があります。

「世の中に悪い人はおらへん。でも信用したらあかん」

「信用」は忘れた頃に、仇となって降りかかってくることもあるということを学びました。

「信用」を失うとお互いに得るものはありません。このような思いをお互い二度と味わうことの無いように、商売人として賢くならねばと思いました。

取引先から届いた彼が引き取ったカギの請求書を見ながら・・
posted by ロン at 00:49| 上海 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ カギ屋 カギ業界の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月22日

40年ほど前

カギとは関係ありませんが、今までいらしたお客様の中で、とびきり僕を喜ばせてくれたお客様がいらっしゃいます。

もう、80〜90歳くらいの老夫婦でした。僕の店の前を通ったときに、僕の顔をみて、びっくりしたような顔をされてました。僕はその老夫婦とは初めての対面でした。特に御婦人の方がじっと僕を見つめるのです。

差し出がましいと思いましたが「何か御用ですか?」とお伺いいたしました。すると御婦人は「失礼ですが、あなた・・俳優さんですか?」と、とんでもないことを言い出しました。ギャグにしてもセンスがあまりにも良かったので僕は嬉しくなりました。

それまで沈黙を保っておられたご主人が「いやっ、失礼いたしました。あまりにもあなたがハンサムなもので・・。失礼しました」とかなり恐縮されてました。

僕にとっては失礼でもなんでもなく、本当のことを言ってくれる方がいらっしゃったと嬉しくなり(僕はハンサムでもいい男でもありませんが・・・)、その老夫婦に「いつごろ、僕、映画に出てましたか?」と聞きました。すると「40年ほど前に、あなたを見ました」との事。

僕は、まだ40歳にはなっておりません。

老夫婦はしばらく僕の顔を見つめて、それから「本当に失礼いたしました。お気を悪くなされないで下さいね」ときれいな言葉を残して、去られました。

老夫婦にとって、僕は石原裕次郎、小林旭、宍戸錠だったのでしょうか?

それ以来、その老夫婦はこちらにはお見えになっていません。

人を見る目は確かな老夫婦でした。
posted by ロン at 21:46| 上海 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月21日

僕の意見も聞いてくれ!

今では、各種メディア(主にインターネット)によって、いろいろな情報を得ることができるようになり、同種のモノを比較検討し、お気に入りのモノを容易に得ることができるようになりました。これはすばらしいことです。

防犯性の高いカギをお求めになられるお客様の中には、あらかじめ御自分でいろいろなカギを調べられて、特定のカギをリクエストされる方がいらっしゃいます。

カギに関していえば、実際に使われたお客様からのお聞きした意見、クレーム、同業者の情報などを参考に、僕自身が検討して選んだカギと、これから使おうと思っていらっしゃるお客様が選んだカギに隔たりがある場合があります。

防犯性に関しては、ほぼ同等のカギでも他方面(利便性、耐久性など)でクレームになる可能性があるカギをなぜかお客様はリクエストされる場合が多いのです。

以前は、多種類のカギを扱っておりカギの種類によって、そのカギのいいところ、そうでないところを説明しておりましたが、今では、僕が自信をもってお勧めできるカギしか販売、取換えなどをしておりません。御自分で決意してこられたお客様は、ほかのカギなど目に入りません。僕に説明の余地を与えてくれません。どうしてもお客様がそのカギを買いたいとおっしゃる場合は、お断りすることさえあります。別にそのカギを仕入れることができないわけではありませんし、損得勘定しているわけでもありません。意地です。

お客様はお買い上げいただく前にカギを試用することができないので、そのカギの使いやすさや使いにくさ、用途に合っているかなどを実感できないのは、ある意味ではしょうがないことです。

カギを含む全ての商品は、映画と似てますね。内容、面白さは鑑賞して初めてわかるものです。如何に売れるように宣伝するか、と日夜考えられているメーカー、広告代理店関係の方々の努力は相当なものだと察しますし、僕にとってもお客様のリクエストのカギをそのまま販売、取換えすることは楽なのですが。

別に、カギ屋が特別な存在であるとか、超人的な防犯のスペシャリストであるとか、そんなことをいうつもりは毛頭ありません。

何か訳がわからなくなりましたが、さびしい僕に一言いわせてください。

僕の意見も聞いてくれ!
posted by ロン at 19:48| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

過度の防犯意識1

カギ屋に来られる多くのお客様は、自分の安全を守る目的をもって来られます。

「中古の家を買ったけど、前の住人がカギを持っているかもしれないので」
「カギを落としてしまって、誰かに拾われていたら気持ち悪いので」
「このカギは防犯性が低いと思うので」など理由は様々ですが、犯罪を自分から遠ざけるためにカギを換える場合がほとんどです。

ですが、あまり過度の防犯意識をお持ちになられたお客様に対しては、僕もどのように対応してよいかわかりません。往々にしてお互い不振を持ったまま喧嘩別れになります。

ある日曜日、僕と同い年か少し若い男性(Kさんとします)が「**というメーカーのカギで、@@と刻印があります。防犯性の高いカギの取換えができますか?」と聞いてこられました。錠前の型は特定ができたのですが、あまり需要のないカギなので、後日見積もりと納期を連絡いたしますとの事で、その方のお名前と電話番号を伝票に書いていただきました。かなり神経質そうな方で、電話番号も書きづらそうにしてました。

月曜日に連絡させていただこうと思い、伝票のお客様控えをお渡ししました。僕の店の伝票は4枚綴りで、1枚は店控え、1枚は商品貼り付け用、1枚はお客様にお渡しした時用の本伝票、そしてお客様にお渡しするお客様控えです。

3分ほどして、Kさんが戻ってこられました。先ほどのカギをキャンセルしたいとのことでした。まだ注文さえ入れていないので、快く「わかりました」と答えましたが、何かもじもじされてました。

Kさんは「先ほどの伝票はどうするんですか?」と聞いてくるので「こちらで処分します」と引き取ろうとしますと、「私に全部渡してください」と言ってきました。「伝票は、引き換えの証ですから、もしKさんが持ってこられたら、商品をお渡ししなければなりませんので全てこちらで責任持って処分します」とお伝えしました。すると、「今書いた電話番号が、ほかに漏れるかも知れないじゃないですか?」といってきました。

つまり僕の店の伝票に、Kさんの電話番号が書かれてあると、情報が漏洩する恐れがあるといってきたのです。Kさんの電話番号などを他人にもらすということは、よほど故意的に悪意をもっていてもしないです。というより、情報を漏らすことは犯罪です。まして、初めて会ったKさんに対しては何の感情もありません。むしろ僕の店を頼ってくださったので、嬉しさを感じているくらいでした。

僕はKさんの希望通り電話番号が完全にわからなくなるよう、Kさんの電話番号の載った4枚全ての伝票を、Kさんの目の前でびりびりに破り「これでよろしいですか?」と冷静を装いながら、Kさんの顔と胸にたたきつけました。Kさんも、それを見ていたスタッフも顔が青ざめていました。

僕のとった行動は、カギ屋として、商売人として許されないかも知れません。しかし、Kさんは僕に対して、人間として許されない言動をはいたのです。商売を含む人間関係のベースは信用です。まして、カギ屋の仕事は信用なくしては成り立ちません。僕の店も信用を得るために必死で今までがんばってきたのです。それをKさんは否定したのです。

僕は、Kさんのことは何も知りません。過去に犯罪に遭われて過敏になっているかも知れませんし、数々の過剰なメディアに毒されて、ありもしない空想の敵に怯えているだけかも知れません。しかし、どちらであろうと最低限の人間としてのマナーは守ってほしいです。

Kさんは一例ですが、最近は過剰な防犯意識をお持ちになられたお客様が増えたように思います。治安の悪化と、各種メディアの過剰な報道の結果かな、と思う今日この頃です。
posted by ロン at 01:54| 上海 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月19日

暗黙の了解

カギ屋は他のカギ屋の噂話をしたり悪口を言ったりあまりしません。ただ、カギ屋によっては人間放送局のように好き好んで他のカギ屋の悪口をいうカギ屋もおりますが、そのような人は、往々にしてどのカギ屋からも相手にされておりません。

多くはありませんが、僕は他のカギ屋さんと交流があります。みなさんいい方ばかりです。いろいろと技術的なことを教えていただいたり、工具、カギの貸し借り、売買などをさせていただいております。

僕にはカギの技術の師匠のような方がいらっしゃいます(Jさんとします)。普段は無口で、ちょくちょく僕の店に遊びに来てくださいます。Jさんはカギ業界で長い方でいろいろなことをよくご存知です。ただ、他のカギ屋のことは話題に上れば最低限のことを話されるだけで、悪口はほとんど言わない方です。

ある日、店の宣伝についてのことで相談をさせていただいておりました。僕が店を構える前は無店舗でタウンページに広告をのせていたという話をしたときに、Jさんは僕の店にあるタウンページをめくりはじめました。今、僕の店は広告を出しておりません。ただ一行、僕の店の名前と住所と電話番号が記載されているだけです。

いきなり、タウンページをめくっていたJさんから信じられない言葉が出ました。あるページの特定のカギ屋を指差して「うわぁ、でたーっ!こいつ、悪い奴やねん!!」と笑いながらいうのです。

そのカギ屋は何年も前からかなり大きく掲載されている老舗のカギ屋でした。

確かに詳しい住所を掲載せず、電話番号とシリンダーの紹介や、そのカギ屋のアピールしか書いていないカギ屋でした。「まさかこんな老舗のカギ屋が・・」と思いながらも、神様のようなJさんにこんなことを言わせるそのカギ屋さんに興味を持ちました。

次の日、僕はその老舗のカギ屋の真相を知りたくなり、一般のお客様を装ってカギの取換え見積もりの電話をかけました(ここでのやりとりの内容は伏せさせていただきますが、僕の期待通りの「悪い奴」でした。Jさんがあのようにおっしゃられたのも納得いきました)。

僕の知り合いのカギ屋に、そのカギ屋のことを聞くと、皆さん一様に「悪い奴やねん!!」と笑いながら言うのです。

僕がそのカギ屋さんに電話をかけたということと、その内容をカギ屋の皆さんにお話しすると、皆さん大爆笑されておりました。

カギ屋は悪口を言わないというより、暗黙の了解でカギ屋を評価しているのです。あえて口外するようなことはしないんだと思いました。

僕はカギ屋として、笑いのネタにならないように、清く正しく仕事に邁進する次第でございます。
posted by ロン at 23:16| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ カギ屋 カギ業界の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お粗末なクレーマー

僕の店は、カギ、錠前技術を扱う以外に時計の電池交換、印鑑販売、表札販売、その他僕ができることをしております。

その女性(Iさんとします)は、暑い日に来られました。時計の電池交換をしてほしいということでした。商売をしていての直感と言うのでしょうか、見るからに古いキズだらけの時計を持ってきたIさんに、何ともいえない胡散臭さを感じました。
100mの防水機能ががあったので「防水テストをされますか」とお聞きしたところ「それは結構です」といわれましたので、そのまま電池交換をして、「これ以降、水には近づけないように」とアドバイスをしてお帰りいただきました。

次の日、朝早く「昨日電池交換をした時計にキズがついているので、どうしてくれますか?」と一本の電話がありました。僕の店には電池交換は一日に何件もあります。「どうしてくれますか?」という問いかけ自体、通常のクレームとしておかしい、と思う以前に、いかにも胡散臭いIさんの顔を思い浮かべました。その実、その電話はIさんからかかってきたものでした。

僕は、店の信用のことを考え、その時計を預かり、Iさんがいう「キズ」を確認しましたが、僕はキズに関しては細心の注意を払っており、キズつけた覚えもありませんでしたので「どこですか?」と尋ねると、「この辺」とあいまいにお答えになられました。何よりもキズのことより「どうしてくれますか?この時計は当時3万円ぐらいしたんです」とまくし立ててこられたので、「とりあえず、キズが消えるかどうか技術者に相談します」とその日はお帰りいただきました。何度も言うようですが、いかにも、という感じでした。

技術者からは、「このキズは取れない。何より、何年も前の廃盤になったようなものに、キズがあるなんていうのは、たかり行為だ」と憤慨してました。その実、その時計は某国産有名ブランドの時計でしたが、その物自体は廃盤になっておりました。しかもその時計は廉価版の時計であることがわかりました(約2000円)。

結局、その時計に関しては「同等品」をお渡しすることで決着しました(Iさんには申し訳ありませんでしたが、こちらに損害は無いように裏技を使わせていただきました。所詮このような裏技を見抜けないようなので、Iさんはレベルの低いクレーマーなのでしょう)。

この「同等品」を確認し、お渡しするときにもIさんは「私は目が悪いから、文字は見えない」と、このクレームの根底を覆すような発言をされました。

Iさんが本当に「クレーマー」であるかどうかはわかりません。クレーマーであるならば、明らかにおかしいことをいっても、その矛盾に気づかないほどお粗末なクレーマーであることは確かです。もっとも、一般人にとっては理解ができない、御自分の世界を持っておられるか、別の惑星から電波を受けてられるか、はたまた・・想像は膨らむばかりです(この時計に関しては、一般人には見えない「キズ」をIさんだけは見ることができるのでしょう)。

Iさんは、今でも僕の店の前をよく通ります。ただ、僕とは目を合わせようとはしません。

世の中には、いろんな方がいらっしゃると勉強になった経験でした。
posted by ロン at 00:55| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

トランクルームのカギ

合鍵の注文を受けたときに、作製可能なのですがお断りするカギがあります。それはトランクルーム(レンタル倉庫)のカギです。第三者が故意に現借主の荷物を盗もう、現借主が故意に次の借主の荷物を盗んでやろうと思うと、合鍵は絶好の「犯罪道具」に変身します。

トランクルームのカギは、韓国製のカギだと思われます(アルファベットで何か書かれておりますけど読めません)。もし合鍵を作ろうと思えば、日本のメーカーや、アメリカのメーカーのブランクキーを代用して作れない訳ではありません。でも、倫理的に切っていいかどうか迷いながら、結局はお断りいたします。スタッフにも断るように教育しております。

トランクルームは、個人などが財産を預けている空間です。ただ、その空間が個人などの完全な所有物であれば問題ありませんが、問題は、トランクルームという空間は個人などの所有物ではないということです。これは、銀行の貸金庫と同じ性質だと思います。

故意に犯罪に加担する意志が無ければ、法的には罰せられる可能性は低いと思いますが、犯罪に流用される可能性があるのに、トランクルームのカギだと承知しながら合鍵を作製するという行為は、どうしても抵抗があります。

カギ屋によって、意見はばらばらです。僕のように「犯罪に関わる可能性があるのならお断りすること。もし合鍵を切るのなら、トランクルームの持ち主(オーナー)の委任状を確認すること」というカギ屋もいれば、「借主が変わるたびに、賃貸物件のようにカギを交換するのは(トランクルームの)オーナーの倫理。合鍵を切ったところで、もしそれが犯罪に使われても、それは交換しなかったオーナーの責任」というカギ屋もいます。又、「トランクルームのカギかどうかはわからない。作製できるものは作製する」など、さまざまです。

皮肉なことに、便利な社会生活と犯罪は紙一重です。例えるなら合鍵屋がお客様の利便性を考えて合鍵を作製するという行為が、それを使用する人間によっては、犯罪を幇助する恐れがあることになります。ホームセンターや金物屋が包丁を販売するということと同じように。

突き詰めていけば、様々な技術や商品の販売、高度な知識は、それを使う人間によって、または使いようによっては「薬」にも「毒」にもなるということです。

社会生活には数々の矛盾がありますが、その中で自分の「正義」を作り出すことと、社会の常識、倫理をすり合わせていくことがいかに難しいか、と教えてくれたのが「トランクルームのカギ」でした。
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2006年07月16日

値段は最初に言いましょう

僕の店は、少し特殊な場所にあるので、車のインロックの解錠依頼が多々あります。自慢ではありませんが、僕は今までの依頼に対しては、特殊な1件を除いて100%解錠できております。

小雨の降る日でした。いつものように「車の中にカギを置いたままカギを閉めてしまった」と中年の女性が駆け込んできました。僕は、その車まで行き「これでしたら、3分ぐらいであきますよ」とその女性を安心させ、早速、解錠にかかりました。

いつもなら、御代金を申し上げてお客様の同意をいただいてから解錠にかかるのですが、その日はなぜかお代金の事は申し上げず、そのまま解錠にかかりました。

いつものように依頼者は「本当におっちょこちょいなもので」「こんな人、ほかにいます?」「近くにカギ屋さんがあってよかった」などと、いろいろお話をしながら僕の解錠を見ておりました。

カギがあき、お客様がホッとした顔をされ「ありがとう」の言葉がでで、いざ「おいくらですか?」のお言葉。そのお客様はすごくさわやかだったので「おいくらでも結構ですよ」と答えたところ、「私、おいくらお支払いすればいいかわかりませんので」「カギ屋さん、おいくらですか?」とのお言葉をいただきました。

車種などによって違いますが、通常、解錠といえば8000円ほどいただきます(僕の仲間内では)。

僕は、その方が相場を知っているとは言わないまでも、その人格、常識を信じて「いくらでも結構ですよ。100円でも200円でも」といいました。



僕は店に戻り、そのお客様の「ありがとう」の笑顔を思い出しながら、お値段は最初に言っておくべきだ、と心に刻み込みました。

掌の300円を握り締めながら。
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2006年07月15日

不愉快なお客様

特定のお客様ではありませんが、僕が嫌いなタイプのお客様が時々お越しになられます。質問を女性にさせる男性です(夫婦、カップルなどの男性)。
「・・・はどうかなぁ?」と女性が男性に聞くと、「それやったら、お前が聞いてみい!」といって、自分は聞かずに女性に聞かせる男性です。しかもものすごくえらそうに。

こんな光景を見るたびに、どうして男性が聞かないんだろう?もしわかっていたら、どうして答えてあげないんだろう?男性もわからないんだろうか?それだったら、男性が僕に聞いてくれればいいのに。でも、こんな男だったら僕も真面目には答えたくない・・などと思うのです。

自分が知らないことがばれるのが怖いのでしょうか?それとも、女性のことが嫌いなのでしょうか?はたまた僕に聞く勇気がないのでしょうか?どうして男性は、あんなにえらそうに言うのか?僕はものすごく不愉快になります。

別に男性だから、寛容でなければとか、物知りでなければとか言うつもりはありませんが、見ていてものすごく見苦しいです。女性の質問が幼稚であっても、うっとうしくても、わかりきったことでも、馬鹿馬鹿しいことでも、男性は切り替えしするぐらいの器がほしいものです。

確かに女性の質問は、的を得ないものや、わかりきっていて、僕が聞かれても腹が立つものもたくさんあり、男性に同情することも多々ありますが・・

いったい僕は、どっちの見方なのでしょう?
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2006年07月14日

地獄の20分

僕がまだカギ屋になりたての頃でした。親戚が「カギが無いので作ってあげてほしい。御近所さんだけど困っている人がいるから」というので、その親戚の家まで行きました。困っている人とは、親戚と同じメゾネットに住む3軒隣の女性の方でした。

その方(Hさんとします)は、なぜかご自分の家ではなく、親戚の家の前で待っておられました。カギをなくされたんだから、不安で親戚と話していたのかなと、その時は思いました。でも、Hさんの家の電気は一切ついてなく、真っ暗でした。

「とにかく早くカギを作って下さい。遅かったら何もかも台無しになります」とHさんはおっしゃられました。「カギは閉まったままです。どのくらいでカギを作ることができますか?」とかなり切羽詰った声で聞いてきたので、「解錠とカギ作りで30分足らずでできます」と答えますと、「大丈夫かなぁ?」と意味深な言葉をはかれました。とにかく大急ぎでカギをあけ、シリンダーを取り出し、カギ作りを始めました。

親戚の家でカギ作りをしていると、「実は・・」と親戚が話を始めました。

「Hさんは、旦那さんと別れたいみたいなんだけれど、旦那さんは別れたくないみたいで、話がこじれてるの。旦那さんはすごく暴力を振るう人みたいなの。Hさんは自分の荷物と子供を引き取って実家に帰りたいみたいなんだけど、旦那がそれを許さないようで、カギを取り上げて、カギを閉めたままにしているの」ということでした。

(冗談じゃない!それだったら、もし旦那さんがこの途中に帰ってきたら、僕も暴力を振るわれるかもしれないじゃないか!)

追い討ちをかけるように親戚は「Hさんの旦那さんは、刺青の入っている人なの」と淡々とおぬかしになりました。

カギ作りを終了し、シリンダーをもとの扉に取り付けて、Hさんにカギを渡し、カギが回るかの確認をしました。本当に生きた心地がしませんでした。

地獄の20分でした。

僕は「とにかく、今日はここから早く離れましょう。だんなさんが帰ってくる前に。お代金は明日とりに伺います」といって、僕も帰りました。

次の日、前の日と同じ時間くらいにHさんの家に伺うと、真っ暗でした。親戚の家に行って、Hさんのことを聞くと「今日、早速引越しをしたみたい。迷惑をかけるといけないので、行き先を告げずに行かれた。あんたにありがとうといっていたよ」というのです。

結局、お代金はもらえず、Hさんはどこに行ったのかもわかりません。

とり損ねた代金は勉強代だと思いながらも、帰路の車の中で減っていくガソリンメーターを見ながらますます惨めな気持ちになって行きました。
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2006年07月13日

ひょっとして、この人たち・・

つい最近の話です。インロック(車にカギを閉じ込めた)をしたからカギをあけてくれと、職人風の一人の男性が僕の店に来られました。その割には落ち着いていたので、さすがに職人さんだな、と思いました。

その車まで行くと、感じの悪い、世界中の不幸を一人で背負っているような人がすでに待っておりました。その方のお連れ様でした。

「そこにカギまで見えてるんだけど」と、その方は笑いながら、もう一人は不幸そうに助手席を指してました。確かにダッシュボードにカギの塊(車のキーや家のキーなど)が有りました。

まず、どのように解錠するか、その車のメーカーと車種、使用されているキーの種類を確認し、鍵穴を確認しました。僕はピッキングで解錠しようと、早速解錠工具を取りに行こうとして「今から、工具を取りに行きますので、しばらくお待ちください」とお二人に伝えました。職人さんが乗る車にしては可愛く、又、運転席側のカギ穴のカバーがなくなっていたりしたのですが、それを気にもせず僕は工具を取りに行きました。

僕は、一切の解錠工具を車に積んでいます。店から少し離れた場所に車を止めておりますので、約5分くらいしてからその車のところに行きました。

ところが、その車が無いのです。どこを探しても無いのです。

僕は「やられた!」と思いました。

鍵穴のカバーも、可愛い車も、ダッシュボードにカギの塊も、よく考えてみれば不自然でした。少しカギ穴をいじったけれどで駄目で、キーが見えていたので、彼らはその車のドアが開けば車をそのまま乗っていけると思ったのでしょう。僕が来る間に偶然、本当の車の持ち主が帰ってきて、乗って帰ったのでしょう。

普通は、解錠の直前に本人確認(免許証、車のナンバーの確認など)を行うのですが、次回からは依頼があればすぐに行うようにしようと思いました。

何よりも、僕が彼らに指名されたことが悔しかったので、次回、人の良さそうな人と、感じの悪い不幸そうな人の職人カップルに対しては、厳しく接しようと思いました。
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車の中に子供が・・

カギ屋の仕事は、時間の制限があるものが多々あります。「解錠」に関してはそのほとんどが時間の制約を受けます。

ある夏前の蒸し暑い日でした。僕の店に若い女性が真っ青な顔をして駆け込んでこられました。どうも近くで車のカギを閉じ込めてしまったのらしいのです(インロックといいます)。かなり動揺されていました。腐りやすい物でも閉じ込めてしまったのかと思い、「お急ぎですか?」と尋ねると「中に子供がいるんです!早く!!」とのこと、僕は解錠工具を持ってその方の車まで御一緒しました。

中には、1歳くらいの子供が汗をかなりかいて、寝苦しそうに寝ていました。動いていたので少し安心しました。お母さんは「ガラスを割ってもいいですから早くあけて!!」とかなり取り乱してました。

カギ屋によって解錠方法は様々だと思いますが、僕はよほど特殊なカギでない限りはピッキングであけたいのですが、このときはさすがにそんな優雅なことを言っている暇は無く、一刻一秒を争う事態でした。

僕は、ほんの少し時間はかかりますが、確実に解錠ができる方法を選びました。急がば回れです。解錠にかかった時間は約2分でした。

車の中は僕が考えていたよりもかなり蒸し暑く、時間が遅かったらと思うと、ぞっとしました。お母さんは、子供を抱きしめて汗を拭き、僕に何度も「ありがとう」と言ってくれました。本当にカギ屋をやっていて良かったと思った瞬間でした。僕は1000円いただいて店に戻りました。

夏になると毎年「パチンコに夢中で、子供が車の中で熱射病で死亡」というニュースを目にします。自分の子供を亡くしてしまってから、事の重大さを親は知るのですが、そのときには遅いのです。何年も前から、何回もこのような事故の報道がされているにもかかわらず、毎年繰り返されるのは、親の子供に対する愛情が欠けている、もしくは、自分以外の命に対する認識が足りないと思うのです。

このときはお母さんの過失でしたが、本当に子供が無事でよかったです。このときのような依頼がなくなりますように、と思いました。
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2006年07月11日

「防犯のプロ」の武勇伝

最近、僕の店によく来られる一人のお客様について紹介いたします。

その方は65歳くらいの男性です(Gさんとします)。Gさんは、いろいろな犯罪と闘ってきた「防犯のプロ」だと語っておられます。空き巣、ニセブランド品の密輸入、覚醒剤など多種多様な範囲の犯罪に対して闘ってこられた方です。僕たちが知らない国家の使命を請け負ってこられた方だと思います。普通は物理的に不可能です。

何十年も前に港で密輸入を摘発して手柄をたてた時は楽しかった、今は指紋照合のカギかカード錠が安全だ、と僕に武勇伝を語ってくださいます。話をあわせるのに苦労いたします。

先日、僕の店に某外国産の腕時計をお持ちになられました。本物なら60万円は下らないものでしたが、「電池交換できるか」と僕に言ってこられました(僕の店は副業で腕時計の電池交換もしております)。この超有名ブランドの腕時計はクオーツ(電池式)は有りません。一目でニセモノとわかる、というよりニセモノにしてもひどい出来のモノでした。
僕は商売上の社交辞令で「すばらしい腕時計ですね」と申し上げますと、「これはニセモノ、ニ セ モ ノ !! あなたでも見破れ無かったでしょう」と、満面の笑みを浮かべて「これを摘発したときは派手にやりましたよ。命がけでした」と語っておられました。

このような時計を持っていらっしゃるだけでも滅茶苦茶な話なのですが、Gさんは「この時計を、あと6つほど持っているので又持ってきます」とおっしゃられました。「この時計は戦利品ですか」と尋ねましたら、「そんなことをしたら犯罪です!ハ ン ザ イ !! これは正式なニセモノを売っているルートから安く分けてもらったものです!」と僕の理解を超えるお答えをいただきました。

次に、どのような武勇伝をお持ちになられるか楽しみです。
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2006年07月10日

マスコミの報道について

ピッキング犯罪が激増し始めて、防犯に関するマスコミの報道が多くみられるようになってからもう何年も経ちます。ピッキング犯罪の次に「カム送り」、その次に「サムターン回し」、又、「焼き破り」や「こじ開け」、その他の犯罪に対する防御に関して、頻繁ではありませんがテレビなどマスコミで報道をされることが多々あります。

これらの犯罪をクローズアップすることは、一面では防犯に関する「啓蒙」であるといえるでしょうが、犯罪に対する防御のための知識というより犯罪者の手口を明かすようなものです。一般の人が思いもよらない犯罪の手口をマスコミが報道すると言うことは、知識ある人が、知識の無い人に対して「自慢」をしていることに他ならないと思うのです。その手口を見た視聴者が第二、第三の犯罪者となり、犯罪が増えるなどと、そんな単純なことを言うわけではありません。僕が言いたいのは、このようなことをマスコミが話題にすること自体、ある意味でマスコミの優位性をマスコミ自身が誇示していると思えるのです。その話題が、視聴者の不安を煽り立てる「犯罪、空き巣」など人目を引きやすいジャンルであるということが、その報道をするマスコミの倫理観を疑うのです。

確かに防犯、空き巣に関する報道は僕たちにとっても有用であることはあるにはありますが、まだ犯罪手段として出てないであろう事や、カギ屋の道具まで持ち出して無理やりに「こういうことでカギは開きます」と、無駄に不安を煽り立てています。

何も僕は(少なくとも僕を含む僕の仲間内は)このようなマスコミが報道する犯罪知識のレベルに対し、高い、低いといっているのではなく、繰り返すようですが、マスコミの倫理観に対し不快感を抱いています。人の命を奪うかも知れない犯罪の手口を簡単にワイドショーなどで話のネタ程度に貶めているマスコミに失望しています。

かといって、犯罪の手口、それに対する防衛手段に関して有用な伝達手段が有るかといえば、無いのが実情です。人間の社会はやはり、経験、試練をもとに進化していくものなのでしょう。

犯罪に関してだけではなくいろいろな事象に関して、やはり経験、試練が最大の教科書かも知れませんね。
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電波系の方々 その1

「電波系」という言葉があります。妄想、幻想に支配されている人だとされています。詳しくは御検索下さい。

僕の仲間内では、我々の考えられない状況を体験され、又、見えない敵と闘っている方のことを言います。

安全、秘密を守る「カギ」を扱う特殊な仕事柄か「電波系」と言われる方たちに、僕は多々遭遇いたしました(これからも遭遇するでしょう)。今日はその中ではじめて僕が遭遇した方を紹介いたします。

その方は、70歳近い男性の方でした。僕の店においでになられて、はじめは「ピッキングで開かないカギはありますか?」から始まりました。できるだけ早く取り換えてほしいと言うことなので、その方(Fさんとします)が家にお戻りになられる時間を見計らって、お伺いいたしました。

Fさんの玄関にはすでに防犯性の高いカギがついており、しかも2ロックでした(装飾錠と補助錠の2ロックでした)。お伺いするとそのカギを数ヶ月前にインターネットで購入し、自分で取り付けたそうです(僕の感覚、市場の実勢価格からするとかなり高額で購入されたようでした)。Fさんは「このカギでも入られた」というのです。僕は(まさかこのカギで・・)と半信半疑ながらも新しいカギを用意し、そのカギの防犯性の高いことを説明し、補助錠の部分だけを交換しました。Fさんは「ロンさん、ありがとう。これで安心して眠れます」とおっしゃられてご満足されたようでした。僕もこれだけ喜ばれたので「カギ屋をやっていてよかった」と思いながら、その日はFさんと同じように安心して眠りました。

1週間ほどしてFさんから電話がありました。
「ロンさん、また入られた」というのです。とりあえずFさんのお宅へ伺いました。憔悴しているFさんは「次は装飾錠(主錠)の方を換えてほしい」というのです。この主錠にあう防犯性の高いカギは、もとついてあったタイプのカギとあともう一種類がありますが、僕はもとついてあったタイプのカギをお勧めしました、意外にもFさんは「ロンさんを信じる」とのことで、僕の店にこのカギが来たら連絡するといってその日は別れました。

そのカギが僕の店に来てFさんに電話をかけ、取換えに行く日と時間を相談してますと「午前中に来てくれ」とのことでした。もちろん午前中はOKなのですが、できれば「8時半までにしてくれ」というのです。もちろん僕は何時でもいいのですが、理由を聞くと「9時くらいから盗人が家の周りにうようよしはじめる」「その前にカギの取換えをしてほしい」とのことでした。

僕は7時半にFさんの家に伺い、取り付けをしました。その間Fさんは「私がこのカギを換えているのがばれてないか見張っているからロンさんは、後ろを見ずに、しゃべらずにこそっとやってくれ」というのです。僕はいわれたとおりに交換をしていると、Fさんは僕がしゃべれないのをいいことに「私を15年もつけまわして悪さをする盗人がいる」「やつらは盗人のプロでカギをあける天才だ」「私がカギを換えた情報がインターネットを通じてもれている」と秘密結社の如く、僕に切々と演説を始めました。

Fさんの演説とカギ交換から解放され、お代金をいただいて帰ろうとすると「盗人がロンさんをつけまわして、カギの情報を盗むかもしれないんで、ロンさんは決して後ろを振り向かずに、車までお戻りください。私はロンさんが車に戻るまで怪しい盗人がつけねらわないか見張っておきますので」と、またまた少年探偵団のようなことを言い出し、実際に僕が車にたどり着くまでじっと見張ってくれていました。

それからしばらくは平穏な日々が続きましたが、ある日、僕がよく知っているホームセンターのカギの担当者から「マグネット式の南京錠は、簡単に開くのでしょうか?」との質問がありました。確かに解錠方法はあるがどうしてこんなことを聞くのか、と尋ねると「かなり落ち込んだ70歳くらいの男の方が聞きにこられました」とのこと、まさかとは思いましたが特徴を聞くと間違いなくFさんでした。

電波系の方は、今もこれからもずっと闘い続けるようです。
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2006年07月08日

感服いたしました!

その方は、おそらく僕と同じくらいの年齢だと思います(Eさんとします)。

僕が言うのもおかしいのですが、ものすごくさわやかな青年でした。ブランクキー(合鍵の材料でまだ切っていない状態のもの)を売ってほしいとのことでした。

僕は、ブランクキーを基本的に同業者以外にはにはお渡ししません。渡すつもりは無いけれど、どうして必要かをお聞きしました。すると「カギを換えた後にそれに合うキーを作ります」とカギ屋みたいなことを言うので「カギ屋さんですか?」と聞いてみると、「違いますけれど、カギの構造はわかります」とおぬかしになられました。「失礼ですが、犯罪に使われる恐れがありますのでお渡しできません」と言うと、「実は公務員です。疑われるなら、どんな証明でもいたしますよ」とおっしゃられますので、あまり疑うのも失礼かと思いお名前と住所と電話番号をお聞きしてブランクキー2本をお渡ししました。

数日後、Eさんとお連れ様がお越しになられました。合鍵を作りたいとのことなので差し出されたキーを元に合鍵を作りました。

よくよく聞いてみると、「キーを落としたので、カギを交換したいが無駄なお金をかけたくない」「自分自身でやりたい」とのことで、カギの組み換えをした後にそれに合うキーを作ったというのです。。

その方法を聞いてみるともっとも効率のよい方法でカギ屋さんと同等、いや、それ以上のレベルのことをされてました。しかも機械は無く、ヤスリで削ったということでした。

お話を伺うとEさんとお連れ様は、交通局で整備の仕事をされている方でした。僕たちの仕事より、はるかに複雑な仕事をされているんだなとおもいました。それと同時に、職人気質の人は、まだまだいるんだろうな、と嬉しくなってきました。

カギはいったん構造がわかると、組み換えや解錠方法のヒントがわかってきます(組み換えや、解錠を行うのは、その個人の意欲と理解力だと思います)。何より驚いたのは、1本目ですでに成功して、1本はブランクキーのままお持ちになられました。本当にEさんは頭のいい、器用な人だと思いました。

錠前技術はカギ屋だけの特権ではないこと、もっともっとカギ屋がカギ屋である所以を証明しなければカギ屋として生き残れないだろうと確信した日でした。僕はEさんと出会えたことが嬉しくて、その余ったキーを使って無料で合鍵を作らせていただきました。
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仕事について 生きることについて

2年程前の話です。その方は、60歳位の女性の方でした。合鍵の注文をいただいてその方が見ている前で切っていました。
いろいろカギ屋の仕事を聞くので、僕は嬉しくなって得意げにしゃべりました。

一通りその方が質問して、一通り僕がお答えして、もうしゃべることがなくなった時に、少し恥ずかしそうにその方が僕に「採用していただけませんか?修行させて下さい」と聞いてきました。
幸いにも僕の店は、あらゆる面で素晴しく優秀なスタッフがそろっております。新しく採用するつもりは無く「今からカギのことを覚えるのは大変ですよ。やる気はあるとお見受けいたしますが・・」と口を濁すと、「私ではないです。うちの息子なんですが」ということでした。

詳しくお聞きいたしますと、その息子さんはかなり手先が器用であること、社会経験が少しはあること、会社になじめずに最近会社を辞めたこと、一日中プラモデルを作るほど器用で集中力があること、人と接するのがあまり得意でないので、黙々とカギを切ることにはうってつけではないか、など切々と訴えてきました。

僕は丁重にお断りしました。もし息子さんがどんなに器用でも、この店が人手不足だとしてもお断りしていたでしょう。

仕事は、というより、生きていくことは、その人の意志によるものです。生きていくための手段として仕事があるわけなので、その人の意志が無ければ、仕事を決めることはできないと思うのです。たとえ親でも、です。

この方の行動は、目先の経済的なことではなく、息子さんの将来のことを心配して少しでも社会になじませたいとの親心だと思いました。おそらく息子さんがいつまでも働かないことに危機を抱いてたまたま僕のところで合いそうな仕事だと感じて声をかけてきたのでしょう。

僕の店は、責任感があること、働く意志があること、そしてブランクキーの番号が区別できる視力があることが採用の条件です。手先の器用さなどの物質的なことは問題ではありません。

僕は、本人自らの言葉が聞きたかったのです(これは経営者が人を採用をするとき、おそらく同じように考えると思います)。

不器用なら不器用なりにその不器用さを素直に表現することが、コミュニケーションの第一歩となり、深くお互いのことを知るきっかけになると思うのです。ただ、すべてを出したからといって、コミュニケーションがうまくいくとは限らないのがこの社会の難しいところですね。

僕は、仕事は生きることの目標ではなく、生きるための手段であると思うのです。直面するいろいろな場面で、うまく切り抜けていく。その切り抜け方を自分で探していくのが生きることであり、仕事がその実践の場を与えてくれているのではないかと思うのです。

この方にはある意味で悪かったと思うのですが、もし採用していたとしても自らの意志でなければ、お互いに不幸になると思いました。この親子が今はどうなっているか分かりませんが、自分の言葉で自分の意志が表現できていますようにと願っています。
posted by ロン at 00:53| 上海 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | カギ屋の徒然日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月06日

僕にもプライドがあります

いつものように「カギを交換してほしい」「できるだけ安く」とのことで依頼を請けたまわり、その中年女性(Dさんとします)のお宅へうかがいました。お話をお聞きしてますと「このカギは、もうきかないの。新しいカギに取換えて」と言うことで、Dさんの家まで行かせていただいて、取換えをしようとしましたが、かなり古いカギだったので持ち合わせがなく、後日Dさんにそのカギ(錠前)をお渡しし、Dさん自身が取り換えることでお話は終わりました。

あまりに古いカギだったので、取引先も防犯性が高いものは極端に値段が高くなるとのことで、「そのカギについては、防犯性の高いカギは高くなります。今使っているキーが使えない程度にはお安くできますが、防犯性は今までと同じです」とお伝えしましたところ、それでいい、その代わり安くして、ということ。僕は在庫分の同種の錠前をお渡ししました。

次の日の朝早く、Dさんから電話がありました。

「今日の夜中に泥棒に入られたの。あなた、心当たりない?」との電話でした。

お話を聞いていると「おかしいわよね〜。私、よく考えたんだけれど、このカギを細工して合鍵を作ることができるのは、あなただけじゃないの?」「わざわざ私の家まで見に来て、一回帰ってカギを用意するのはおかしいわよね〜?私の家を探っていたんじゃないの?」「ひょっとして、あなたが作って、あなたが入ったんじゃないの?」と、嫁とうまくいっていない小下衆な姑さながらの口ぶり。どうしても僕を犯人にしたいようでした。
 
Dさんの家は、リフォーム番組の「ビフォー アフター」の「ビフォー」そのものの家でした(その実、僕が扉を見ていたところ、扉のすぐ傍にある急な階段からいきなり子供が転がり落ちて泣き叫んでました)。又、玄関の扉にはすでに4つのカギが取り付けられており、すべてが防犯性の低いものばかりでした。

万が一、僕が泥棒になったとしても、僕は絶対あなたの家には入りません!。危険をおかしてまであなたの家に入るほど僕は馬鹿ではありませんよ!!
何より僕にもプライドがあります。合鍵を使って入るような姑息なことはいたしません!!!(これ以上の言動は誤解を生むので遠慮いたします)。

このことがあってからも、ちょくちょくDさんは僕の店の前を通ります。まだ僕を疑っているのでしょうか?

人間の心は奥深いものですね。もっと修行をいたす所存でございます。
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2006年07月05日

最強の女子大生!

僕の店には、若い女性が時々お越しになられます。ほとんどの場合は年上の男性(おそらく恋人かお父さん)といっしょですが、とびぬけて印象深かった女性を紹介いたします。

その方(Cさんとします)は女子大生でした。その前の日か前々の日にテレビで空き巣かストーカーの特集をしていたので、Cさんは怖くなってカギを換えようと僕の店へお越しくださりました。下宿先の大家さんといっしょでした。

Cさんのお話から察すると、ついている錠前はインテグラル錠でした。何とか安く済ませたいみたいで錠前だけを買って、自分で取り付けるといわれたので僕は(すごく経済観念がある方だな、若いのに、いや、若いからこそかな、しっかりしている女子大生だな)と感心しながら錠前を差し出しました。又、Cさんは錠前さえ換えれば防犯は万全だと僕に力説を始めました。僕は正直に「錠前を換えるより、もうひとつカギを付けたほうが防犯性がはるかに高くなりますよ。この錠前だけ換えても少しだけ防犯性が高くなるだけであまり変わりませんよ」とお伝えしました(カギ屋さんであれば、いくらピッキングに強いインテグラル錠でも錠前自体の欠点があるのはご存知だと思います)。

この説明がまずかったのか、そこからCさんの怒涛の攻撃が始まりました。

「最近のストーカーはしつこいんですよっ!カギ屋さん分かってるんですかっ?」
「ストーカーは若いきれいな女の子、若くてきれいな女の子、私みたいな女の子を狙うんですよっ!」
「私、怖くて夕べは眠れなかったんですよっ!私の気持ちが分かるんですかっ?」
等等、僕が悪いことをしたみたいに攻められました。

ここまで言い切るCさんには本当に失礼だと思うのですが、ストーカーはあなたを狙わないと思います。もう時効だと思いますので思い切って書きます(もうとっくに卒業されているころですので)。

僕は、顔で笑って心で笑って「無事に取り付けられますように」といって取り付け方を説明し、送り出しました。

1時間ほどして、Cさんが店に戻ってきました。そしていきなり「これ、いくらぐらいで買ってもらえますか?」と、もともとついていた錠前を僕に差し出しました。さすがにこれにはそばで見ていたスタッフも苦笑。僕は二度目の顔で笑って心で笑って「ごめんなさいね。お引取りはしておりません」と申し上げて、話を変えようと思い「ところで、うまく錠前をお付けになられましたね、失礼ですがお若くてきれいなのにこんなこともされるんですね」と、心にもないことを申し上げましたところ「大家さんがしてくれました」との返事。

彼女のほうが上手でした。
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2006年07月04日

非通知設定着信拒否の理由

僕の店は、カギ屋にしては珍しく非通知設定は着信拒否をしてます。カギ屋を利用するお客様の多くが非通知設定で電話をかけてくるのですが、それを承知で僕の店は非通知を拒否してます。また、通知不可能も拒否してます。電話をかけてきた方の特定ができないものは拒否しております。もともとはナンバーディスプレーにしておりませんでしたが、ある一本の電話によってこうすることになりました。

約1年半ほど前のことです。ある一本の電話がありました。僕がその電話に出るといきなり「お前が社長か?」とかなりすごい勢いで怒鳴られました。何かのクレームかと思い「そうですが」と応えたところ、そこから訳の分からない自己紹介が始まりました。はじめはゆっくりと、後になるほど荒々しくなりました。先方の話によると、「人権のために、差別を無くすために闘っている団体だ」から始まり、「今日は、我々の大先生が特別にお前と直接話をしてくださる」となり、その大先生が「お前も男ならわしらといっしょに人権を守るために汗水を流せ」となり、「協力せい、これからそちらにわしの名刺を送るから」「本来ならウチの若いモンを送るところだが、送るとややこしくなってお前のところに迷惑をかけるやも知れん」「寄付をするのは人間として当然だ」「寄付ができんのなら若いモンを送り込むぞ!」となり、結局は「金をだせ!」というものでした。

初めてのケースだったので憶病な僕は、とにかく店にややこしい人たちが来たら困るので、極めて正直に「お金を出すかどうかをこれから決めるから、こちらから電話を後からします。電話番号と住所を教えてください」とささやかに抵抗をすると、「名刺を送るといっただろが!」となり「男なら腹を決めい!」「こちらは人権を守るために汗水たらして働いとるんじゃああー!!!」とかなり興奮して電話を切ってしまいました。

このようなことがあったので、わけの分からない電話をシャットアウトするために翌日にナンバーディスプレーを契約したあと、ひょっとして同業者や友達にも同じような電話がかかってないか連絡をしましたが、僕の知る限りでは光栄なことに僕だけでした。

こんなことがあってから3〜4日がたった日、朝のニュースで「人権団体を名乗って協力金と騙し取る団体逮捕」と報道しておりました。僕にかかってきた電話と、テレビでの報道とまったく同じ手口でした。福岡の右翼団体風の名称を語った数人の人たちの団体でした。報道ではこの団体は、個人商店を狙ってこのような電話をかけて、数千万を荒稼ぎしていたそうです。

この報道を見た僕の友達(連絡を取った友達)が「ロン(僕)さんはさすがですね、流行の最先端をいってますね」と全然嬉しくない褒め言葉をいただきました。

僕の店はこんなことがあってから、ナンバーディスプレー契約をしてます。念のために、テープレコーダーで録音もできるようにして、変な電話がかかってきた場合は録音するようにしております(この録音に関しては、ものすごく役に立ったことがありましたが、後日詳しく紹介させていただきます)。

ちなみに要求された金額は30万円でした。
posted by ロン at 22:44| 上海 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カギ屋を続けていると・・

カギ屋を続けていると、必ずといっていいほど遭遇するタイプのお客様がいます。扉のカギを何回も交換するお客様です。

僕の店のすぐ近くに、このタイプのお客様が住んでいらっしゃいます。この方(Aさんとしておきます)にどうしてカギを交換するのか聞くと、「何回カギを取り換えても隙をみて部屋に忍び込む人がいる」「その犯人は何も取らない」けど「靴の位置を少し変えたり、作りおきしていた炊飯器の中のご飯食べる」と証明不可能なことをおっしゃります。僕は「すでに防犯性の高いカギに交換しているのだから、何回カギを換えてもいっしょですよ」と説得を試みても、「でも犯人はわかっている」「犯人にカギ交換をしたことがばれないように、すばやく静かにカギ交換をしてくれ、あなただけが頼りだ」と僕の説得はどこ吹く風、同じ依頼を繰り返されます。

Aさんの家に7回目のカギ交換に行ったときの事です。Aさんと同じマンションに住むある方(Bさんとしておきます)と交換作業中に出くわし、AさんとBさんは仲良く世間話をしてました。Bさんは僕の店にも来たことのある人で、僕に対しても労いの言葉をかけてくださいました。
Bさんが部屋に戻られるのを確認すると(Aさんと同じ階に部屋がある)、Aさんはいきなり「Bめが!よくも大きな顔をしてられるな。悔しい!」と小さいながらも全身から搾り出したような声で僕にいってきました。どうもAさんが言うにはBさんが犯人だというのです(どう考えても、カギをあけて、家に入り込んで炊飯器のご飯をあさるような人には見えないんですが・・・)。Bさんが僕に労いの言葉をかけたことが気に入らなかったのか、Aさんはどうしても僕にBさんの悪口を言わせたいみたいでした(変な人でしょう、見るからにいやらしい人でしょう、デリカシーのない人でしょう、としきりに同意を求めてくるのです)。僕は、どう答えて言いかわからなかったので「そんなことをする人には見えないですねえ」といっておいたのですが・・。

このことがあって以来、僕のところには二度とAさんは来なくなりました。僕がBさんをかばった?ことで、僕も疑われたのでしょう。Aさんの世界では、Bさんと僕は同じ釜の飯を食っていると思われます。

おそらくAさんは僕のことを、8回目のカギ交換をしたカギ屋さんに「カギをあけて炊飯器のご飯をつまみ食いするカギ屋」と紹介してくれたと思います。哀しいやら笑えるやら・・。

ちなみにAさんは初老の女性で、Bさんは初老の男性です。
posted by ロン at 01:10| 上海 | Comment(0) | TrackBack(0) | 珍客日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする