それは緊急の解錠の時で解錠に時間がかからなかったときなどです。ギャラリーが多ければ多いほど盛り上がります。
僕は今まで普通に過ごしてきたのでヒーローになれることはあまりありませんでした。カギ屋をやっていて良かったと思う理由の1つはこのようにヒーローになれることがあることです(恐らくどの職業でもヒーローになれることはあると思います)。
まだ若輩者の僕ですが、学生時代に ヒーロー になったことがありました。数少ない僕の武勇伝ですがお読みいただければ幸いです。
・・・
中学か高校のどちらかのときでした。
その日は母親が朝寝坊をして、弁当のおかずが間に合いませんでした。お米だけが炊けていました。
僕は弁当箱に先ずお米をいれて、おかずのところに ある物 をいれ、それに付属する道具を持参して学校に行きました。
昼休みになり僕は持ってきた弁当箱の蓋をあけ、おかずのところに入っていた ある物 を取り出し、食べることができるようにしようとしていたときでした。
1人の友達が、僕の持ってきた ある物 を見て
「お前、それ食うんか?」
と目を丸くして言ってきました。
「そやけど・・」
というと、その友達は大きな声をあげて大爆笑しました。
それから、その友達の笑い声につられてみんなが僕に近寄って次々に爆笑し始めました。あちらこちらで「アホやー!」「おもろいっ!」などの賞賛の声が聞こえました。
特に女子は「いやーっ!」といって笑いながら僕から離れて行き、井戸端会議をするおばちゃんのようにこちらを時々指差しながらひそひそ話をして、また爆笑しておりました。
僕が何をしていたかというと、単に缶詰を缶きりで開けようとしていただけでした。
ある物 とは缶詰でした。
もはや戦後ではない
といわれてから随分経ち、時代は飽食の時代でした。
弁当のおかずに缶詰を持ってきたことが斬新だったのか、その当時の言葉で言えば ナウい のか、イカす のか、いずれにせよ僕はみんなの心を鷲掴みにすることができました。
缶詰と缶きりでこれだけ笑いが取れるとは思いませんでしたが、僕はヒーローのような気分になっていました。
ですが
しばらくしてみんなが笑っている本当の理由がわかりました。
僕が持ってきた缶詰は キャットフード でした。
・・・
ヒーローって心地よいものですね・・・。
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